合コン。
「合コン行くの?」
いきなりまもるに訊かれ、驚いた。
「何であんたが知ってるの?」
「たかちゃんに聞いた。 合コン連れてくから関わるなって」
「ならそうしてよ。 私がどうしようと関係ないんだし」
「いやに突っかかるね……」
何故だろう。私……。今日は何かイライラする。
「突っかかってないし。 じゃあ私次理数の講義あるから」
大学の授業の後の会話。
たかちゃんまもるに言ったんだ。合コンの事。ならいいか。まもるには本当に関係ないし……。
だけど何でイライラするの?私。
「合コン行くなよ。 『付き合おう』って言ったよね、 オレ……。 なのに何で合コン行くかね」
席を立とうとした私ね服の袖を引っ張った。
「私は付き合わないって言ったはず。 あんたには関係ないから……」
手をほどき教室を出た。
何なの?本当に。勝手過ぎるよ。
私はまもるに振り回される。そんな自分が嫌だから、友達の位置から出ないんだ。 なのに何で……。
まもると私。ただの友達。それでいいって思ったのは、まもるに彼女がいるって知った時。
大学入ってゼミが一緒で、少し仲良くなった。
他の女の子よりはまもると仲が良かった。
講義もほぼ一緒だし、お昼も一緒。
たまに遊びに行ったりしたから、好きになりかけてた。ほんの少しの恋心。特別だって思った、私の勘違い。
でも、あいつには彼女がいた。私達より五コ年上の大人の人。
大学の近くに勤めていて、金曜は彼女と過ごす。学校終わった後……。
たまたま見かけたまもると彼女。仲良さそうに手繋いで。
それなのに、私に言ってきた。私の心に踏み込んできた、勝手な男。
だから線を引いたんだ。ここから先は入らないでって。
好きだと思ってしまうから。傷付きたくないから。
「瑠花! お昼行こう」
講義の後、呼び止められた。
普通に接する。
「今日私お弁当だよ?」
「じゃあオレコンビニで何か買うから、 外で食べよう」
「……分けてあげようか? お弁当」
「えっ?」
「たかちゃんに頼まれたけど! たかちゃん午後講義ないって言うから……」
「本当? 嬉しいなぁ。 瑠花の弁当か」
実家を出ての一人暮らし。料理くらいはちゃんとしないと。
私はまもるにお弁当を手渡した。
学校の庭のベンチに座り、お弁当を食べる。今日は卵焼き失敗しなかった。
「うまそうじゃん! 頂きます」
今日のおかずは、卵焼きに手作りハンバーグ。温野菜も入れた。
本当はたかちゃんにあげるつもりじゃなかったお弁当。まもるに食べて欲しかった。何故かは分からないけど。
冬空の下、お弁当を食べる私達。付き合ってる様に見えるのかな。
また勘違いしてしまう……。
「合コン行くの?」
お弁当を食べながら聞いてきた。
「しつこいなぁ。 行くよ」
「オレがいるじゃん」
「やめてよ。 あなたとは付き合わないってば……」
「ふーん……」
これ以上こっちに来ないで。この線を越えないで。
好きだと思ってしまう。辛くなるから。
「私をだしに、弁当食べたんだ」
土曜日、合コンへと行く途中たかちゃんに言われてしまった。
「ごめん……」
「まあ、 好きだって知ってるし、 仲いいのも知ってるからいんだけどね。 虚しいだけじゃない? だからあいつに合コンの話したんだよ」
「ありがとう……」
「出会い。 あるかもよ?」
今日はたかちゃんと私、他に二人女の子が来る。
その中の女の子の友達との合コン。
居酒屋に着いた時、皆揃っていた。
「遅くなりました〜」
にこやかにテーブルにつく。
「たかちゃん遅いよ!」
「あはは。 ごめんなさい」
いつもより大人し目に笑った。
向かい合い座る男の子達。いい人いるかな?
取り敢えずはカンパイの為、各自飲み物を注文した。
「では、 この出会いにカンパイ」
その後は自己紹介などをして、色々話をしたり。
四対四の合コンは、思いの他にたのしくていつの間にか席替えなんかしていた。
「瑠花ちゃんて言うんだ。 宜しくね」
私の右隣に座ったメガネの男の人が話しかけてきた。
「山野さんでしたよね? 宜しくお願いします」
真面目そうで誠実そうな感じだ。
大学名を聞いて驚いた。頭良過ぎでしょ。
「ケータイ教えてよ。 何て言ったら嫌かな?」
「いえ、 大丈夫です」
早速番号を交換した。
余り慣れてない私は、こういうのだけでもドキドキ。
今どきじゃない私。緊張する……。
合コンは盛り上がってお開きになった。
「メールしていい?」
山野さんに訊かれ 「お願いします」 なんて分からない返事をしてしまった……。
まもるとはタイプの違う人。そういう人がきっといいに違いない。
たかちゃんとの帰り道 「新しい出会いなんだから、 大事にしなよ?」
そう言われた。
新しい出会いかぁ。 そうだよね。うん。
星がキラキラ夜空に光っていてキレイだ。
私の新しい始まり。
電車の中でふと思った。




