表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出来損ないと呼ばれた巫女は、守り神となった妖に溺愛される。  作者: 文字書きA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/93

第七三話:葬儀準備(中編)

「……あの、お願いですから」


「嫌です」


神棚(かみだな)の前で、琴葉(ことは)は困り果てていた。


「でも。玲哉(れいや)さんが、火傷してしまったらいけませんから……」


「大丈夫、あれ以上のことは無いでしょうから」


先程から、何度も同じやり取りをしている。少年の髪を焦がした火球に目線を向けて、女は小さくため息をついた。


(こんなに頑固な玲哉さんは、初めて見るわ)


だけど。嫌だとは思えないのは、彼の人柄が良いからだろうか。そんなことを思いながら。


「……分かりました」


結局、折れたのは琴葉の方だった。玲哉が安堵の表情を浮かべて、彼女の手を取る。


「……良かった」


そう言って、心底嬉しそうに笑う彼を見て。女は苦笑し、話を変える。


「……準備、まだ終わっていませんよね?」


「そうでしたね。……行きましょう」


少年は笑顔のまま(うなず)いて、繋いだ手を離さずに、祖霊舎(それいしゃ)に足を向けた。それは、白木で作られた小さな箱のようなものだ。観音開(かんのんびら)きになっていた扉を閉じて、琴葉は上から紙を貼る。


(……お父様とお母様も、ここに……でも、青葉は)


祖霊とは、既に亡くなった先祖の霊魂だ。彼らは守護霊として、家を守ってくれている。けれど。魂が空になった妹は、そこに加わることすらできない。そう思ってから、彼女は唇を噛んだ。


(……何考えてるの、私。いつまでも、悲しんでばかりではいけないって。そう決心したばかりじゃない)


2回お辞儀をして、音がしないように2回手を合わせ、もう1度お辞儀をする。そうやって、体に染み付いたお参りの作法を丁寧に再現しながら、女は自分を落ち着かせた。


「……よし」


しばらくして。祈りを終え、顔を上げた彼女は、前だけを見ていた。その横顔を、どこか(まぶ)しそうに見つめて。玲哉は微笑み、口を開く。


「後は電話だけですね」


と言いつつも、それが1番大変なのだということは彼も分かっていた。なにせ、桜花(おうか)家は奈良時代から続く名家(めいか)である。親戚の数も膨大(ぼうだい)で、主だった人に伝えるだけでも、数時間はかかるだろう。その上、事は当主の葬儀だ。当然、設立時から何かと関わりのある橘花(きっか)にも、仔細(しさい)を報告しなければならない。


「あちらは僕に任せてください」


「……お願いします」


(ゆえ)に少年は、キッパリと告げた。自分の家には、彼自身が連絡をつけると。女もその意図をすぐに察して、彼の気遣(きづか)いに感謝しながら頭を下げる。


「……さ、お早く。あまり遅くなると、それはそれで失礼ですから」


日はとっくに沈んでいる。暗くなった廊下に電気を付けながら、玲哉は琴葉の手を引いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ