魔術師ヴェイン
シンシアの予想では、エポルエから街道を進んで一つ目の街、カナーンでリリスに追いつく見込みであった。エポルエからカナーンまで、徒歩で半日。まともな神経であったなら、追われる身で、そんなに近くの街で宿を取る筈などないとも思えるが、リリスにそのような常識がないことを、シンシアは既に経験済みである。ソロムは、シンシアの予想に半信半疑であったが、兎も角も、カナーンの街で情報を集めることにした。
カナーンはそれほど大きな街ではなく、店の数も少ない。商売をするのであれば、エポルエに行った方がよいし、又、住民の側でも、日用品ならともかく多少なりとも高い買い物をしたければエポルエに行く方が良いからだ。そんな中途半端な位置に、カナーンはある。
本当にリリスが此処にいるのなら、探し出すのはそれほど骨ではないだろう。カナーンに着いた二人はそう思った。折角二人いるのであるから、シンシアとしては別行動をとった方がよいと思ったのだが、シンシアの身を案じてであろう、ソロムは一緒に動くよう指示した。部下である身では従わざるを得ない。一度不覚をとっているのであるから仕方のないことではあったが、シンシアはいささか矜持を傷つけられたように思った。無論、顔には出さなかったが。
先刻同様、まず酒場から当たることにする。二人は取りあえず、街に一件しかない酒場「塩の柱亭」に向かった。丁度夕食時ということもあって、店内は思いの外混んでいた。二人はざっと店内を見渡したが、それらしい人物は見つからない。やはり人に聞くしかないようだ。
「ボクが聞きますから」
シンシアはソロムに耳打ちした。何も汚名を返上すべく、張り切ったわけではない。店に着くまでの間に、ソロムが道行く人に尋ねた結果を考慮してのことである。見るからに兵士らしい、体格の良い男が、何の愛想もなく、冷たい声と瞳で(本人には殊更冷たい表情をしているという自覚はなく、単に真剣に聞き込みをしているだけだったのだが)、「聞きたいことがある」などと言って近づけば、大抵の者があわてて謝った上で逃げ出してしまう。試してみるまではそんなことに思い至らなかったのだ。
店の主人は頭の禿げ上がった、初老の男だ。愛想が良いとはお世辞にもいえない。入ってきた、兵士であることが一目でわかる二人を見るなり、あからさまに嫌そうな顔をした。厄介事を持ち込まないでくれ、そう言いたげな顔だ。事実、厄介事を持ち込むつもりなのであるから、2人は文句を言うつもりもなかった。そんな主人にひるまず、シンシアは笑顔で話しかけた。
「あの、ボクたち……、じゃなかった、私たち、女の子を捜してるんです。年は14歳くらいで、身長はこれくらい……」
言って、自分の首の下辺りを手で押さえる。
「瞳は黒色。髪も黒くて、短くて、ぼさぼさなんですけど、心当たりはありませんか?」
身振り手振りを交えた説明は解りにくくはなく、寧ろほほえましい類のものであったであろうが、緊張感のかけらも感じられなかったことは否めない。傍らで聞いていたソロムはこれなら自分が聞いても効果としては同じようなものだったのではないかと思った。所詮は戦うしか能のない人間の悲しさだ。
こんな質問でも何とか効を奏したのは、質問の答えが余りにも明らかであったからであろう。主人は黙って指さした。シンシアもソロムもその指を目で追う。そして、その指の先、入り口からは死角となる階段の裏辺りの席に、やはり美味しそうに(少なくともシンシアにはそう見えた)食事を頬張るリリスの姿があった。
追われる身でありながら何の緊張感もなく、美味しそうに(リリス本人は別に美味しいと感じているわけでも、そのような表情をしているつもりもなかったが)食事を貪る非常識な少女、そう評されることは、リリスにとっては心外であったろう。行く当ても、土地勘すらもないリリスには、見付けた場所で食事をとるより他なかったのであるから。
しかも、リリスは用心を怠っていたわけではない。追われる身であることは自覚していたから、階段の影になって見つかりにくい位置に席を取ったし、それに何より、自分に向けられた「意識」は感じ損ねない自信が、リリスにはあったのだ。
だから無論、リリスは気付いた。リリスに向けられた酒場の主人の指にも、シンシアとソロムの視線にも。
再び無銭飲食することになりそうだ、そう思いながらリリスは皿を準備する。今度は前回と同じ手は通用しないかも知れない。リリスは別の手を考える必要を感じた。出口は一つだけで、しかも距離的には彼らの方が近い。皿を投げて上手く意表を突けたとしても彼らよりも早く出口に辿り着くのは無理かも知れない。それなら……。
二人が動くよりも早く、リリスは行動を起こした。二枚の皿を二人に向かって投げつけ、同時に出口に向かって走る。
ソロムは慌てるでもなく僅かに手を動かした、かと思うと二枚の皿は砕け散っていた。抜く手も見せない居抜きであった。皿が割れる頃には剣は鞘に収まっている。神技を誇るでもなくソロムは出口を塞ぐべく、また、シンシアもリリスの動きを予測して、ソロムと呼応して挟撃すべく、走る。息の合った動きであった。
が、リリスの動きも巧緻を極めた。二人が釣られて出口の方へ動くのを確かめた上で、前方のテーブルを蹴りつけ、反動で素早く方向を転換すると、階段を駆け登ったのだ。
見事に裏をかかれた二人は呆然と立ちすくむ……ほど間抜けではなかった。窓から逃げるのでなければ2階に逃げるわけはない、そう判断してソロムは表に出る。シンシアは……。
「炎よ!!」
言葉によって魔術的なイメージが想起され、突き出した両手の先に馴染んだ魔法陣が描かれる。五芒星を錐型にしたような、立体的な魔法陣だ。
縦、横、奥行きの三つの要素からなる空間的な魔法陣を瞬時に描くことは高位の魔術師にしかできないことであり、また、そこから生じる「結果」は、平面的な魔法陣のそれとは比較にならない。
シンシアの描いた魔法陣から放たれた炎も例外ではなく、それは陽炎をたちのぼらせながらリリスに向かって突き進む。階段を半ばまで登っていたリリスは肌に灼けるような感じを覚えて、咄嗟に倒れ込んだ。階段の凹凸の上を器用に転がり受身をとって立ち上がると一気に階段を駆け登る。
それはあまりに短絡的な行動であった。炎はリリスには当たらず……リリスを生け捕るつもりのシンシアにとっては、この熱量では直撃しても困ったに違いないが……後方の壁に当たり、砕け散ったのだ。幸い、石造りの店自体が燃えることはなかったが、壁に跳ね返った炎は店内に吹き荒れ、木製のテーブルや椅子に引火した。温度が急上昇し階段には近づきようもない。
恐怖に凍った視線がシンシアに集中する。
「えへへ……」
引きつった照れ笑いを浮かべながら、シンシアも店の外へと逃げ出した。
ソロムのとった行動は、シンシアよりは遙かに現実的であった。店のある位置、外観からリリスの脱出経路を推測し、それに備えたのだ。
店内に爆発音を聞いて(理由は何となく想像できたが、深く考えないことにした)程なく、リリスは案の定、目を付けていた窓の一つから姿を現した。窓から軽やかに身を躍らせたリリスの着地を狙って、鞘ごと剣を振るう。
リリスは吹き飛んだが、ソロムは驚愕した。かわすことなど不可能な一撃であった。そして、事実リリスはこれをかわすことはできなかったのだが……音高く鳴った金属音はリリスがその一撃を短剣で受けたことを意味していた。派手に吹き飛んだのもどうやら衝撃を逃がすためだったらしい。
致命傷を負わさないよう手加減していたとは言え、自分の剣が捌かれるなど、にわかには信じがたい。が、元気良く飛び起きられては信じないわけにもいかなかった。
「《神狩り》の血族……か。その力、伊達ではないようだな」
誰に言うでもなく呟くと、ソロムは剣を抜き放った。
「ソロム卿……」
「下がっていなさい」
ようやく現場に到着したシンシアに向かって、反論を許さぬ声音で、言う。シンシアはそれに従った。
リリスは気付いていた。目の前にいる相手が自分よりも格段に強いと言うことを。逃げ出そうにも、後ろを向いた瞬間に斬られてしまうであろうことも。
逃げることができないなら彼女に残された選択肢は窮鼠となることだけであった。鋭く息を吸って軽く目を閉じ、彼女は自分の意識に別れを告げた。
始まってみれば、両者の力量の差は明らかであった。ほんの数合打ち合っただけで(リリスは防戦一方であったから打たれ続けたというのが正しいのかも知れないが)、リリスは傷だらけになっていた。もっとも、その数合に耐えられる者など殆どいないのであるから、短剣だけでそれに耐えているリリスの技量もまた、非凡と言うより他はない。
リリスの手にしていたのが長剣であったなら、或いは手傷を負わせることはできないまでも、自らの受ける傷を少なくできたかも知れない。が、短剣のみではとどめを刺されないだけでも精一杯であった。
更に数合、遂に頼みの短剣も飛ばされ、リリスの側頭部をソロムの剣が打ち据えようとした刹那、澄んだ音と共に剣が砕け散った。ソロムは慌てるでもなくリリスから離れ、安全圏を確保する。
「久闊を叙するにはいささか荒っぽ過ぎる挨拶だな」
ソロムの声は、傷付いたリリスを抱きかかえるように突然現れた男に向けられていた。
年の頃は、20代前半に見える(実年齢はもっと上だが)。雨に濡れた鴉の羽のような黒髪と、深い知性を感じさせる鋭い黒瞳、だがそれとは対照的に肌だけが病的なまでに、白い。鼻の上にはちょこんと小さな、銀縁の眼鏡を乗せている。纏った黒衣には銀糸で複雑な紋様、つまりは魔法陣である、が描かれており、そこからも彼が優れた魔術師であることが分かる。
「暫く会わぬうちに少女虐待の趣味を持ってしまっていた旧友への挨拶としては、それほど悪くないと思ったのだがね」
現れた男……ヴェインが、皮肉な口調で言う。
「旧友? お前と友達付き合いした記憶はないんだがな」
言い返しながらも、ソロムの口調には覇気がない。少女虐待……その言葉にソロムは少なからず傷付いたようだ。彼にも自分らしくないとの自覚はあるからだろう。
突然抱きすくめられたリリスは、ヴェインの腕から逃れようと藻掻き始めた。ヴェインはリリスの頭上に手をかざし、瞬時に円形の魔法陣を描いた。眠りを誘う優しい光がリリスへと降り注ぎ、リリスはたちまち穏やかな眠りに落ちた。のみならず、無数に負っていた傷が一瞬で癒される。
「それにしても、いかな『殺戮の猫』とは言え、まだ『剣聖』ソロムには及ばないか」
リリスの頭を優しく撫でながら、言う。
「誰かさんのように少女の色香に惑わされるほど、色惚けしてはいないのでな」
軽口を返してはみるが、ソロムにとって、状況は思わしくなかった。
ヴェインは禁域に指定されていた旧リデル家の領土を探索して、リリスを連れ帰ったことで、家名を剥奪されている。しかし、ヴェイン自身が家名にこだわりを持っておらず、リリスの件に関しても国王との間で密約が交わされているのであるから、これまでの所、ヴェインと王家とは表だって抗争には至っていない。
とは言え、話が当のリリスのこととなれば、ヴェインに引く気はないであろう。旧友であろうが昔の愛人であろうが、今大切なものを護るためなら笑顔すら浮かべて滅ぼすことができる……そんな印象がヴェインにはある。様々な因習に捕らわれているソロムにすれば、ヴェインの刹那的な思考は羨ましくすらあった。
ソロムは一戦を覚悟したが、長剣を失っている今、強大な魔力を誇るヴェインを相手に丸腰では分が悪い。そんなソロムの葛藤を断ち切ったのは、やはり余りのことに立ち尽くしてしまっていたシンシアであった。
「ヴェイン師!! 何故、こんな所に!?」
「やあ、シンシア。暫く見ないうちに、随分と綺麗になったね。変質者に成り下がっていた誰かさんとは大違いだ」
露骨な嫌味に立腹したわけでもなかったろうが、ソロムはシンシアに命じる。
「シンシア、剣を貸しなさい。残念ながら、ヴェインは味方ではない」
ヴェインの腕の中にいるリリスを見て、シンシアも理解したようだ。躊躇いながらも長剣をソロムに渡す。
「おやおや、シンシアだけは僕の味方だと思っていたのにな」
「少女愛好家はどんな女性にも嫌われるものさ」
少女虐待呼ばわりへの意趣返しを口にしながら、ソロムはシンシアの剣を抜き放った。ソロムは完全に余裕を取り戻していた。この距離でならヴェインの魔術が発動する前に彼を斬ることができるだろう。
その動きに反応して、ヴェインはリリスを自分の後ろに横たえた。隙だらけの行為は、ソロムがその隙に斬りかかるような人間でないことを知った上でなされたものだ。
「どうしてもリリスをこちらに渡してくれないのか? この距離で俺に勝てないことは百も承知だと思うが」
「確かに、ね。卑怯な魔法の道具でも使わなければ、無理だろうね」
「!?」
ヴェインの言葉の意味を悟り、ソロムは半歩飛び退いた。ヴェインの左手に禍々しい妖気が満ちる。
「アスタルテ」
静かに、だがはっきりとヴェインの低音が響く。ヴェインの呼びかけに応じるように暗い光が閃いた後、その左手には見たこともない剣が握られていた。
それは、美しい剣だった。
白皙の刀身は真っ直ぐな諸刃で、標準的な長剣に較べればやや長く、やや細く、洗練された美を湛えている。剣の美しさを一層際だたせているのは、鍔のない柄に施された少女のレリーフだ。清楚で可憐、男達の幻想を形にしたかのような美しい乙女が、何かに祈るかのような儚げな眼差しを投げかけている。
その剣の風格にソロムは一瞬気圧された。見たことのない剣である。剣である以上、怖れるものではなかったが、ヴェインの言った「卑怯な魔法の道具」と言う言葉が気にかかる。この剣が攻撃用の魔力を有しているのであれば、それを発動させないようにこちらから攻めた方がよい。しかし、防御的な魔力を持つのであれば後の先を狙わなければならない。どちらか? 或いは両方か? ほんの僅かな迷いであったが、その迷いがヴェインに付け入る隙を与えた。
結論から言えば、ソロムはヴェインに攻める隙を与えるべきではなかった。無論それは下衆の後知恵というべきもので、ヴェインの歪んだ人となり、もとい、優れた知性を多少なりとも知る者であれば、ソロムの迷いを笑うことなどできないであろう。
魔術師を本業とするにもかかわらず、ヴェインの剣の腕は、両親の教育の成果であろう、まず一流と言ってもよい。しかし、それでも、その腕は、ソロムは愚か、シンシアの足元にも及ばない。
そんなヴェインが、手にした剣を上段に高々と構えた。魔法陣を描いている気配は、ない。そして片手で一気に剣を振り下ろす。
速さも強さもまずまずの一撃であったが、余りにも素直すぎる。訝りながらもソロムは完璧な計算のもと、ヴェインの剣を弾いた、つもりであったのだが……あろうことか、ヴェインの剣はソロムの剣も、鎧をもすり抜け、ソロムの身体を肩口から深々と切り裂いた。鮮血が迸る。
「物質透過の魔術? そんな、魔法陣なんて描いていないのに……」
端で見ていたシンシアが呻いた。
魔術師の描く魔法陣は、魔術師であれば他の者にも見ることができるし、また、術者の練度にもよるが、使われている魔法文字や魔法陣の形からそれがどのような魔術であるのか大体の所を知りうる。魔術を使えないソロムになら兎も角、シンシアに知られずに魔術を行使することは不可能なはずである。
しかも、ヴェインの剣はソロムの体をすり抜けてはいない。すなわち、ソロムの剣と鎧だけを選択的に透過したことになる。そんな高度な魔術をあの一瞬に行使することができるものなのか。声にならない疑問であったが、シンシアの心を読むかのように、ヴェインは答えた。
「残念ながら、この剣の能力だよ」
言いながら、ソロムの身体から剣を引き抜く。シンシアは異変に気付いた。
先刻までは気品溢れる白刃であったはずであるのに、今や剣は、血を吸いでもしたのか朱色に染まり、紅く、妖しく、蠢いている。しかも、清楚であったレリーフの少女すらも形を変え、娼婦の如く胸をはだけ、淫靡な笑みを浮かべているのだ。
「その剣、生きてる?」
驚きを隠せず、言う。ヴェインは事も無げに答えた。
「そうだよ。名前はアスタルテ。可愛いだろ? こうみえても、かなり高位の《魔》で、立派な吸血鬼なんだ」
ヴェインの紹介をうけて、少女のレリーフはシンシアに艶やかな笑みを投げかけたかのようだった。少女と目が合い、その艶っぽい笑みにシンシアは自分が女性であることも忘れて赤面した。
《魔》というのは、本来「人界」(いわゆる「人界」には精霊等人間以外の知的生命体も住むため、この呼び方については異論もあるがここでは便宜上そう呼ぶことにする)には住まわぬ者の総称である。
《魔》と言っても、その容姿、能力、性格等は千差万別である。或いは、人間が一括りに異界と呼んでいる世界は、実は一つではなく、複数の世界であり、異なる種類の《魔》は異なる異界から来ているのかも知れない。
そんなわけで、《魔》は一概に人間に徒なす存在とも言えないのであるが、人界で《魔》を見ることは少なく、また、その少ない中でも、比較的凶暴残忍なものが多いため、《魔》は一般には人間の敵と考えられている。
高位の魔術師であれば、異界よりかの者達を呼び寄せ、使役しうると言われている。シンシアには無理であった。兄王子のリューンであれば可能かも知れない。少なくとも、もしそれが何者かにとって可能なのであれば、ヴェインには無論可能であろう。
「治してあげなきゃ、ね。まだ死なれたら困るし」
言って、ヴェインは瀕死のソロムに手をかざし、魔法陣を描いた。ソロムの身体をすっぽり包むような球体の魔法陣だ。
癒しの魔法陣は一般に「安定」ないし「完全」を意味する円形か、球体である。平面より立体の魔法陣の方が難易度の高い分効果も大きいため、高位の術者であれば球体の魔法陣を用いる。
「ヴェイン師。何を企んでいるのですか?」
戸惑いを含んで、シンシアが尋ねる。ヴェインと命がけで戦う、と言う選択肢は、少なくとも今のところ、シンシアにはない。
「別に、何も。可愛い女の子を助けるのは男性の義務であり、性じゃないかな」
くすくすと笑いながら言うヴェインの言葉に対して、シンシアはややずれた受け取り方をした。どうやら本当に変態さんになってしまったらしい……シンシアは、自分の中で何か大切な物が音を立てて崩れたように感じた。
「じゃあ、そろそろ行くね。僕は自分の城にいるから、近い内に遊びにおいで」
「あっ……」
シンシアが返事をする間もなく、空間転移に用いられる六芒星の魔法陣を描き、ヴェインはリリスと共に消えた。




