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出来損ないと呼ばれた巫女は、守り神となった妖に溺愛される。  作者: 文字書きA


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第八一話:葬儀初日・続(後編)

「ではな、琴葉。少しの間、そこで待っていてくれ」


宵闇(よいやみ)はそう言って、元の位置に戻った。八葉(やつは)玄一(げんいち)の様子を見ていた狐が、つまらなそうにため息をつく。


「……だいたいね。引退済みの老人が、大きな顔をし続けるのは、どうかと思うよ」


その言葉に、老人が眉を吊り上げる。彼の向かいにいる女は、我が意を得たりと笑ってみせた。暁明(ぎょうめい)は目を細めて、間髪(かんぱつ)入れずに告げる。


「それと君も。この程度のことで、感情を出さないでほしいな。人目(ひとめ)につく場所では、特に」


今度は八葉が、痛いところを()かれて言葉に詰まる。狐はパタリと、尻尾を動かした。


「……そういうことだから。お互いに痛み分けということで、この話は、ここで終わりだ」


神の宣言を、2人は不承不承(ふしょうぶしょう)受け入れる。玄一が不機嫌そうな表情で立ち上がった。彼はそのまま、肩を(いか)らせながら出ていく。八葉も唇を噛みながら、(めい)たちがいる方を見た。


「あなたたちも、出ていきなさい。私にはまだ、やることがあるから」


「分かりました」


佐藤が(うなず)き、琴葉と焼津(やいづ)(ともな)って立ち上がる。3人は大部屋の斜め向かいにある空き部屋に入って、それぞれ顔を見合わせた。


「……はー……」


焼津が深々と息を吐きながら、壁に寄りかかって座り込む。彼女はそのまま、何でもないような顔で立つ上司を見上げて言った。


「先輩は、よく耐えられますね。私は寿命が縮みそうでした」


「まあ、慣れですね。こういうことは、よくありますから」


サラリと返して、佐藤は琴葉の方を見る。彼女は申し訳なさそうに(うつむ)いていた。その姿を見て、彼は穏やかな声で続ける。


「ですので、あなたもお気になさらずに。ご家族が亡くなられたばかりだというのに、大変でしたね」


「……い、いえ! そんなこと……」


彼女はパッと顔を上げて、首を横に振る。そしてようやく、安心したように笑った。


「大丈夫ですよ。お二方(ふたかた)が、こうして気づかってくださいますし。暁明様と宵闇様にも守っていただいている。私は、恵まれている身だと思います」


「……そうですか」


その答えを聞いた役人は、(まぶ)しいものをみたかのように目を細める。それから数分間。空き部屋に、穏やかな時間が流れた。やがて部屋のドアが、外から軽くノックされる。佐藤は笑みを深めて、口を開いた。


「お迎えが来たようですね。……また明日」


「……はい。また明日」


彼と挨拶を交わし合って。琴葉は扉を(くぐ)り、外に出る。そこには狐を肩に乗せた男が立っていた。彼女は迷わず、その胸に飛び込む。彼は彼女の体に腕を回して、しっかりと抱えこんだ。


「疲れただろう。……もう休め」


柔らかい声が聞こえてきて、女の(まぶた)が重くなる。宵闇は腕の中で寝息を立て始めた彼女を抱えあげて、別の部屋に運びこんだ。彼女が誰にも邪魔されず、安眠できるように。

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