7ゲーム目 ゲームとしてはよくない
「これが都市?」
「ああ、でかいだろ?」
「確かに、言われてみれば大きい?」
「なんとなく言いたいことはわかるけどな。だけど、フィールドに趣をおきたかったから、どうしてもこうなったんだ」
都市というからには、想像していたのは、数千人規模の大きなものだと思っていたのだろうが、実際には数百人程度で、確かに町よりも大きいと思う程度だ。
大きく違うところは、都市は城壁に囲まれているところだ。
「うーん、そもそもこの世界全体が小さいとか?」
「いや、かなりデカく作ってるぞ」
「そのわりには、NPCが住んでる場所は大きくないように感じるけど」
「仕方ないだろ?クリエイティブオンラインは、いろいろなものを作れることが魅力なんだ。だとすれば、素材があったほうがいいだろ?」
「どういう意味?」
「あれだ。いろいろなものを作れるからな。素材はいろいろなところで採れるほうがいいだろ?」
「確かに、それはそうなんだけど……さすがに極端すぎるでしょ」
「そんなことはないぞ、これでもかなり作れるものは厳選したからな。本当のところを言えば……」
俺はそこから語りつくす。
時間にしては、それほど長く話したつもりはないが、気づけば亜紀に頭を叩かれていた。
「いてえ……」
「そう思うのなら、あたしと一緒にやってるってことをもう少し意識しないとね?」
「それは、すみません」
亜紀にそう言われて、俺は素直に謝っておく。
こういうときに、変に反論してしまうと余計にややこしくなることをわかっているからだ。
いや、悪いのは俺だということも十分にわかってはいるのだが……
暴力を振るわれるというのは、なかなかに理不尽だ。
「なに?もう一発いっとく?」
「ふ……やめておく」
俺はこれ以上ややこしくするのはよくないと感じつつ、先へと歩き始める。
とはいえ、ここからはメインストーリーを進めなくてはいけない。
都市の中というのはそれなりに広く、空き地も存在している。
これは、クリエイト。
土地を買うことで、安全に家を作ることができる。
いや、こういうゲームで言えば拠点と言ったほうがいいかもしれないが……
今が普通のゲームであれば、こういうところが真っ先にやりこみ要素として話題になりそうなものだが、最初にあんなことがあればやることといえば、装備を整えるということになるだろう。
だけどだ……
「こういうのを見ると、なんだかな……」
「何?あたしたちだけ、ちゃんとした装備してないって?」
「そんなことは気にしてない。見た目は確かにいいかもしれないけどな。結局強さに関しては俺たちのものが最強だしな」
「そうなの?」
「当たり前だろ?ああやって見ても、どうしても最初から攻撃力が強い武器ばかりを採用してるからな」
「でも、最初から強ければ、後々強化しなくてもいいと思うけど。それに……」
「なんだ?」
「防具。ほかの人たちは結構ちゃんとしてると思うんだけど」
「まあ、それについていえば、面倒だっただけだ」
「面倒だったって」
「いいだろ?行けばわかるからな」
どういう意味なのか、亜紀はわかっていないだろう。
だけどだ、すでに俺たちは今いるプレーヤーの中でも最強にいるということをわかっていない。
初期装備で三つ目に行くべき場所の都市にいる俺たちというのは、少しではあるが疑問には思われているようだ。
「さっさと行くか」
「どういうこと?」
「メインストーリーを進めにだ」
「でも、あれじゃないの?ゴブリン退治だよね」
「ああ」
「そういうのって、どこにいるのか情報を手に入れないとダメだって、言わない?」
「それについては任せろ」
「え?」
「ゴブリンがいそうな場所くらいはわかる」
「じゃあ、そこにいなかったら?」
「そうなったら、考えるさ」
「適当すぎる」
「仕方ないだろ、もし俺たちは異端だからな」
「そうかもしれないけど……」
「ま、行くぞ」
「うん」
亜紀は俺についてきてくれる。
「ちょっと、どうなってんのよ」
「いいから走れ!」
「だから、無茶苦茶するのは嫌なのに!」
そうして、俺たちは崩れ行く洞窟に巻き込まれないように必死に走っているのだった。
目の前に落ちてくる落石をかわしながらも、俺はどうしてこうなったのかと思うのだった。
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