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出来損ないと呼ばれた巫女は、守り神となった妖に溺愛される。  作者: 文字書きA


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第三一話:報告と不穏

儀式はつつがなく終わった。3人は佐藤の車に乗って、帰途(きと)につく。


「それで、いったい何があったのですか?」


ハンドルを握った役人が問う。それに答えたのは玲哉(れいや)だった。


「単純な話ですよ。ここに居た医師は、患者を(ないがし)ろにしていた。その上、若い女性に手を出して……。明言はされませんでしたが、おそらく不倫でしょうね。子供ができたことを知った彼は、事を隠蔽(いんぺい)するために彼女を殺したのです。死した女性は医師を憎み、それでも愛した。積み上げられた恨みと憎しみを(かく)として、悪霊になった彼女は医師を呪い殺し、彼の家でもある病院に住みついた。何もかも、医師の自業自得です」


「……そうでしたか。報告では、彼は妻も子もいる40代の男だという話でしたから……それは、嫌な話ですね」


佐藤は苦虫を噛み潰したような顔をする。少年は頷いて、続けた。


「巻き込まれた家族は不運でしたね。……ただ、1つだけ。暁明(ぎょうめい)様の力によって、苦しむことなくあの世に行けたことは幸いですが」


「彼は何をしたんです? 私も観測していましたが、遠かったせいか、あまりハッキリとは見えなくて……」


「大したことではありませんよ。僕たちが使う祓詞(はらえことば)は元から、神に願いを伝えるためのものでしょう? あの方は世界を通さず、直接願いを聞き届けたのです」


玲哉は穏やかな微笑みを浮かべて告げる。佐藤は前を見つめながら、呟いた。


「……そういうものですか。やはり私とあなた方では、見える世界が違うのですね」


少年は彼の言葉を聞いて笑みを深めたが、あえて口にはしなかった。薄っすらとでも、何かが起きていることを感じられるのなら、それは才能があるということだ。


(この人には素質があるんだけど……言っても聞かないだろうなぁ)


佐藤は典型的な仕事人間だ。そして彼は、今の立場に満足している。本人が変化を望まない以上は、玲哉も追求する気はなかった。2人が黙ったことで静まり返った車内では、交通情報を知らせるラジオの音だけが響いていた。


「……おや、あれは」


しばらく後。彼らが乗った車が、橘花(きっか)の屋敷の近くまできた所で。佐藤は目を見開いた。屋敷の庭には、既に1台の車が()められている。


「来客でしょうか。……こちらの用事は終わりましたし、私には青葉様をお送りするという役目があります。申し訳ありませんが、ここで下りていただけますか?」


路肩(ろかた)に止まって、役人が告げる。琴葉はシートベルトを外して、助手席の扉を開けた。隣では、玲哉が同じようにしている。彼は少しだけ、緊張しているように見えた。

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