2-8ゲーム目 ストーカーはいい仲間
酒場に戻ってきた俺たちは、再度ご飯を食べていた。
「で?戻ってくる間に、いいアイデア浮かんだ?」
「それだけどな。まだだな」
「ま、そうだよね。あたしも、思いつかないもん」
お互いに先ほどのトロールについてどうするのかを考えてはいたが、いい案は思いつかない。
とはいえ、トロールを倒さなければいけないことも確かなのでお互いに悩みどころだった。
弱点を攻撃するにしても、首元となれば、かなり位置は高いため、落ちたりすれば大ダメージをくらい、そのままトロールに踏まれたりすれば、それだけで死は免れないだろう。
防具さえなければよかったのにとは思うが、すでにゲームの世界が面倒なことになっていることを考えると、今後もこういうことが起こってくることは想像に難くない。
俺たちがそうして悩んでいるタイミングだった。
「ふふ、そんなときに私の出番ではないでしょうか?」
「うわああ……」
「そんなに驚かれてしまうと、私傷ついてしまいます」
そう答えた女性は、姫のような見た目をしている。
どこかで見た女性だ。
誰かとか言わなくてもわかる。
この女性というのは、少し前に俺たちに絡んできた人なのだから……
どういうことだろうか、あの時に逃げられたと思っていたというのに……
「えっと、どなたでしょうか?」
「あはあ。そういうことを言われるのは、予想はしていましたよ。していましたとも!私ですもの」
「う、うん……そうなんだ」
「はい。さすがは私。だとは思いませんか?」
「いや、そんなことを言われても、わからないかな……」
「ですか、ですか!なるほど、私はこう見えても、なんでもわかっているのです。いえ、予想出来ているのです!」
姫という見た目からは予想できたのか、どうかはわからないが、彼女は目を輝かせながらそう言葉にする。
姫のテンションがかなり高すぎて、引いてしまう。
こうなれば、やることは決まっている。
逃げ……
「おい、ちょっと……」
「逃がしませんよ?」
そう言って、姫は腕を掴んんでくる。
俺は声を裏返しながら、怒る。
「お、おかしいだろ」
「ダメでしょうか?私、泣いてしまいますよ」
「く、どうしてこう涙で訴えかけようとしてくるんだよ」
「これが、女の武器ですから!」
「おい、助けてくれ……」
俺は、掴まれてしまって動けない。
だからこそ、同じ女性である亜紀に助けを求めたのだが、亜紀は安定の顔をそむけるだけだ。
少し前のときに、俺が逃げたことを覚えているのか、完全に腕を握られてしまっていたため、どうしようもない。
こうなってしまったら、しょうがない。
「そもそも、どういう状況なんだ?」
「それはもちろん、お困りだと思いましたので、私が来ました」
「確かに困ってたいたけどな。どうして、それがわかるんだ?」
「こう見えても、私は情報屋さんですからね。お困りごとがあるであろう人たちの元へ駆けつけ、情報を届けるという役目ををもっています」
「そ、そうか」
「はい!」
「でも、どうして俺たちが困っていることがわかるんだ?」
「もちろん、それも情報で、わかることができます!」
「そ、そう……」
自信満々に言われてしまい、俺は戸惑う。
いや、でもここで考えるのはあれだ、本当に俺たちが困っていることをわかっているのかどうかということだろう。
「そもそも、俺たちが何に悩んでいるのか、わかる?」
「はい。それはもちろん。私はこう見えても、全ての情報に精通していますから」
「そうなのか?」
「はい。例えば、お二人が今回悩んでいることは、次のモンスタートロールについてですね」
「お、おう」
「確かにトロールは大きいですね。それに、防具を着けていることから、かなり手強いということも予想されます。ですが、あんなに重い防具を着けていることで、他のプレーヤーからは、重さで倒せないかと考えられています」
「重さか……」
「はい。どうでしょうか?いい情報ですか?」
「少しは……」
「おおー、では、まだまだ情報を伝えますよ。今回のトロールに対して有効になるのかは、私にはわかりませんが、多くの素材やアイテムも発見されています」
「へえ」
「詳しくは、こちらをご覧ください」
彼女はそう言葉にすると、小さな本のようなものを差し出してくる。
中を見ると、そこに書かれていたのは多くのものがどこにあるのかを書かれている。
俺が知っているものもあれば、いくつか追加されているであろうものも全て……
「これは」
「はい。全部調べました」
「そうなのか?」
「はい。こう見えて、私は昔から人のものを集めたり、調べたりするのが得意でして、このゲームの世界でもある人を追ってきたのですが、そんなときにあるスキルが使えることになりまして」
「そ、そうか」
「はい。そしたら面白そうな人が見えたので、調べたということです」
「なるほど」
言っていることの理解はできた。
彼女が言っていることというのは、ストーカーまがいのことをしながら、相手の情報を集めることができる。
そして、このゲームはクリエイティブオンライン。
ありとあらゆるものを作ることができる。
ということにしており、魔法、アイテム、武器、そしてスキル。
スキルは武器などを使うことによってできるようになる攻撃のものもあれば、違うものだってある。
今回彼女が作ったスキルというのは、隠密系のスキルであることに間違いはないだろう。
言動からも、完全にストーカー気質のヤバめの女性であることは確かなのだが、スキルが発現していることからも優秀であることは確かだ。
「えーっと……」
どう言葉にしていいか考えていると、ずっと黙っていた亜紀が言う。
「それで、あなたには、何ができるの?」
「はい。私は、先ほども言った通り、情報を取ってこれます」
「ふーん。いいんじゃないの?」
「いいのか?」
「まあ、悪い感じじゃなさそうだし、それに……」
「わかっています」
亜紀が視線を送ると、彼女はゆっくりと離れる。
亜紀はそれに満足したようにうなずく。
うん、何が行われているのか、全くわからないな。
とはいえ、ヤバくて優秀そうな人が仲間になるというのは、歓迎……
していいのかはわからないが、他のプレーヤーと初めて仲間を組むということを考えれば、最適な相手なのかもしれない。
「じゃあ、よろしく」
「はい。よろしくお願いいたします。ちなみに私の名前は、ヒメヒメちゃんです。よろしくお願いいたします」
「ゆーだ」
「あー」
「はい、よろしくお願いいたします」
こうして、新しい仲間ができたのだった。
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