表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出来損ないと呼ばれた巫女は、守り神となった妖に溺愛される。  作者: 文字書きA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/46

第二三話:琴葉と玲哉(後編)

玲哉(れいや)は目を見開いて、固まった。


「……琴葉(ことは)さん」


(かす)れた声で、呟いて。少年は泣きそうな顔をする。


「ありがとう、ございます」


玲哉はバスの扉が閉まる音を聞きながら、琴葉に寄りかかった。彼女は自分よりも低くなった彼の背を撫でつつ、柔らかい声で言う。


「大丈夫ですよ、玲哉さん。あなたが落ち着けるまで、私はお側にいますから」


その言葉に、玲哉は黙って小さく頷く。彼女の体温を感じながら、彼はしばらく立ち尽くしていた。


「……そろそろ、やめたら?」


時間が()って。暁明(ぎょうめい)は2人に声をかける。神の言葉を耳にして、彼らはようやく動き出した。寄り添い合った体を離し、手を繋ぎ直して、2人はゆっくりと歩き出す。玲哉は顔に残った涙の跡をハンカチで()いて、前を向いた。


(まぶ)しいな)


先を進む琴葉の後ろ姿を見つめて、少年は目を細める。その内側で、宵闇(よいやみ)が笑った。


(どうだ、玲哉。彼女を連れ帰ってきて、良かっただろう?)


何もかも見透かしたような、その言葉に。玲哉は心の中で同意した。ビルが立ち並ぶ大通りを抜けて、2人は見覚えのある建物に向かう。発電所の外観は、どこにあっても変わらなかった。


「……よし」


気合を入れて、琴葉は結界を通り抜ける。彼女は立ち止まらず、最下層に向かった。エレベーターに乗り、淡い光を放つ紋様の前に進み出て。女は握り続けていた手を離す。


「ええと、ここから……」


床に(えが)かれている紋様の上に両手を置き、琴葉は地面を見つめた。土地を巡る気の流れ……龍脈は、紋様の周辺を通っている。


「……曲がり、繋がれ。地の力よ。我が意に従い、流れを変えよ」


妹が使っていたのと同じ呪文。それを、彼女よりもゆっくりと口に出して。女はイメージの中で龍脈に触れ、その形を整えた。できる限り、丁寧に。その分時間はかかったが、神も玲哉も何も言わずに、彼女の作業を(あたた)かく見守る。やがて、周辺の龍脈を全て紋様に通す頃には。琴葉は疲れ切っていた。


「……お、終わった……」


深々と息を吐きながら、彼女は紋様から手を離す。玲哉はその横に立って、微笑んだ。


「お疲れ様です。……予定とは違いますが、今日はこれで帰りましょう。予想外の出来事で、時間を取られてしまいましたし」


そう言って、彼は女に手を貸した。その手を取って立ち上がり、彼女は疲労の残る笑みを見せる。


「……そうですね。玲哉さんも、今日は早めに休んでください」


「……ええ、あなたも」


自分が限界でも、人に気を使うことを忘れない。そんな琴葉を見て、玲哉は笑みを深めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ