2-21ゲーム目 お風呂と突然と
遊夜が後輩だったものと会話をしているころ、亜紀たちはお風呂に浸かっていた。
久しぶりのお風呂、それも露天風呂なのだ。
ゆっくり入ろうと考えるのは、亜紀とヒメちゃんともが感じていることだった。
「ヒメちゃん」
「はい!」
「一生懸命に見るのはいいんだけど」
「はい」
「あそこまでわかりやすく、メモを取るのはよくないんじゃない?」
「ですが、私は一言一句逃したくなくて……」
「そう言ってくれるのは嬉しいんだけどね」
亜紀はヒメちゃんのこういうところに驚いていた。
感覚がずれているといえばいいのか、普通の人ではそうはならないだろうと思っているようなことでもしてしまう。
ヒメちゃんがしたいことというのは、亜紀と遊夜がどういう会話をしているのか、どうやって二人で過ごしているのかということだ。
亜紀からすれば、普通にしているのだが、ヒメちゃんからすれば学ぶことは多かった。
それだけ、これまでの恋愛とは違うことばかりだった。
そもそも、ヒメちゃんからすれば、一方からだけの好意しかこれまでなかった。
だからこそ、亜紀と遊夜のような関係というのがあり得なかった。
本当はお互いが好きで付き合うはずなのだが、ヒメちゃんはずっと自分が想い続けるのが普通であり、そうなることが付き合うことだと考えていた。
だけど、二人はお互いに好きという好意が、信頼が普通に会話をしているだけでわかるようなものだった。
ここまでなるには、どれだけのことが必要なのかわからない。
だからこそ、それを知るためにも二人についていっている。
「私にはわからないことが多いですから」
「そうなんだ」
「はい。恋愛についても、このゲームについても」
「そうだね。それは見ていればわかるけど」
「そうですよね」
亜紀とヒメちゃんはお互いにその後も会話を続けていく。
こうして、お風呂の中での会話が続いていったタイミングだった。
ドンと音が鳴り、都市全体が震えたのは……
※
「何だ?」
「動き始めましたね、先輩」
「どういうことだ?」
「先輩は、もしゲームを終わらせたいときどうしますか?」
訳がわからない揺れとともに、幸人からそう言われた俺は、意味がわからなかった。
ゲームを終わらせる?
クリアするしかないんじゃないのか?
思わずそう考えていたのだが、当たり前のようなことを幸人が言うのか?と疑問に思ってしまう。
そんなときだった。
「ギャアアアアア!」
モンスターの鳴き声が聞こえる。
なんとなく声だけで、声を出しているのが先ほどの会話で出てきたロックコドラで間違いないんじゃないのかと感じた。
だが、おかしい。
ロックコドラは普通であれば、おとなしく。
誰かが近づかない限りは、あんなに狂暴そうな鳴き声を出すなんてことはあり得ない。
そして、先ほどの揺れも……
どれだけモンスターを改造していても、出現場所は同じで……
そこで先ほどの会話を思い出した俺はハッとする。
「まじか……」
「気づきましたか、先輩?」
「なんとなくわかったのと同時に、悠長なことをしている暇がないことはわかった」
「さすがは、先輩ですね」
満足そうに幸人は頷くが、わかっていたのであれば、最初から教えてほしかった。
まさか、モンスターをキメラとするだけではなく、生息範囲も本当に変えているのだろう。
まるで、都市の中にいても安全ではないという教えるためのような動きだ。
本当に厄介なことが起こっている。
「こうしちゃいられないな」
「先輩?」
「わるい!」
俺は何かを言われる前に走っていく。
すぐにでも亜紀と合流しないといけない。
そう考えながら……
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