2-18ゲーム目 着いてきたもの
飛んでいた石たちは、上から落ちてくる。
うまく周りに落ちるように調整するようにして、攻撃をした。
だからこそ、周りに石たちは落ちていく。
小さな石であっても、かなりの高さから落ちることによって、攻撃力はかなりのものになるはずだ。
それも範囲攻撃だ。
まあ、そうなってしまうと周りにいた奴らも、出てくるしかなくなるのだ。
「んだ、これ」
「逃げろ」
「降ってくるぞ!」
そのほかにも多くの人の声が聞こえる。
普通であれば、こういう攻撃は盾を上に向けることによって、防ぐことはできるのだが……
ここは山頂だ。
当たり前だが、ここに来るためには山道を歩かないといけない。
山道を歩くのに、盾を装備する。
確かにこのゲーム世界ではスタミナという概念がない以上は普通にいけるだろう。
だが、ここは岩山だ。
大きな盾を持って歩くと、そこらじゅうの岩に引っかかるなんてことは起きるだろう。
それに引っかかれば山から転げ落ちるということも予想できるだろう。
だから、簡単に防ぐことはできない。
避けるのも、こんな場所なら尚更に……
「避けろ、避けろ!」
なんとか必死にやっているが、中級魔法すらも使えるロックショットだ。
飛んでいく岩もかなりの数がある。
避けるのは容易くない。
「こういうときは、本当にえぐいことするのね、あんたは……」
「人聞きの悪いことを言うなよ」
「だって、本当のことじゃん」
「確かに、今の現状を見れば、否定はできないな」
避けきれなかったようで、周りにいた人たちは出てくる。
人数としては、六人。
俺たちの倍はいることになる。
そもそも、ヒメちゃんは戦闘能力がないということを考えると、三倍の戦力だ。
ここで戦うことになるというのだろうか?
俺は警戒を強めるが、六人は両手を上げている。
その中でも、真ん中にいる男が俺に向かって口を開く。
「いや、すまねえすまねえ。ワイはたくわんってもんなんやが」
「たくわんがどうした?」
「いやー……そんな警戒されるのは、ワイとしても申し訳ないことをしたなって思ってるって」
「だから、それがどうした?」
「いや、だからな。ワイたちはただ気になっただけやで、どうして次の都市へと向かうこともなく山を登り始めたのかということと、強力なモンスターを速攻で倒した人らが何のためにこんな何もない山に登ったのかってな」
「理由はわかったのか?」
「いやー……わからないなあ……このまま最後までこそこそと着いていきたいのはやまやまだけどな」
「どうかしたのか?」
「どうかしたのかって、今さっきの攻撃をした人が、そんなことを言いますまじで」
「攻撃?はて、俺は魔法の練習をしただけだ」
「はは、なるほどなるほど、そんなことを言われたら、余計に警戒するわけなんやがな」
「だったら、どうするんだ?」
「逃げるしかない。こうはいったら、なんやが、下手にちょっかいをかけると、人数差なんか一瞬で足元をすくわれそうや」
「そうか」
「ま、そういうことや。じゃあな」
男はそう言葉にして、去っていこうとする。
俺は、そんな男に声をかけておく。
「帰るなら、ちゃんと同じ道をたどるほうがいいぞ」
「なるほど、忠告感謝やで」
男たち六人はそうして去っていった。
悪い奴でもなければいい奴でもなさそうというのが、男を表すのにはちょうどいい。
これからどうなるのかわからないキャラになりそうだ。
トロールを倒したのだから、こういうことは起こりえるだろうとは思っていたが、こんなに速いとは思っていなかった。
だからこそ、俺は考えた。
「よし、今日はここで少し休憩するか」
「美味しい食べ物、持ってきてるんでしょうね?」
「それなりにな」
「えっと、いいのでしょうか?」
「夜になったら、さすがに見えなくなるからな。早めに必要なことだからな」
そして、俺たちは休憩の準備をする。
持ってきていたものを広げて、食べたり飲んだり。
ゲームの中でキャンプのような気分を味わっていた。
そうこうしているうちに、時間は過ぎていき夜になる。
そうなると、あることが始まるだろう。
「この音」
「お、始まったな」
「え?」
さすがというべきか、ヒメちゃんは何か音が聞こえているのだろう。
俺には聞こえないが、あのタイミングからこの岩山から下山するのであれば時間は夜になる。
昼間というのは、確かにドラゴンが出てくるであろう場所を避けていたというのもあるがここにいるであろうドラゴンの面影すら感じなかった。
だけれど、昼間と夜ではドラゴンの生息域が違うというのは知らないだろう。
忠告はしたが、もしかしてとは考えていたが、案の定というやつだ。
誰かが、気づかずに範囲に入ってしまったということだろう。
とはいえ、戦うこともなく逃げることにすれば、ここ岩山にいるのはアースドラゴン。
羽が生えている存在ではないので、逃げ切ることはできるはずだろうが、問題はそこじゃなかった。
「移動するぞ」
「どういうわけ?」
「たぶん、下でドラゴンが暴れてる」
「それがどうしたの?」
「可能性があるんだよ、こっちに来るな」
「トレインってこと?」
「いや、夜のほうがドラゴンは活発って設定にしてるからな」
「それって……」
「ああ……ドラゴンが来る確率はある」
「面倒な設定にしたんだ……」
「そういう言い方は傷つくからな」
それに、こういうことに備えて山頂で休んでいた。
何かあればわかるだろうし……
「じゃ、見つからないよう行くか」
「はあ……絶対次のところでは、いいとこに泊まろうね、ヒメちゃん」
「は、はい!」
早々に撤収を開始した俺たちは、その場を後にするのだった。
降りてからもいろいろなことがありそうだと感じながら……
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