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桃太郎RTA 全員協力型 Any% Glitchless

作者: 狭間閉間

お爺さんとお婆さんが家を出た直後から計測開始

桃太郎が鬼を退治し、鬼ヶ島の宝物を家に運び込んだ時点で計測終了

地京(ちぎょう)「3、2、1、スタートしました桃太郎RTA! 実況は桃太郎RTAど素人の地京が」


貝瀬(かいせ)「解説は桃太郎RTA元走者の貝瀬がお送りします。よろしくお願いいたします」


地京「こちらこそ、よろしくお願いいたします。さて、早速お爺さんが凄まじい速さで山を駆け上がっていきます! 一方お婆さんは……おっと? すぐさま家へ引き返していきましたよ?」


貝瀬「はい、お婆さんは山へ行く必要がないからです」


地京「と言いますと?」


貝瀬「桃を持って帰ってくるのはお婆さんじゃないといけないというルールはないんですね。このチャートではお爺さんが桃を家まで持って帰ります。お爺さんは山というより川に向かっています」


地京「柴を刈りには行かないと」


貝瀬「そうですね、柴は桃太郎の話が進行する上で要らないので時間を節約するために柴刈り行為自体不要な訳です」


地京「なるほど、となるとお婆さんはこの間待機でしょうか……いや、これはきび団子だ! 既にきび団子の作成に着手している!」


貝瀬「はい、家にいるだけでは勿体ないですからね」


地京「手際が良いですね」


貝瀬「この時のために練習してきたのでしょう」


地京「ちなみに今回は世界記録も狙える早さでしょうか?」


貝瀬「はい、元々凄く良いチームですし、事前インタビューでも気合いが入っているのが節々から伺えます。可能性は十分にあるかと」


地京「なるほど。是非その瞬間に立ち会いたいですね〜。さて、他の走者も見ていきましょうか。さて、これは……桃ですね」


貝瀬「はい、これは桃太郎です。桃太郎はまだ川に流されている状況です」


地京「桃太郎は流石に何も出来ず、ただ流されているという感じでしょうか?」


貝瀬「そうですね、出来ることはなくはないですが、川の流れはランダム要素が強いので、こればかりは運要素が非常に強いです」


地京「先ほどからとてつもない大声でおぎゃあと泣いているのは何か理由が?」


貝瀬「桃太郎が出来る数少ないことの一つです。これはお爺さんに見付けてもらうためにやっています。万一すれ違うと大幅に遅れてしまいますから」


地京「なるほど、川の流れはいつも同じとは限らない、桃とお爺さんが合流する地点は毎回違うということですか! 桃が流れてくるのを待つのではなく、取りに行くからこそのギャン泣きということですね。いや〜奥が深い」


貝瀬「はい、意外とRTAに重要な行動です。ちなみに喉を痛めるのは桃太郎あるあるです」


地京「この挑戦が終わった後、しっかりとケアしていただきたいですね! さて、鬼側にも動きがあるようですが……船を漕いでいますね。色々と積んでいるようですが、これはもしや?」


貝瀬「お察しの通り、宝物を鬼ヶ島から運び出しています。桃太郎が宝物を取りに鬼ヶ島まで行くのは大変ですからね」


地京「やはりそうでしたか! 宝物を自ら手放すのですね! 鬼なのに!」


貝瀬「全員協力型なので。そこには勿論鬼も含まれます」


地京「そう言われるとそうですね……」


貝瀬「さて、そろそろお爺さんがお婆さんの洗濯ポイントに差し掛かりそうです」


地京「そして当然……通過していくう! いやー、年齢を感じさせない軽やかさですね」


貝瀬「はい、日頃から鍛えているのが伺えます」


地京「日々の努力の賜物ですね! ところで気になってたのですが、お爺さんは薪か何かを背負ってませんか? ただのハンデというわけではないですよね?」


貝瀬「はい、勿論必要だから背負っています。桃太郎の物語に記載がないことはあっても良いし、なくても良いのです。流石に世界観にそぐわないレベルのことですとアウトですが今お爺さんが背負ってるものは認められているものです」


地京「そういうことでしたか。しかし線引きは難しそうです」


貝瀬「そうですね。最近ですと先に持ち込む道具を申請しますので、その時点で違反してないか分かります。過去の例で私の印象に残ってる認められなかったものはロケットですね。桃太郎や鬼の移動手段として使われました。記録はぶっちぎりでしたが、それSFじゃね?となって無効となりました」


地京「確かに、桃太郎にロケットは似合わないような……かぐや姫ならワンチャンあったかもしれないですね」


貝瀬「あ〜、まぁ」


地京「ところで、桃太郎のお供である犬、猿、雉も走者ですよね?」


貝瀬「はい、走ってます」


地京「今何をしているのか見ていきましょう。まず犬ですが、これは……走っている! 文字通り走っています! そして猿は木から木へジャンプ! 雉は飛んでいます! 向かっている先は……どこでしょうか?」


貝瀬「桃太郎の元に向かっています。早く仲間にしてもらうためです」


地京「なんと! 桃太郎はまだ桃の中だと言うのに」


貝瀬「ちなみに雉は遠いのでスタミナも要求されます。雉はどちらかというと桃太郎より鬼の方が位置的に近いので、一旦逆走して鬼のサポートをするチャートもありましたが、恩恵に対して雉の負担が大きく、今ではあまり使われていません」


地京「色々考えた末の今という訳ですね〜。おっと、ここでお爺さんに動きがあったようです。遂にお爺さんと桃が邂逅しました!」


貝瀬「桃に会うポイントとしてはやや上流ですが、考えられる範囲内かと思います」


地京「それだけお爺さんが頑張ったということですかね!? しかしお爺さんバテてませんか? 桃を担いで家まで運べるでしょうか……」


貝瀬「背負ってきた荷物の出番です」


地京「ついに来ましたか! 結局これは何なんでしょうか?」


貝瀬「一人用の(いかだ)です。これに乗って川を下っていきます。桃は筏の前に位置させてコントロールします」


地京「自然の力を利用する! 休憩もできますし、理にかなってますね!」


貝瀬「それもありますし、それより何よりとにかくタイムが縮まります。RTAですから、最重要事項です」


地京「RTA走者が言うと重みがありますね」


貝瀬「そうであれば嬉しいです」


地京「それにしてもお爺さん速い! これは良い記録が出るのでは!?」


貝瀬「はい、まだ世界記録が狙えると思います。川の流量が少なめなのが気になりますが……」


地京「お爺さんならやってくれると私は信じています! 結果が楽しみです! さて、鬼側の動きも見てみましょう……おっと、鬼、上陸! 鬼ヶ島を離れ既に上陸しています」


貝瀬「こちらも良いペースだと思います」


地京「鬼が何か準備しています。もしや鬼も何かしら道具を?」


貝瀬「はい。使います」


地京「これは……荷車だ!」


貝瀬「宝物をこれで運びます」


地京「鬼に荷車を引くイメージはあまりありませんが……」


貝瀬「荷車くらい鬼ヶ島にもあるでしょう」


地京「そうか、鬼にも生活がありますしね」


貝瀬「はい」


地京「そうこう話してるうちに鬼が宝物を載せ終わりました! いよいよ鬼が……もしや向かう先は?」


貝瀬「勿論桃太郎のところです」


地京「ですよね! 上陸するだけでは飽き足らず、できるだけ早く倒されるために桃太郎もといお爺さんとお婆さんの家へ……鬼はドMでは?」


貝瀬「そこはもうRTAなので……それが目的なので」


地京「視聴者的には不思議な力が働いたと、そう捉えて良さそうですかね……て(はっや)


貝瀬「鬼はパワーがあります。パワーがあればスピードもあります」


地京「これに勝つ桃太郎こそ鬼のような気がしてきました」


貝瀬「それはそう」


地京「凄まじいスピード! これはお供に追いつくのも時間の問題か!?」


貝瀬「そうですね、内容次第ですが」


地京「では確認してみますか……犬は順調そうですが……な、なんと雉休憩している!」


貝瀬「ペース配分を間違えたかもしれないです。猿もですね」


地京「あーっと、猿は木の枝に腰掛けている! これが本当の猿の腰掛け!」


貝瀬「リカバリーできるギリギリのところかもしれないです」


地京「頑張って欲しい!」


貝瀬「あ、マズい。すみません、別モニター見てたのですが、お爺さんがマズい」


地京「ん!? メインモニターに投影してみましょう……あ、筏! 筏が岩にぶつかる!」


貝瀬「普段は隠れている岩場です。今日は川の水位が低くて水面より上に出てしまってるんですね。これは運が悪い」


地京「無情にも筏は原型をとどめていません……ここから何とかなりませんか!?」


貝瀬「流石に厳しいかと思いますが……いや、様子がおかしい」


地京「お爺さん、桃をかろうじて死守している! そして丸太一本で川を下っているうううう!!!」


貝瀬「マジか! すっげぇ」


地京「最後まで諦めない! まさにお爺さんの執念です! そして鬼速い! 雉と猿を瞬く間に回収して荷車に載せたあああああ!!!」


貝瀬「ヤバい、いけるかも」


地京「ここで犬、先に桃太郎の家に着く! お爺さんは川から出て桃を担ぎ上げる!」


貝瀬「あー、えー、見どころが多いですが、再びお婆さんの出番が近いです。ちなみに犬は休憩できます」


地京「お婆さん包丁を持ってスタンバっている!」


貝瀬「先に解説しておきますとお婆さんは桃に対して包丁を横に薙ぎます。縦だと桃太郎を傷付ける心配がありますからね。大体桃の上から三分の一あたりです」


地京「お爺さん家に到着! お婆さんに桃が渡る! 包丁横一閃だあああ!」


貝瀬「素晴らしい正確さと速度!」


地京「桃太郎生まれる! 桃太郎生まれました!」


貝瀬「鬼の走る地響きが聞こえます。鬼もまもなく合流です」


地京「お婆さん、桃太郎にきび団子を渡します!」


貝瀬「鬼も到着です」


地京「猿と雉、荷車から飛び降りる! 犬、猿、雉、桃太郎の近くに寄りました!」


犬「きび団子くださいな」


桃太郎「おぎゃあ」


猿「きび団子くださいな」


桃太郎「おぎゃあ」


雉「きび団子くださいな」


桃太郎「おぎゃあ」


地京「犬、猿、雉が仲間に……なったんですか?」


貝瀬「なりました。あとは鬼退治するだけです」


桃太郎「おぎゃあ」


鬼「ぐあ〜やられた〜」


地京「鬼、桃太郎にやられ?ました! すかさず荷車から全員で宝物を運び込みます!!!」


貝瀬「ここでタイマーストップです!」


地京「記録は!?」


貝瀬「1時間37分45秒! 3秒更新! 世界記録達成しました!!!」


一同「うおおおおおおおおおおお!!!」

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