3-2ゲーム目 熱いドリンクと馬車
回復薬などのアイテムを一日で作り、用意を済ませた俺たちは、次の都市。
そして、何かイベントがあるであろう場所の近くへと向かうことになっていた。
「それで、どうして次は寒い場所へ行かないといけないわけ?」
「だから、今回の都市で手に入れたオンセンが使えるからだって言ってるだろ?」
「聞いた、聞いたけど、理解できない」
「いや、そうなったら、もうただの理不尽じゃねえかよ」
「しょうがないでしょ、嫌なことには理屈がないし」
「く……そう言われたら説得力があるな」
「ほらね」
「俺が悪いみたいなことになるのは、違うと思うがな」
確かに俺が最初のうちにこだわって作った場所なので、言われてみればそうなのかもしれないが、認めるというのも何か違う。
そんな俺たちが次に向かうのは、都市サムイだ。
名前の通り、寒い場所で、行くためにはこの世界では珍しいもの、トンネルを通る必要がある。
そこを通れば、あら不思議、一気に雪模様の景色に変更されるのだ。
そして、寒いことが確定している都市サムイへと向かうときに必要なものというのが、オンセンだ。
これを綺麗な飲み水と、薬草、唐辛子を混ぜることによってできるもの。
ポカポカドリンク。
これを飲むことで、寒さに強くなる。
問題点は……
「飲むと、全ての攻撃になぜか火属性をまとうことができるってところだな」
「意味がわからないんだけど、それのどこに不都合があるわけ?」
「あるだろ?次に飲む予定のヒエヒエドリンクを飲まない限り、全てに火属性をまとうんだぞ、魔法書でも火以外は使えないからな」
「ふーん……」
「ふーんって……」
「だって、次のサムイでは、そのドリンクを飲むほうがいいんでしょ」
「まあ、それはそうだな」
「だったら、よかったんじゃないの?それに」
「それに?」
「そういうことは、飲む前に言うもんでしょうが!」
「イダダダ……すまないって」
だって、俺が出したものだからと、何も考えずに飲むとは考えていなかったからだ。
信頼されているのは嬉しいことだが、俺だって予想外だったのだ。
だけど、これで俺たちは次の都市へと進む準備が整った。
あれから、幸人が作ったAIがどこにいったのかわからなくなったが、あれが作ったAIということならどこかにいるのだろう。
だったら、今は気にしても仕方ないということだ。
「よし、じゃあ行くぞ」
「そういうのはいいけど、何で行くわけ?また歩きは嫌なんだけど」
「大丈夫だ。ここからは、どうやっても近道ができることはないからな。それにトンネルを通るから陸路だ」
「じゃあ」
「ああ、ファンタジー世界の醍醐味である、馬車になるな」
「それはちょっと楽しみではあるかな」
「だろう?」
亜紀が少しウキウキしてきたところで、ヒメちゃんにも声をかける。
「すまない。いつもの感じで二人でばかり話して」
「大丈夫です。私はそれを見たくて二人と一緒にいますから!」
「そ、そうなのか」
「はい!」
だけど、俺の心配というのは杞憂なようで、ヒメちゃんは凄く興奮してそう言ってくれる。
心配は杞憂のようで、大丈夫そうだ。
だったら、なおさら次の都市サムイへ向けて出発するために、俺たちは馬車を買える場所へと向かった。
「ねえ、これってあたしたちが、運転しないといけないわけ?」
「まあな。ロマンを求めた結果だ」
「ロマンを求めたって何なのよ」
「いや、あるだろ?ロマン」
「でも、こういうのって、面倒なんじゃないの?」
「いや、簡単だ、やってみるか?」
「まあ、ちょっとくらいなら……」
最初は遠慮がちにそう言葉にしていたのだが、馬車を運転し始めるとそんな感じは吹き飛んだようだ。
「楽しい、すごいじゃん」
「だろ、風になれるよな」
「うん!」
嬉しそうにそう言葉にしている。
そんな馬車の操作方法というのは、手綱を両方引っ張ることによって止まる、両手で手綱を使って叩くことで進む、曲がるときなどは片手で手綱を使って叩くことで進む方向を決めることができる。
操作はなるべく簡単にとは思っていたので、それが亜紀にはまってよかったと思ってしまった。
そんなことがありながら、俺たちは誰も追いつけることもなく次の都市へと向かって行くのだった。
「これは、すごい」
「だな」
「本当ですね」
そして、俺たちは急な雪景色にファンタジーを感じながら、馬車を走らせていくのだった。
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