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出来損ないと呼ばれた巫女は、守り神となった妖に溺愛される。  作者: 文字書きA


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第十八話:視察と姉妹(中編)

通勤のピークは過ぎていても、車内はそれなりに混んでいる。そんな中で、玲哉(れいや)と並んで立ちながら、琴葉(ことは)は先程の会話を思い返した。


『婚約するなら、あなたがいいです』


それは彼女自身の言葉だ。とはいえ、と。彼女は横目で、隣にいる年下の少年を見る。


(玲哉さんに認めてもらえていたなんて、思いもしなかったけれど)


琴葉にとって、婚約とは親が勝手に進めるはずのことだった。話の流れであっても、自分で決める想定はしておらず、それ故に現実味も薄い。


「……琴葉さん?」


彼女の視線に気づいた彼が、首を傾げて口を開く。


「……あ。ごめんなさい、つい……」


琴葉は慌てて目を伏せる。それを見て、玲哉は柔らかな笑みを浮かべた。


「僕のことを、考えてくださっていたんですか? 嬉しいな。あなたが幸せに暮らせるように、僕も精一杯頑張りますね」


「そんな……」


彼の言葉に、彼女は頬を赤らめる。狐は目を細めて告げた。


「まあ、琴ちゃんを任せるには少し物足りない気もするけれど……どの道、僕が付いているからね。君は安心するといい」


「……はい」


琴葉が頷く。それと同時に、電車は池袋駅に到着した。ホームに下りた3人は、そこから10分ほど歩いて、高層ビルの前に立つ。


「……ここが、発電所……?」


何の変哲(へんてつ)もない白いビル。建物の周囲には、結界が張り巡らされている。玲哉は難なく結界を抜けて、振り返りながら言った。


「お2人もどうぞ」


招かれて。先に動いたのは青葉だった。当然といった顔で、彼女は先に結界を通る。その後に、琴葉も意を決して足を踏み入れた。


「……なんて顔をしているの。この場の主に許されたなら、中に入れるのは当然でしょう。そんなことも分からないなんて……」


「琴葉さんは初めてのことばかりですから、仕方がありませんよ。これから少しずつ、学んでいけば良いんです」


妹が姉を責め始める。少年は笑顔のまま、その話に割り込んだ。青葉が不満そうにしながらも口を閉じる。琴葉はゆっくりと深呼吸をして、彼の(もと)まで歩いていった。


「……えっと、その。ごめんなさい。まだ、結界を抜ける感覚に慣れていなくて」


「構いません。……あなたも、彼女も。今日は見ているだけで良いんです。ですから、ゆっくり……」


彼女を抱き寄せて、玲哉は微笑みながらその頭を撫でる。その横で、青葉は不快そうな顔をした。


「なんですって? 私は、手伝いに来たのよ。何もせずに帰るなんて、そんなことは出来ないわ。桜花の巫女として、お姉様のような役立たずとは違うのだということを、示さないとならないもの」

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