トイレの流れに思いを流す
掲載日:2026/09/10
白い床、白い壁。
それと薄桃色のトイレットペーパー。
どこに視点を当たるでもなくぼんやりと眺めていた。
今日はいつもと違う。自身から出たものの匂いを覆い隠すように備え付けの芳香剤が健気に仕事をしている。先日のソープの香りではなく奥ゆかしい花の香りが辺りを包み込んだ。
深くも浅くもない深呼吸を繰り返し嗅ぎ慣れない刺激を堪能する。欧州に咲く花畑の風景が肺と頭の中に広がっていく。
同じ花が多く植えられている有名な公園が片道2時間圏内にあったことを思い出す。今度妻を連れていくことを考えながら、ズボンに手を掛けた。
手に伝わる布と皮の感覚。立ち上がると同時に腰を持ち上げる。感覚に落ちていくのを感じてからゆっくりとたち上がる。
窓の外では小鳥が健気に鳴き続けている。風の音も車の音も少しも聞こえず、ただただ声色だけがトイレの個室に反響した。




