表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出来損ないと呼ばれた巫女は、守り神となった妖に溺愛される。  作者: 文字書きA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/94

第七十話:密議

同じ頃。佐藤と焼津(やいづ)は、首相官邸(しゅしょうかんてい)の会議室に呼び出されていた。


「……何度申し上げれば、分かっていただけるのでしょうか。現時点での働きかけは悪手(あくしゅ)だと」


広い会議室の端で。椅子には座らず、2人は真っ白な壁を背にして立っている。その片方。男の側は、苦々しげな表情で口を開いた。


桜花(おうか)琴葉(ことは)は、両親と妹を亡くしたばかりなのですよ。そんな彼女に負担をかければ、神々の怒りを買うことになる」


彼の目の前にある長机。その周りに座る高官たちは、神という言葉を耳にして眉を上げる。ややあって、神祇(じんぎ)省の長が言葉を発した。


「しかしね、佐藤くん。こんな機会は滅多にないよ。桜花(おうか)橘花(きっか)の巫女が間接的に伝える神託(しんたく)などではなく、神々と直接関われるというのは。君たちも神部(かんべ)の端くれなら、その価値は理解できるだろう?」


「……ええ。できますよ」


ため息をついて、佐藤は上司の方を見る。彼の隣にいた部下は、書類を握るその手が、(わず)かに震えていることに気づいた。


(……相当、怒っていますね)


佐藤と焼津はそれなりに長い付き合いだ。その胸中(きょうちゅう)を察せるくらいには。そして彼女も同じ気持ちだったため、口を挟むことはなかった。彼の声が、室内に響く。


「ですが。……50日祭(にちさい)が終わるまで、待つべきです。それが不可能だとしても、まだ神葬祭(しんそうさい)も終わっていない現状で、動くべきではない」


ハッキリと言い切られて、長官(ちょうかん)は少し面食らったようだった。そんな彼に向かって、男は動じずに続ける。


「琴葉さんには、心を癒やすための時間が必要なのです。せめて(いみ)が明けるまでは、波風を立てたくはないと。そう願うことは、当たり前だと思いますが」


淡々とした声で言い放ち、佐藤は机に歩み寄る。そして彼は、書類を置いた。


「報告は欠かしません。しかし、この件についてはこれまでです。どうしてもと(おっしゃ)るなら、私は仕事を辞めますので」


「……っ、それは困る!」


上司は慌てて声を上げた。


「君は優秀な官僚だ。……何よりも」


「そうですね。適切な距離を保ったまま神と関われて、命令されたこと以外はしない。そんな神部は、他には居ないでしょう」


冷たく告げて、彼は深々と頭を下げる。その横で、部下も同じ動作をした。


「……お騒がせして、申し訳ありませんでした。それではこれで、失礼します」


「失礼します」


後半の言葉を重ねて、焼津は彼と共に部屋を出る。引き止める声は、聞こえなかった。2人は無言で廊下を歩き、階段を使って下に向かう。軽い靴音が、静かな空間に反響した。そして1階の裏口から、外に出た時。


「……お疲れ様です。残った仕事は、私がやっておきますので……あなたは上がっていいですよ」


目線を落として、佐藤は小声で呟いた。焼津はわざと、聴こえなかったフリをする。


「さあ、戻りましょう。雑務はいくらでもありますから」


その声に、男は一瞬息を飲んだ。けれど。


「……そう、ですね。年末は何かと忙しいですし」


結局彼は、部下の気づかいを受け入れて。そんな言葉を(こぼ)したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ