表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出来損ないと呼ばれた巫女は、守り神となった妖に溺愛される。  作者: 文字書きA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/94

第七九話:葬儀初日(後編)

縦に長い、広い部屋。床はフローリングで、最奥(さいおう)には2つの(ひつぎ)が置かれており、棺の前には祭壇(さいだん)がある。その前に立って、八葉(やつは)は決まりきった祭詞(まつりことば)を唱えた。


()けまくも(かしこ)(あかつき)大神(おおかみ)吉備(きび)上道(かみつみち)の桜の祇園(ぎおん)龍ノ口山(たつのくちやま)に、(みそ)(はら)(たま)ひし時に()()せる祓戸(はらえど)の大神(たち)。先日亡くなりし桜花(おうか)優一(ゆういち)、桜花明葉(あけは)の両名の御霊(みたま)祖霊(それい)とし、桜花家を守らせ給へ。諸々(もろもろ)禍事(まがこと)、罪、(けがれ)有らむをば。祓へ給ひ、清め給へともうす事を聞こし()せと、(かしこ)み恐み白す」


琴葉(ことは)の右肩に居座る狐は動かない。彼にとって、それは100年前から変わらない、聞き慣れた祭詞だったから。だが。周りは少し、ざわめいた。


「……あれは本当に神なのか。ただの動物ではないのか」


「馬鹿なことを……! この家にいる狐は、全て神使(しんし)だ。例外はない」


「しかし、あれは喋るという話ではなかったか。それに、こちらの言葉を理解するとも……」


「神の使いと、神そのものは別だろう。あれは使いであってだな……」


「いやいやしかし。神の言葉を代わりに発する使いなら、それは同じと思ってよかろう」


狐が深いため息をつく。彼は立ち上がり、後ろを向いた。


「……聞いているよ」


口にしたのは、それだけのこと。だが、参列者たちは目を見張った。祭壇に向かう八葉が、震える手を隠しながら告げる。


「……静粛(せいしゅく)に。これより先は、玉串奉奠(たまぐしほうてん)の時間となります。前に来なさい、桜花琴葉」


「……はい、叔母(おば)様」


名前を呼ばれた女は、立ち上がって進み出る。彼女は(わき)()けた八葉に向かって一礼し、木の枝にギザギザした長方形の折り紙が(くく)りつけられた物……玉串を両手で受け取った。


(ええと、確か)


琴葉は右手で枝を持ち、左手で葉を支える。そして、斜め持ちした玉串を胸に抱えるようにして、祭壇の前で頭を下げた。


(……それから……確か、こう)


枝を持ったまま、玉串を縦にして左手を右手に重ねる。祈りを捧げてから、枝をクルリと回して、根本の部分を祭壇に向ける。そのまま両手で丁寧に、祭壇の前の机に置く。その後は2礼2拍手1礼。音を立てないようにすることも忘れず、彼女は完璧にやり()げて、神主(かんぬし)役の叔母に頭を下げてから自分の席に戻った。八葉は(くや)しげに、歯噛みする。


(よかった。作法は間違えていないみたい。ここで失敗していたら、何を言われるか分からないもの)


その姿を見て。顔には出さず、琴葉は胸を()でおろした。横にいる宵闇(よいやみ)は、満足そうな目をしている。八葉も流石に、神に命令することはできず、苦々しげに吐き捨てた。


「……次はあなたですよ、洋次(ようじ)さん」


呼ばれた男は、当惑(とうわく)しながら前に出る。こうして、その場にいる全員が玉串を机の上に置くまで、儀式は続いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ