4ゲーム目 モンスターは小間切れです
「なかなかいい!」
「それは、どうも」
「ありがとね、遊夜」
「へいへい……」
亜紀は嬉しそうに両手腰につけたかぎ爪を見ている。
この世界には多数の武器があるとは言ったが、まさかかぎ爪を選択するとは、さすがは亜紀だった。
それも、両手ということもあり二本。
訓練用かぎ爪は両手ともに、プラスはキリよく五十。
俺の訓練用ソードが余ったもので強化したので、プラスは二十。
倍どころの話ではない。
時間も三時間はかかっている。
だが、嬉しそうにしている亜紀を見て、まあいいかと思う。
結局のところ、俺たちのように鉱石を掘っているほかのパーティーは見当たらなかった。
それもそうだろう。
普通に強い武器を作るのであれば、モンスターを倒すことでゲットできる素材を使うほうが、最初から強い武器を作れるからだ。
あとは、武器をもし持っているモンスターであればドロップすることもある。
普通にしていれば、そっちのほうが効率がいいことは確かだからだ。
「ここからは、何をするの?」
「ようやく、物語をスタートさせる」
「だったら、ゴブリン退治?」
「ああ」
このクリエイティブオンラインはデスゲームになったのだが、一応調べてわかったことがある。
それが、メインストーリーとサイドストーリーだ。
メインストーリーは、名前の通りメインの内容であり、さらには誰かがクリアをすると終わるものだ。
現在メインストーリーは三つ目の町。
そこからは都市へと変わるのだが、そこにある依頼。
”ゴブリン退治は突然に!”という名前のものだ。
「やっぱり、モンスターが出てくる依頼はきつくなるよな」
「当たり前でしょ、死んだら終わりなんだから」
「ま、そうなんだけどさ……」
でも、だからこそ、やってやろうと意気込むやつらも出てくるとは思っていたが、どうなんだろうか?
俺たちは、歩いて三つ目の都市である。
オンセットへと向かう。
「それで?ゴブリンって強いの?」
「強いだろ、最初は苦戦するもんじゃないのか?」
「ふーん……そっか」
「ああ……って、モンスターを通り魔していくのやめてもらえます!」
「通り魔?なんのこと?」
「いや、その武器を振り回してることを言ってるんだよ」
「ん?これ?」
亜紀はそう言葉にしながらも、かぎ爪を振るう。
訓練用かぎ爪。
プラスにしすぎているそれは、攻撃力が100を超え、亜紀のポテンシャルもあるのか、攻撃は地面をえぐるようにして五メートルほどを破壊している。
「どんな火力してんだよ」
「どんなって酷い。あたしは普通に腕を振ってるつもりだけど」
「確かに亜紀にとっては普通なのかもしれないけどな。普通の人から見れば破壊神だからな」
「なんで?」
「なんでって、おま……」
亜紀はさらにかぎ爪を振るう。
近づいてきていたモンスターたちは、それによって木端微塵になる。
やりすぎだろ……
俺はそう思うのだが、亜紀はそう思わないらしく。
振るった後を見ながら、首をかしげている。
そもそも、最初から数えて三つ目に行くまでの間。
モンスターが出てくるのは、一つ目の町を出てからになるが、モンスターたちはちゃんと襲ってはきているのだが、全てのモンスターは亜紀が振るうかぎ爪によって倒されていっている。
このゲームにおいて、レベルというものは存在していない。
だが、武器によるスキルに関しては、存在しているというのは全員が知っていることだ。
そのスキルは自分で作ることができるのだが、作るために必要なことというのがある。
というのも、俺も一応スキルを作るために何度かやったが、実際にできたスキルはただ切ることの”スラッシュ”と二回切る”ダブルスラッシュ”だ。
このゲームを理解している俺ですら、このゲームに慣れていないためか、できることはこの二つなのだが
、亜紀は簡単にスキルをいくつか作ってみせたのだ。
例えば”クロー”、”ダブルクロー”は俺と同じようなかぎ爪によっての攻撃だが、そこからが”クローガウジ”……今地面をえぐるようなスキル。
そして、後”ラッシュクロー”などなどがある。
特にこのクローガウジという名をつけた、かぎ爪によって地面をえぐるようにして攻撃を行うスキルが、チートだ。
周りにいるモンスターは、その攻撃によって全て粉砕されるからだ。
俺が何かをするわけでもなくモンスターたちが粉砕されていくのを見て思うことは一つだ。
「やることがないな」
「うん?」
「いや、なんでもない」
「そう?」
「ああ……そういえば、スキルを使ったら、硬直しないのか?」
「硬直?えっと、一瞬体が固まりそうになるやつのこと?」
「それだ!どうしてしないんだ?」
「え?スキル連続で使ってるからじゃない?」
「あー、なるほどな……」
って、俺が知らないバグだと!
思わず驚いてしまう。
武器を使ったスキルを使用した際には、強さによって硬直というものが存在する。
これは、魔法と同じで、魔法であれば使うときに詠唱が必要になるのだが、それと同じく不便さというべきか、どちらかに偏らないようにするための処置として必要だからと実装していた。
だけど、まさかのそれを無効してしまう技が存在していることに驚いた。
いや、試したことがなかったことで気づかなかったというべきか……
この世界にはクリエイティブによってたくさんの武器が存在するというのは、ほんの少し前の説明の通りなのだが、そこには双剣も存在する。
武器としては、剣を二つ装備したりすることによってできることにはなるのだが、その二つを使ってのスキルを作ることができる。
だが、今回は俺であれ剣でのスキルを両手で片方ずつ発動したということだ。
ここで勘違いしてほしくないのが、これはほぼあり得ないということだ。
どうしてなのか?
それは、スキルを習得するために必要なことというのは、まずその攻撃がスキルとして通用するものなのかとなるのだが、俺はこの剣を片手で振ってスキルになるような勢いで扱うなんてことはできないだろう。
では、亜紀はというとどうなのか?
うん、普通に片手ずつで全く同じ威力の攻撃ができるのだ。
ということは……
「亜紀……」
「何?」
「存在がチートだな」
「え?悪口?」
「ちげーよ」
俺はそう答えながらも、地形を破壊する勢いで進むのだった。
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