山野さん。
山野さんからお誘いメールが届いた。
『金曜日、 飲みに行きませんか?』
私は早速返信。もちろんOKの。
「瑠花? 何、 メール?」
「そう。 あ、見ないでよ」
「合コンの奴? 会うの? やめなよ」
「はぁ? 関係ないでしょ!」
ケータイをカバンにしまった。
かんけいない。まもるには。かかわりないコト。
それ以上私に踏み込まないで。関わらないで。
友達のライン、超えないでよ。
講義中もそんな事が気になった。
バカみたい。私……。
金曜日はまもるは彼女に会う。
二人仲良く手を繋ぐんでしょ?
モヤモヤする気持ちを振り払った。
好きだからこそ気になって。モヤモヤして。
手に入らない人だからこそ、嫌になる。
友達のラインを引く。来ないでよ。それ以上……。
金曜日、午後の講義の後、私は山野さんにメールした。
『今授業終わりました。 何時にしますか?』
はーっとため息出るのは何故だろ。
『僕の方はまだちょっと時間がかかります。 大体六時くらいに駅で待ち合わせしませんか?」
『分かりました』
六時か……。今は三時過ぎだから一度家に帰ろう。着替えたいし。
「何? 瑠花帰るの? だったら買い物付き合ってよ」
突然まもるに誘われた。
「あ、 ごめん。 一回家帰りたいんだ。 またね」
あっさり断った。
「何だよ。 付き合い悪いな」
不貞腐れるまもるを置いて、教室を出た。
大学から割と近い場所に部屋を借りたので、歩いて家に帰る。
それにしても、何でいきなり買い物付き合ってなんて言うのかな。
まもるは金曜日は絶対に誘わない。
他の日はたまにお茶したりする事もあるけど、金曜日はないのに。
ちょっと不思議に思いながらも気にせず家に帰って、今日着る服を選んだ。
小花が散りばめられたワンピースに、薄いピンクのコート。
出かける時間までレポートをやって、時間を潰す。
六時に駅で待ち合わせ。
私は服を着替え、少し化粧をした。
駅に着き、山野さんを待つ。
何かドキドキしてきたな……。まもる以外の男の人と待ち合わせなんて滅多にないし。ちゃんと話せるだろうか。
「お待たせ!」
手を振りながら山野さんが走って来た。
「大丈夫です。 私も今来た所でして」
「良かった。 取り敢えずお茶しようか?」
駅の近くのカフェに入り、コーヒーを頼んだ。
「何か緊張するね…」
「はい……」
「瑠花ちゃんは、 大学で何を専攻してるの?」
「図書の司書さんになりたくて、 そういうのを……」
「本、 好きなんだ」
コーヒーを飲みながら、お互いの事を話した。
男の人は緊張するけど、こういうのも何か新鮮。
「そろそろ行こうか」
近くの居酒屋へ向かった。
あ、何かやだな。この道……。
七時前。まもるがこの辺にいるかも知れない。
もし会ってしまったら……。
イヤイヤ関係ない。平気。
一人で訳の分からない事を考えてしまった。何なのよ、私。
「ここにしようか」
ちょっと居酒屋と呼ぶには違う気がする、お洒落な感じのお店に入った。
「何飲む? 甘い系がいい?」
薄暗い店内。小洒落たテーブルにつき、お酒を注文した。
居酒屋とBARを足して割った様な感じのお店。
店内は割と空いていた。
カクテル二つと生ハム等を頼み、またお互いの話をした。
「もし良かったら、 また会えないかな? いきなり付き合ってとか言わないけど、 そういう方向でいけたらなと思って」
誠実な人は段階を踏む物なのか。
改めて男の人を知らな過ぎている自分に驚いた。
優しそうな人だし、安定してそうだし、一緒にいて楽しい。
「もう少しだけ仲良くなってからでもいいですか? まだ分からない事あるし」
「もちろん。 タイミングも必要だよね。 ちゃんと待つよ」
まもると比べたら失礼だけど、こんな人もいたのか……。
家の近くまで送ってもらい、その日は別れた。
「新しい出会いか……」
ベッドに寝転び呟いた。
と……。ケータイが鳴った。
「誰だろ?」
カバンから電話を取り出す。
「まもる? 何で……」
金曜日は彼女と会ってるはずなのに。
一応出た。
『もしもし? 何?』
『お前、 今家?』
『うん。 だから?』
『さっき見かけたから……』
『ふーん……』
『帰ってるならいいんだ。 また月曜な』
そう言って電話を切った?
「何の確認?」
まあいいか。
お風呂に入ってベッドに潜る。
ケータイの着信履歴を見つめた。
気になったの?私の事……。
別の人と居るのに、欲張りな奴だ。
まもるが分からない。
でもハッキリしているのは、彼女がいるという現実。
「付き合ってみようかなぁ」
山野さんと……。当て付けとかじゃなくて、きちんと前を向かなきゃ。
いつまでも振り回されたくない。
好きになれる?山野さんを。
比べない?まもると……。
でも、今のままじゃダメだよね。
もう少し考えよう。
ケータイをテーブルの上に置き、電気を消した。




