1話
誰も居ない放課後の中庭。
目を閉じて降りそそぐ雨に身を委ねる。
全てこの雨と一緒に流れてしまえばいいのに。
「風邪ひいちゃうよ」
目を開くと透明な傘と愛しい顔。
「蓮か」
「俺以外の誰を期待したわけ?」
「別に誰も期待してねぇよ」
「嘘だね」
「なんでそう思うんだよ」
「だって俺見て喜ばなかったじゃん」
「普通友達見ても喜ばねぇだろ」
「んー…俺は尚だったら喜ぶよ?」
こいつは平気でそうゆう事を言う。
普通だったら笑って流すんだろうか?だとしたら俺のこの感情が俺を普通じゃなくしているんだろうか?
「はいはい」
「あっ流した」
「ってゆうか用事?」
「拓哉が遊びに行くってさ」
「了解」
「はい、手」
差し出された手を掴んで強く引く。
「おいまだっ」
俺が引っ張った事で蓮が俺の上に倒れてきた。
「まだ力入れてないから」
「あっ…ごめん」
顔が近すぎて無理。
「キス、しちゃいそうだね」
「……へっ?」
鼻と鼻が触れてしまう距離。
「はっ早くどけよ」
「尚って本当に可愛い顔してるよね」
「はっ!はあ!?」
困りながらも喜んでる自分がいる。
「お前ら遅い、ってかキスでもするんか」
「なっなんで俺が…ってか早くどけよ」
痺れを切らした拓哉と塁が迎えにきた。
「残念」
蓮は俺に微笑んだ。
俺をからかって遊んでいる。
俺の気持ちに気づいてないからやってるんだと思う、じゃあ俺が好きって言ったら?もう手を貸したり可愛いとか言わなくなる?そんなの嫌だ。
「ほら早く起きろ」
拓哉が蓮に手を伸ばす。
「雨の日にどこで寝てんだよバーカ」
塁が俺に手を伸ばした。
「昼寝してたら降ってきたんだよ」
「ほらこれで拭けよ」
塁がタオルを渡す。
「俺にも貸して」
「俺がっ」
蓮とタオルの取り合いをする。
「お前らガキかよ」
拓哉にタオルを奪われると小さいタオルの中に蓮の頭と俺の頭が包み込まれた。
「拓哉!」
「仲良しこよし一緒に拭きゃいいだろ」
「拭けるわけっ」
「尚、昔みたいだね」
耳元で蓮が囁いた、昔みたいって。
「お前らイチャイチャするなら後にしろよ」
塁に言われて我に帰る。
「誰が蓮なんかとイチャイチャするか」
「えー、俺泣いちゃう」
「可愛い子ぶっても可愛くねぇから」
「もぅ見飽きたから行こうぜ」
拓哉と塁は背を向け歩き出した。
「じゃあ俺らも行こう」
蓮はナチュラルに俺に傘を傾ける。
「おう」
蓮と歩きながら拓哉と塁の後を追う。
相合傘、初めてじゃないのにドキドキする俺。
俺たち4人は中学からの付き合いで蓮とは小学からの仲だ、蓮が近所に引っ越してきて挨拶をしに家に来たあの日、俺は蓮に恋したんじゃないかと思う。
いつから好きかなんてわからない。
「よっしゃ、俺からな」
バッティングセンターに着いてすぐ拓哉が機械の前に立ってバットを構える。
カキーーーーーン…ホームラン!
「拓哉、今日もかっこいいな」
蓮の言葉に顔を縦に振る塁。
拓哉は小学の時からずっと野球をやっていたらしく出会った時には体はガッチリしていてスポーツ万能タイプ。
「次は俺ね」
蓮が機械の前に立つ、ホームランとまではいかないけど蓮も全球打ち返す事ができる。
「じゃあ次俺っ」
「尚、やめとこか」
拓哉が真剣な顔で俺を見る。
「なんでたよ」
「だって球当たんねぇじゃん」
「今日こそ1球くらいっ」
「お金の無駄だから、ねっ、やめとこ」
俺だって蓮にかっこいいって言われたいんだよ。
納得いかない顔で蓮を見る、バカにしてんのかなんなのかわからない笑顔で俺を見ている。
「尚は俺とUFOキャッチャーでもしよう」
塁に肩を組まれて2人が居た場所から移動する。
「これ蓮みたいじゃね?」
塁が指差す方に目を向けるとオオカミのぬいぐるみがUFOキャッチャーの機械内から俺を見ていた。
確かに蓮そっくりだ。
「ちょっとやってみる」
「ガンバ」
30分後……全然取れない。
1回100円でもう3000円は使った、才能がないのか神様のイタズラか。
「もう諦めろって」
「無理、ここまできたら連れて帰る」
「お前何円使ったよ」
だって蓮にそっくりなコイツが俺に連れて帰ってくれって言ってんだよ、置いて帰れないって。
「なにやってんだよ」
バッティングを終えた拓哉が塁に尋ねた。
「もぅいい帰ろう」
蓮に似ているぬいぐるみを取ろうと必死なんて言われたら俺死ぬし今度取りに来ればいい。
「このオオカミのぬいぐるみがっ」
「塁、言わなくていいから」
「お前は黙れ」
強引に聞き出そうとする拓哉の背中を押して無理矢理バッティングセンターを出てそのまま解散した。




