表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出来損ないと呼ばれた巫女は、守り神となった妖に溺愛される。  作者: 文字書きA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/94

第五二話:おやすみなさい

その日の夜に、琴葉(ことは)玲哉(れいや)の部屋を訪ねた。


「……ごめんなさい。今日は1人になりたくなくて」


胸元で左手を軽く握り、右手でその手首を(つか)んで、所在(しょざい)なげに立つ。そんな彼女の姿を見て、少年は無言で手を伸ばした。定位置にいる狐が、耳を動かす。


「……玲哉さん……?」


「大丈夫ですよ、琴葉さん。そういう時は遠慮なく、頼ってください」


女の体を抱き寄せて、彼は耳元で(ささや)く。その言葉で、琴葉はやっと安心できた。無意識に込めていた力を抜いて、彼女は玲哉に体を預ける。


「……ありがとうございます」


目を閉じて、琴葉はゆっくりと息を吐く。そして、今日のことを思い返して。彼女は小さな声で言った。


「……玲哉さんも、見ていらしたのですよね」


「そうですね。僕は宵闇(よいやみ)様と、五感を共有していたので」


「迷惑をかけて、すみません。……私は、生まれない方が良かったのでしょうか」


「それでは、僕があなたに出会えませんね」


後ろ向きな思いを口に出した琴葉は、玲哉の明るい声を聞いて顔を上げた。彼は穏やかな笑みを浮かべていたが、その目は全く笑っていない。


「ねえ、琴葉さん。ご自分のことを否定しないで。僕が悲しくなってしまいます。あなたは僕にとって、誰よりも素敵な恋人なんですから」


「……あ、え」


彼女は石のように固まった。こんな風に怒られるとは思わなくて、頭の中が真っ白になる。玲哉は琴葉を引きずって、部屋の中に連れ込んだ。


「愛していますよ。僕の可愛い人。あなたに会えて、本当に良かった」


そう言いながら、彼は彼女の背を撫でる。そして名残惜しげに、手を離した。


「今夜は早めに休みましょう。……ね?」


「……は、はい」


有無を言わせぬ言葉に、琴葉は思わず(うなず)いた。狐が床に下りて、彼女を見上げる。


「思い詰めてるとは思ったけど、まさかそんなことを考えてるなんて。勘違いしないでね、琴ちゃん。君が居なかったとしても、僕は青葉を選びはしない。君だから巫女にしたかったんだ」


「……はい」


彼女はようやく、馬鹿なことを言ってしまったのだと気がついた。落ち込むその手に、狐は自分の前足を重ねる。


「玲哉の言葉は正しいよ。朝になれば、気分も変わっているだろう。眠っている間も、僕が見ていてあげるから……あいつと一緒に、休むといい」


寝床の準備が整えられる。横にいる少年に招かれるままに、琴葉は彼のすぐ隣で横たわった。狐は2人の頭上に移動し、畳の上に丸まって伏せる。


(……温かい)


女は目を閉じて、玲哉の体温を感じながら眠りについた。側に付いていてくれる人がいることに、心の中で感謝して。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ