表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出来損ないと呼ばれた巫女は、守り神となった妖に溺愛される。  作者: 文字書きA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/46

第九話:どうしたいか、どうなりたいか(後編)

「では、まずはお名前をどうぞ。お狐様を連れていらっしゃるということは、桜花(おうか)家の方ですね?」


「……はい。桜花琴葉(ことは)です」


「ふむ、琴葉さん……」


手元のリストを、上から1行ずつ確認して、男は眉間にシワを寄せる。


「失礼ですが、本家の娘様ですか? こちらの資料では、()ることも祓うこともできないとされている……」


「あ、それは……」


「今はどちらも可能だよ。それに、彼女は宵闇(よいやみ)様と暁明(ぎょうめい)様の双方(そうほう)から気に入られてる。龍脈の調査、なんて……そんな雑用をさせてはいけないんだ。本来なら」


事情を説明しようとした琴葉を(さえぎ)って、玲哉(れいや)が代わりに話す。男は表情を変えず、リストの余白にペンを走らせた。


「なるほど。では、こちらの情報を修正しておきます」


その手元から、琴葉の方に視線を移して。今まで黙っていた、女性の方が口を開く。


「……ご挨拶が遅れましたね。私は政府役人の焼津(やいづ)です。隣にいるのは上司の佐藤。以後、よろしくお願い致します」


「え、ええ、こちらこそ……」


淡々とした態度に、女は面食らいながらも挨拶を返す。机の上に座っていた狐が、呆れ顔で言った。


「用は終わった? なら、さっさと帰ってくれないかな」


「……すみませんね。こちらにも手続きというものがありまして」


佐藤はため息をつきながら、数枚の書類を揃えて出す。


「琴葉様。ここに署名をお願いします」


書類の横にペンを添えて、彼は琴葉の目の前に置く。彼女は黙ってペンを取り、1枚ずつ名前を書いていった。その横で、玲哉の体が青い光に包まれて溶ける。


「……お前たちのやり方は、相変わらず回りくどいな」


呟く姿はいつの間にか、宵闇(よいやみ)のものとなっていた。琴葉が署名を終えたのを確認して、彼は彼女に手を伸ばす。


「まあ、俺にはどうでも良いことだ。それを持って、すぐに立ち去れ」


「……言われずとも」


佐藤は返却された書類とペンを鞄にしまって、焼津と共に立ち上がる。そして2人は、頭を下げて出ていった。その姿を目で追う琴葉に、狐が近づいて声をかける。


「さて、琴ちゃん。予定外のことがあったけど、これでようやく休めるね」


「……はい、暁明様」


女は首を縦に振って、狐をその手の上に乗せる。そして、すぐ側にいる男を見上げた。


「宵闇様も、ありがとうございます。2度も私の望みを叶えてくださって……」


「何。この程度、大したことではないからな」


宵闇は笑って、彼女の額にキスを落とす。狐は冷ややかな眼差しを、2人に向けた。そして、また。宵闇の内側で、玲哉も(みずか)らの意志とは別に動く自分の体を、透明な瞳で見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ