第二十話:発電
しばらくして。ようやく動けるようになった琴葉は、宵闇に連れられて建物に入った。ビルの中は暖色の照明で照らされていて、壁紙や家具なども全て明るい色で統一されている。他の発電方式とは違って、龍脈の力を利用する発電では、機械は特に必要としない。龍脈を流れるエネルギーには形がなく、何にでも変えられるからだ。エネルギーを発電機に伝えて電気を作るのではなく、地下に固定された術式で、無色のエネルギーを電気に変えて送る。それがこの発電所で行われていることの全てだ。エレベーターで地下に降りて、女は目の前の光景を見つめる。床に刻まれた円形の紋様と、その前で自慢げに立つ妹。
「あら、お姉様。やっと来たの? 遅かったのね。もう何もかも終わった後よ。どう、綺麗でしょ?」
言われて彼女は、ようやく気づく。地を巡るエネルギーの川が、紋様の中央に集まるように流れていると。
「……これ全部、青葉がやったの?」
圧倒されて、震える声で呟く彼女。その一方で、宵闇は渋い顔をしていた。
「少し雑だな。玲哉ならもう少し丁寧にやる」
「まあ、宵闇様……!」
青葉は彼の姿を見て、パッと顔を輝かせる。
「雑だなんて。私は、手を抜いたつもりはありませんわ」
よく見ると、彼女の体は淡い金色の光に包まれていた。紋様に描かれた文字と記号も、同じ光を発している。その前で、少女は床に手と膝をついて、目を閉じた。
「でも、そこまで仰られるのであれば。……『曲がり、繋がれ。地の力よ。我が意に従い、流れを変えよ』」
青葉の呪文に呼応するように、エネルギーの川がゆっくりと動いた。少し歪んでいた流れが、より滑らかになっていく。
「……これで、よろしいですか?」
しばらくして。流れを整えた青葉は、床から手を離してそう言った。宵闇は表情を変えず、淡々とした声で返す。
「まあ、及第点ではあるか。次は最初からそうするのだな」
「……次?」
少女は不思議そうに、首を傾げた。
「今日はこれで終わりでしょう? 2つも3つも巡るなんて、そんな面倒なこと……」
「本音が出たな。玲哉はいつもそうしている。琴葉も昨夜、手伝うと言ってくれていた。……その格好からしても分かる。お前は初めから、働く気などなかったのだろう。嫌なら帰れ。俺は止めん」
低く重い声で、彼が告げる。青葉は苦々しげに、口を閉じた。琴葉は遠慮がちに、隣に立つ男の方を見上げて聞く。
「……あの。次は、私にやらせてもらえますか?」
「構わない。好きにしろ」
神は明らかに、先程よりも優しい声を出す。仲睦まじい2人を見て、青葉は両手に力を込めた。




