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出来損ないと呼ばれた巫女は、守り神となった妖に溺愛される。  作者: 文字書きA


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第二話:神は2人

桜花(おうか)の分社は全国にあり、その本社は東京郊外の小高い山の上にあった。標高900メートルを超す山だが、大和国(やまとのくに)を支える桜花家の(やしろ)があることもあり、山頂までの道はコンクリートで舗装されている。そして、琴葉(ことは)青葉(あおば)の両親は、車でその道を登っていた。


「……申し訳ありません。本来なら、桜花のことは我らだけで解決しなければならぬところを……」


バックミラーの先。後部座席には、同行者がいた。長い銀色の髪を揺らし、紅い瞳を輝かせる男。青葉が物言いたげな視線を向ける横で、人並み外れた美貌の彼は、冷ややかな表情のまま口を開く。


「構わぬ。アレが暴れているというなら、俺が説得するのは道理だ。……それよりも、だ。何に対して、奴がこれ程までに怒るというのか。俺はそれを知りたいが」


「……怒り、ですか。宵闇(よいやみ)様には、既に伝わっているのですね」


青葉が感心したように呟く。宵闇と呼ばれた男は、ため息をつきながら告げた。


「当たり前だ。この山は暁明(ぎょうめい)の神域。奴が神威を振るうのに、最も適した場だからな」


そして彼は、目を細めながら更に続ける。


「『神託は既に下した。なのに何故従わぬのか』……先程から、こればかりだ。だというのに、神託の内容を聞こうとすると、途端に奴は口を閉ざす。それでは対処のしようもない。……娘よ。隠し立てせず、話せ。奴が下した託宣とは、何だ?」


父母が表情を曇らせた。青葉は構わず、宵闇を見つめて言葉を返す。


「次の巫女について、ですわ。指名されたのは、私のお姉様。だけれどそれは間違いよ。あの人には、彼岸(ひがん)のモノを見る力すら無いのですから」


勝ち誇ったように言い切る彼女。だが、宵闇は表情を変えなかった。


「ますます分からん。何故、その娘をここに呼ばなかった。桜花の血筋なら、力は眠っているだけだ。呼び覚ましてやればいい。暁明にならそれができる。何なら、俺が代わりにやってやっても……」


その言葉に。アスファルトの道が、横に裂けた。黒い底なしの空洞を前に、当主は慌ててブレーキを踏む。


「……ほう?」


それを見て。宵闇は、初めて笑った。楽しそうに。


「なんだ、それでか。お前が俺に、仔細(しさい)を語らなかったのは。……面白い。その姉とやら、俺が嫁に貰ってやろう」


竜巻が生まれる。それは真っ直ぐに、車に向かって進んできた。彼の言葉に、まるで抗議するかのように。その風を見て、尚も宵闇は笑っていた。


「無駄だ。ここは確かに、お前のために与えられた空間。だがな、アキ」


竜巻が、見えない壁にぶつかって止まる。車が勝手に動き出し、Uターンし始めて当主が慌てる。そんな中で、彼だけが余裕の表情でいた。


「俺も神だ。ここから抜け出すことくらい、簡単にできる。そして、俺は依代(よりしろ)がないお前と違って好きに動ける。残念だったな。お前の可愛い巫女候補は、俺の物だ」

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