豚汁ラーメン、始めました
「なあ、豚汁ラーメンって面白くね?」
僕は学食のラーメンを食べていると、ふと、思いついてしまった。
隣でラーメンを食べていたメガネ君は箸を止め、突然の一言に驚き、「どんなラーメンだよ!」と、ハイテンションでツッコミを入れてきた。
全く、飯ぐらい静かに食えないのか、と思いながらも答える。
「いいか、味噌ラーメンは寒い北海道で、暖かいお袋の味が食べたいといった、人の意見に答え、味噌汁に麺を入れてしまったという、驚きながらも歴史深いラーメンなんだ」
「それで?」
「味噌汁に麺を入れるのがいいのだったら、豚汁に麺を入れても大丈夫!そうは思わないか⁉」
「うるさい、静かにしろ!」
失礼な、お前の方がうるさかったじゃないか。
「しかし、それは面白い考えだ!」
何を当然の事を、まあ仕方のない事だが。
「そうだろう!」僕は自慢げにそう言った。
「さらに、豚汁ラーメンを、ここ、K県から全国に広める事、これが僕の使命なのだ!」
たった今考えた使命だが。
「おお!お前にしては凄い考えじゃないか!」お前はそんな風に僕の事を思ってたのか、眼鏡叩き割るぞ。
「まあ、新ご当地ラーメンの誕生だ。」
「おう!これで俺たちは天下を取るぞ!」
え、お前もやるの?
ともかく、メガネ君と一緒に豚汁ラーメンで天下を狙う事になった僕は、教室に戻り、数名の同志達とこの盛大な計画を話した。
「かくかくしかじかで、味噌ラーメンがあるなら、豚汁ラーメンもあってもいいはずだ!俺たちはこれで天下を取る!」
「しかし、それは思いっきり机上の空論だな…」
メガネ君(馬)がメガネ君に見事に突っ込まれた。
「よ、世の中の偉大な発明は、いつも机の上で生まれたんだよ!」お、メガネ君(馬)反撃した。まあ、(馬)にしてはよくやったほうだな、僕が助け船を出してやろう。
「まあ、仮に作るとして…だ。もちろん“豚汁"ラーメンだ。豚汁にはこだわって行こうと思う。」
本当にやるのかよ…というインテリはスルーで。
「まずは味噌!」
「当然だな。」
余計なコメントは要らないよ馬鹿。
「次に豆腐」
「ちょっと待て~い‼」(???)
「「「誰だ⁉」」」
「豆腐なんか入れたら見た目が悪くなるだろ!」ああ、コックJrか。また面倒なのが…とりあえずこいつを撃退しないと。
「そうか、じゃあ豆腐はやめよう。」
「なんでやめちまうんだよ!」
馬鹿め、何してくれるんだ。
「豆腐は無くてはならないものなんだ!そう簡単に奪われてたまるか!」
「見た目には余計な物なんだ!豆腐など、俺の手で消し去ってやる!」
「なら勝負だ!」
「いいだろう。豆腐がいかにいらない物かを知るがいい!」なんだこの不毛な戦い。
「行くぞ!」
「かかって来い!」
「「さいしょっはグー!ジャンケンっっ!ポン‼」」パーvsパー
「何っ⁉」「貴様もやるではないか。」
「「あいこでっっ、しょっ‼」」
またあいこかよ。さらに、また痛いセリフの後ジャンケンが続き、痺れを切らしたインテリが、「もう、コンニャクでよくね?」
というまで20回近くあいこを続けた。
お前ら仲良すぎだろ。
まあ、コンニャクに決まったところで、次の食材決めだ。
「次はニンジン。」
「「おう!」」息ピッタリだな、ジャンケンコンビ。
「ゴボウ」
「「よっしゃ!」」
「ネギ」
「「ミク!」」なんだお前ら。
「これらの野菜は無農薬の農家と契約しようと思う。少しでも安心と美味しさを消費者に提供しよう!」
「「おう!」」
「当然、野菜にこだわるから肉にもこだわるぞ!肉はなんと…」
「「「…ゴクリ」」」
「…黒毛和牛だ。」
「「「お前馬鹿だろ‼」」」
最高品質の肉じゃないか…
「豚汁という定義が崩れてるぞ!」
流石はインテリ、上手い事を言う。
「まあ、これで材料も決まった事だし、今度の休みに試食会な。」
なんだその目は、僕に文句でもあるのか。馬鹿を見るような目をしやがって。
「どうしたんだ、お前ら。」
「部長!」そう、この長身の眼鏡のお方は、我が、映画研究会(仮)のほこる部長殿なのだ。
「部長!聞いて下さい!実はかくかくしかじかで…」
~説明中~
「つまりそれって、ちゃんこだよな。」
「「「「え⁉」」」」
「いや、だから、具材をごった煮して、麺を入れるってちゃんこだよな。」
「なっ⁉」
「まあ、豚汁なのに黒毛和牛とか、ツッコミどころも多々あったけど、それがどうした?」
こうして、僕らの天下を狙うラーメン戦争は幕を閉じた。