3-6ゲーム目 才能の差
お金を払った俺たちに、マッチ売りの少女は、その持っている籠に入ったマッチのようなものに火をつける。
どういう理屈かはわからないが、点いた火の色は青色だ。
こういうところを見ると、ゲームだなと思ってしまう。
「ねえ、これはどういう時間なわけ?」
「火を見てるんだよ」
「え?お金を払えば、いつものストーリーが始まるんじゃないの?」
「どういう理屈なんだよ。すべての会話をスキップでもしてるのかよ」
「興味のないところは仕方ないじゃない?」
亜紀にそう言われたが、内容を知らない以上はどう対応していいのか、わからなくならないのだろうか?
まあ、そういうことを言っても仕方ないことはわかっているのだが……
そんなことを考えているうちにマッチの火が消える。
「お兄さん、マッチを買いますか?」
同じようではあるが、先ほどとは違う言葉。
一つ買ったおかげなのか、口調は少し砕けたものになっていた。
だからこそ、俺は違う言葉をかける。
「どうしてこんな時間にこんなものを売っているんだ?」
「お金がいるのです」
「まあ、売っているからな、それくらいはわかるが」
「これを売らないと、生活ができないのです」
「じゃあ、全部買えばいいのか?」
「これを売らないと、生活ができないのです」
俺は買える全てのマッチを買い取る。
これで、さらに何かが動くはずだ。
それは予想通りだったようで、少女は違う言葉を口にする。
「全部売れました、ありがとうございます。これで、生活できます」
「そうか……」
「はい。実はこれには理由があるのです」
「それは、なんだ?」
「お母さんが、連れていかれてしまったのです」
「どんな相手にだ?」
「お母さんが、連れていかれてしまったのです」
「いや、そこは教えてくれないのかよ……」
とはいえ、これで物語が進んだということになる。
ということは、この後に待っていることというのは、モンスターとの戦い。
それもウルフキングになることは確定だろう。
普通であれば、モンスターがどこにいるかも含めて、この都市にいる人たちに話を聞いたりする必要があるのかもしれないが、場所が最初からわかっているのでその必要もない。
「今回のストーリーの内容はこういう感じか」
「人助けってこと?」
「ああ、そうだな。というか、最初からそういう感じにはなってるぞ、俺たちが知らないだけでな」
「ふーん……」
相変わらず亜紀は興味がなさそうだ。
確かにストーリーに関していえば、一貫性がなくとりあえず詰め込みましたという内容だ。
前回のオンセンで戦ったときは急に攻めてくるというもので、攻め込んできたモンスターから救った存在というのが、俺たちだったということになっている。
そして、もらったものは武器。
その武器が次に使えるのかと言われれば、ただの武器でありよくある次のストーリーの鍵になるようなものでもない。
実際、俺が一人でこのゲームをやっていたら虚無に襲われていたはずだ。
「じゃ、倒しにいくか?」
「え、今から?」
「ああ、武器も作ったしな。どんな強化を受けているかはわからないけど、いけるはずだ」
「へえ、自信があるってわけね」
「ああ……」
あれだけの武器があれば倒すことは簡単だろう。
それに、さっさと倒しておきたい理由がある。
ここサムイの前、オンセンからはいくつかの都市にアクセスすることができる。
その中でも、準備をしないであまり行きたくない場所がある。
だけどだ、他のプレーヤーたちが俺のそんな考えがわかるはずもなく、行ってしまえば、簡単に全滅という未来もありえるだろう。
「いろいろあんだよ」
「いろいろなんて、いつものことでしょ」
「確かにな」
「じゃあ、行く?」
「ああ、行くか」
「オッケー」
「じゃあ、そろそろ手、離してもらっていいか?」
「はあ、しょうがないわね」
亜紀からようやく手を離してもらった俺は、解放された後に作っていた武器を渡す。
「ふーん……」
「気に入ったか?」
「まあね。じゃあ、お互いにスキルでも作りながら、向かうってどう?」
「いや、そうは言っても、簡単にスキルは作れないだろ?」
「そう?」
亜紀は言葉にすると、前にダッシュする。
右手で切り上げ、そして両手で持つと、突き刺すように剣を振るう。
さすがというべきなのか、武器を扱うのがうますぎる。
スムーズな動きに、俺は驚きながらも少し呆れてしまった。
今のもスキルとなるだろう。
そして、亜紀は続けて槍のように突きをしてみたり、さらにはぶんぶんと振り回してみたりと、多種多様スキルを作れるだけ作ってしまう。
「どうして俺に、ああいう才能がなかったのだろうか?」
そんなことを思いながらも、俺もスキルになるかわからないながらももっているカタナを振り回すのだった。
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