6ゲーム目 いつの間にか、ストーリーは壮大に
「ワシらの求める勇者に、おぬしたちはなりえるのか……」
「さあな」
「そうか、挑戦してくれるか!さすがは、未来の勇者じゃ……さあ、いけ!次の都市で、おぬしたちの力を試すための試練が待ち受けておる!」
長老と言っていた男はそう言葉にして、次の都市がある方向を指さす。
次の都市へと向かえということなのだろう。
これで、メインストーリーの受注が完了したことになる。
「さっきから、適当に返事を返していたのは、なんでなの?」
「いや、どんなNPCに仕上げているのか気になってな」
「満足のいく結果だった?」
「全然だな」
俺はそう答える。
確かに、確かにだ……
ストーリーを強引に追加することになれば、基本的にNPCが自分の言葉で話すことはまずありえないだろうということがわかってはいた。
物語がうまく進むように、決まった定型文のみを話すことくらいの予想はついていたが、本当にそうなってしまっていると、どこか寂しさを感じてしまう。
「でも、仕方ないじゃないの?」
「まあな……俺もわかってはいるけどな」
「認めたくないと」
「ああ、そんなところだ」
これに関しては、改悪されたとしか思えないため、思わずそう口にする。
だって、ストーリーを追加するのは確かにいいことなのかもしれないが、そのストーリーを話すNPCとの会話が成り立たないのは、せっかくの最新ゲームとしては弱いと考えてしまう。
「今更文句を言っても、意味ないよな」
「そうね。そもそもこんなところで文句を言っても仕方ないと思う」
「だよな……」
結局のところ、今何かを言っても仕方ないのだ。
「じゃ、行くか」
「わかってる」
亜紀と俺はメインストーリーが行っている都市へと向かう。
そして、向かう途中で、そもそもこのゲームのメインストーリーをおさらいした。
クリエイティブオンライン。
そう呼ばれるここは、多くのモンスターが存在する。
そんなモンスターたちを、作ったもので倒していけ!
なんていうのが、クリエイティブオンラインのストーリーだ。
ただ、作って適当に遊んでいくというものを最初は作っていたはずだというのに、気づけばそれなりに壮大なストーリーの作品になっている。
そんな未来を誰が想像しただろうか?
「ま、それでも時間がなかったから、壮大な感じのストーリーにだけなってるんだろうな」
「仕方ないんじゃない?本当にバグがいっぱいあったなら、それをなくすのに、時間がかかるだろうから」
「でも普通なら、ゲームは延期したりするものだけどな」
「ほら、売上がないと会社が倒産するって聞くけど」
「ゔ……リアルすぎる話はやめてくれ……」
「仕方ないじゃないの?素直に給料が払えないからやめてくれって言ってほしかったの?」
「それは、それで悲しいな」
「ほら、面倒くさいやつになってるじゃん」
やれやれと呆れたように亜紀に言われる。
面倒くさいと言われようとも、仕方ない。
そういうことをどうしても考えてしまうのは……
「いいじゃない」
「何がだ?」
「ちゃんと目的があるんでしょ?」
「ああ」
「だったら、そのほうが普通のプレイヤーにはありがたいと思うけど。わからないってことも防げるし」
「言われてみれば、確かにな」
やることが決まっていない。
そんなゲームは、どうしてもやることがわからないという時間があったりする。
その時間に他の楽しみを見いだせる人と、そうでない人がいる場合があるのだ。
だとすれば、ストーリーがちゃんとある方が、迷うということがなくいいということなのだろう。
「ま、結局はクリア目指して頑張るしかないよな」
「当たり前でしょ?こんな中で死にたくない」
「だな」
俺たちはそう言葉にするとメインストーリーを行うための都市へと向かうのだった。




