2-11ゲーム目 魔法の使い方
たくさんの魔石を拾った後、俺はアイアンクローをくらっていた。
「亜紀さん?」
「うん?」
「おかしいんですよね。俺のほうが身長が高いはずですよね?」
「それがどうかしたの?」
「いえ、そのね……」
足が浮いてるんですよ。
などと言いたいところではあったが、口からは出せなかった。
さすがは俺が知る限りでは、最強の力の持ち主だ。
とはいえ、そんなことを言ってしまえば、ここから俺の命が尽きることも予想できてしまうので、言うことはないのだが……
「その、悪かった。俺だって、ゴーレムがあんなにも遅く起動するものだとは思ってなかったんだって」
「えー?あんたが作ったのに?」
「いやー……あはは、いや、ごめん」
人を殺せるであろう視線を向けられた俺は、慌てて謝る。
「ま、今回は許すけど、いい加減。貸し一つ」
「わかってるよ」
「本当に、ちゃんと覚えとけよ?」
「はい」
「それじゃあ、許す」
亜紀に言われて、俺はアイアンクローから解放される。
助かった。
とはいえ、後からの悩みの種というものは増えたような気がするのだが、今は考えても仕方ないだろう。
俺は、回収した魔石たちを見てそう思うのだった。
回収した魔石は三十ほど。
これに岩を足すことで、土系統の魔法書を作っていく。
今回に限って言えば、いい素材がある。
ゴーレムを倒したときにドロップした素材。
硬い岩だ。
ゴーレムは、通常の岩を魔力を使って強化して硬くすることによって、自分の体の一部にしている。
そのため、倒したときにその岩がドロップするのだ。
素材として使えるようにするため、ゴーレムからドロップするこの硬い岩は、通常の岩に比べても軽い。
普通のプレーヤーであれば、これを使って装備を作るのだが、今回に限っていえば、試すということも含めて、魔法書に使ってみようと思う。
実際に、ゴーレム一体につき、頭と胴体を含めても硬い岩は六個ドロップするので、かなりの量が取れているからだった。
「やるか」
俺はいつもの要領で、魔法書を作っていく。
土魔法の素材となる岩と魔石。
その二つを混ぜることによってできるものに紙を混ぜる。
これによって出来上がったのは土魔法が使える魔法書だ。
「できた?」
「ああ……」
「それで、その魔法はどんなのなわけ?」
「ふ、聞いて驚け、土魔法だ」
「いや、それくらいはわかってるって。どんな魔法を使えるようになったのかを聞いてるんだけど……」
「そういうことか。魔法書には決まった魔法はないな」
「は?意味がわからないんだけど」
「まあ、魔法書の説明を受けていないもんな」
「え?魔法書に説明とかあったの?」
「まあな」
そこから俺は、亜紀にこの世界の魔法について説明をする。
ここで魔法を使うために必要なものは、魔法書であり、魔法書が強力であるほど使える魔法も強力になるというものだった。
魔法には、初級から特級の四つのランクがあり、魔法書によって使えるランクが決まっている。
俺がやったように、裏技を使わなければ、魔石が強ければ、強いほど強い魔法書が作れる。
となれば、中級以上の魔法を使えるようになるのは、今からということになる。
では、初期魔法とはなんなのか?
魔法には、攻撃、防御、支援の三つに分かれており、最初に使っていた水であれば、攻撃はウォーターボール、防御はウォーターシールド、支援はウォーターヒールとなる。
中級には中級の魔法があり、それを使うためには、相応の魔石を使った魔法書が必要になる。
「って感じだ」
「ふーん、で?今回は何を使うわけ?」
「土の中級魔法、グレイトウォールだ」
「何ができるわけ?」
「土の壁ができるようになる。初級よりも強度も大きさも、トロールを倒すくらいのことはできるようになるからな」
「そっか。で?」
「で、とは?」
「あるんじゃないの?問題点とか」
「いや、それはだな……あるな」
「やっぱりね」
さすがと言えばいいのか、亜紀はわかっている。
「問題点は、今回の魔法を使うには、近づかないといけないってところだな」
「え?それって」
「ああ、危ないな」
「そっか、頑張って」
「俺がやるのか?」
「当たり前でしょ?やり方をわかっているのは、遊夜なんだから、あんたがやるしかないじゃない」
「そう言われたら、やるしかないか……」
「だから、そう言ってるじゃん」
「ま、一度魔法がどんなものか確認はしておくか……
俺は魔法書を広げる。
唱える魔法はグレイトウォール。
「土の壁よ、行くぞ!グレイトウォール」
そう言葉にすると、広げた魔法書を地面に投げる。
地面に落ちた魔法書は、そこから魔法を発動する。
ゴゴゴゴゴと音が鳴るようにして、地面から土の壁が出てくる。
そのまま、壁は大きくなり、俺たちの身長よりも大きくて頑丈なものになった。
「どうだ?」
「どうだって言われても、ただの土の壁じゃないの?」
「まあ、確かにそうやって言われたらそうなんだがな」
亜紀に言われた通り、確かにこれは土の壁だ。
だけど、それだけじゃない。
俺はもう一つ作っていた魔法書を広げる。
「土の礫発射、ロックショット」
地面にあった土たちが岩に代わり、そのまま壁に向かって飛んでいく。
ガガガと音が鳴り、土の壁に当たった。
攻撃によって砂埃が巻き上がるが、それが収まったとき、土の壁が壊れているようなことにはなっていなかった。
「ふーん、本当に強度が高いってことなんだ」
「ああ、この魔法は使えると思うぞ。あとの問題は、強度が足りるかだな」
「試してみればいいんじゃないの?」
「いや、失敗したときのリスクを考えてみろよ。さすがにやれねえからな」
死んだときにどうするんだよ、本当に……
そうは思っても、やらないといけないということくらいはわかっている。
仕方ないよな。
そう思いながら、いくつかの魔法書を作るのだった。
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