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だからこのゲームは間違っている  作者: 美海秋
このゲームのストーリーは間違っている

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9/63

9ゲーム目 魔法作る

落石からなんとか逃げ切った俺たちは、出口から出ていた。


「酷い目にあった」

「それは、こっちのセリフだ」

「あたしはほら、助けようとしただけで」

「だからって大技をするなよ。普通に危ないってことがわからないのか?」

「だって、破壊するなら、おもいきりやったほうがいいと思って」

「おもいきりやりすぎだ」


さすがにここまで破壊されると思っていなかった俺は、そう言葉にしてため息をつく。

確かに最初は俺が油断して洞窟の岩に挟まれたせいだとはわかっているが、あの勢いで壊してくるのは、俺だって予想していなかった。


「それで、遊夜についてきたけど、ここはどこ?」

「ここか、出口だな」

「それはわかってるけど。最初の場所とは違う気がするけど」

「だってなあ……最初の入口は木でふさがっていただろ?」

「そうなんだけど」

「だから、ここに来た」

「うん、でもどうしてここ?」


亜紀が言いたいことも理解できる。

出口の一つというのが、よくある場所。

そう滝の後ろだからだ。


「こういうのって、財宝があるところじゃないんだ」

「残念そうに言うな。そもそも、ゴブリン退治が終わったら、そこで財宝くらいはゲットできるはずだったんだ」

「でも、できなくなったと……」

「誰のせいだ、誰の!」

「そんなことを言われても、あたしは悪くないじゃん。最初悪かったのは遊夜でしょ?」

「そう言われたら、反論はできないけどな……どうするよ」

「場所はわかるんでしょ?」

「ああ、そもそもこうなったらゴブリンキングがどうなったのかも確かめるすべがないけど、たぶんやったんじゃないか?」


俺はそう言葉にして、滝から出て、壊れてしまったトーテムを見る。

ここもあの入口と同じようにしてトーテムは存在しているが、滝の近くであることもあり、周りにはこのトーテムに届くような木がない。

だから、あんな無茶はできなかったのだが、こんなことになるのであれば時間はかかっても素直に周囲のゴブリンマジシャンたちを倒し、トーテムの封印を破壊してから洞窟の中に入るべきだと思ってしまった。

いや、今更気にしたところで仕方ないのかもしれないが……


「こうなった以上は、あれをやるか」

「あれ?」

「まあ、見ておけよ」


俺は手首の機械を操作すると、作業台を出す。

そして、収納袋からいくつかアイテムを取り出す。

そのアイテムを混ぜ合わせて、完成させる。


「はい、テッテレー魔法の書~」

「魔法の書って」

「ああ、これで君も魔法使いってやつだ」

「これが……」


俺が作った魔法の書を亜紀は手に取ると、珍しそうにふる。

だが、そんなことをしたところで、魔法が使えることはない。


「え?発動しないんだけど」

「当たり前だろ?そんなことで魔法が使えるようになるのなら、最強すぎるだろ?」

「最強すぎるって、魔法使うためには、そもそもアイテムを集めないといけないんだから、それくらいのことは必要だとは思うけど」

「確かにな。でも、そうなると魔法を作れば最強になるからな。それはさけたかったんだ」

「あんたって、やっぱり面倒なゲーム設定にするのが好きなんだ」

「おい、人のことを変態みたいに言うな」

「変態みたいじゃなくて、変態だから」

「酷いな。だけどな、やり方を見れば、結構いいものだと思うぞ」

「へえ……じゃあ、見せて」

「いいだろう」


俺は亜紀から魔法の書を受け取ると、手を前にして持つ。

よし、俺も魔法を使うのは初めてだからな、やるか!


「水の球発射!ウォーターボール」


俺の言葉に反応するかのようにして、魔法の書の前に水の玉が出来上がる。

そしてそれは、壊れたトーテムに当たるのだが……


「えっと、弱すぎない?」

「しょうがないだろ、さっきも言ったけど強すぎたら、それしか使われなくなるからな」


俺のその言葉の通り、魔法で作り出した水の玉の威力はかなり弱いものだ。

壊れたトーテムに当たったところで濡らすだけでさらに破壊することもできない。

言っているように、魔法は弱い。

だけどこれは、一番最初に使える魔法であり、弱いというのも仕方ない。

そもそも魔法の書というものを作るために必要な素材というのは、モンスターからドロップする魔石と紙だ。

その二つで作れるものが書物。

あとは、そこに使いたい属性のものを混ぜることで、魔法の書となる。

今回であれば、滝もあったからこそ水を混ぜた。

これによってできたものが、今回の水魔法だ。

だけど、弱い。

弱すぎる。

弱い理由というのは簡単で、モンスターからとれる魔石というものが弱いからだ。

後々から倒せるモンスターからとれる魔石を使うことでさらに強い魔法が作ることができるのだが……

ここからは工夫だ。


「ま、次はまた面白いことをするか」

「今度は魔法の書でも重ねて作るの?」

「ははは、何を言ってる?そんなバカなこ、イタタタタ」

「武器を作ったときにしてたから、同じように作るのかって、聞いただけじゃない!」

「すまない。わかった、わかった。作り方を見せるから、ちょっと待て」


なんでこう亜紀は先に手が出るのだろうか?

俺はそう考えたが、ここで下手なことをして余計に怒りをかうのも間違っていることはわかっている。

ま、武器のときもそうだけど、ここはさっさとやることを見せるしかない。

俺は裏世界のときに大量に亜紀が倒したモンスターの魔石を作業台の机に広げる。


「魔石をこんなに大量に出して、どうするの?」

「見とけよ」


俺は広げた魔石を水と混ぜる。

作業台の上だからこそできることであるこれは、逆だ。

普通の工程は魔石と紙でできた書物に使いたい属性のものを追加するが、弱い魔法を強くするためには、逆に魔石を属性のものと混ぜる。

これによって、最初から強い魔法の書が作れることになるのだが、このことに気付くことができるのは、後々になってからだ。

だから、最初から知っていればこうやってできる。

ま、残念なことといえば、失敗する可能性もあるということだ。

三つにわけていたうちの一つのみが最後までしっかりと混ざり、強い魔法の書が一つのみ完成する。


「また、時間かかりすぎ」

「しょうがないだろ、このゲームの本質はクリエイティブ。作ることなんだからな」

「あっそ……」


作っているうちに、だんだんと興味をなくしたということなのだろう。

仕方ないといえば、仕方ないことだが……

まあいい。


「見とけよ」


俺はそう言葉にすると、先ほどと同じように魔法の書を前に構える。


「水の球発射!ウォーターボール」


自信満々に魔法を放った。

だが、水の球は思ったよりも大きくなりすぎている。


「遊夜?」

「やばいな!」


俺は慌てて放つ位置を変える。

そして放った先というのは、ゴブリンたちがいる洞窟だ。

ヤバい。

そう考えたときには、遅かった。

ドカンという音とともに、滝ごと水の球がはじけるのだった。

そして、多くの水が滝の勢いとともに流れるのを見た俺たちは、本日二度目のダッシュをするのだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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