2-6ゲーム目 次が決まりました
少しして、呼び名をちゃんと互いに定着できるイメージトレーニングを終えた俺たちは、プレーヤーたちがいる都市へと帰ってきていた。
今更ながらに、多くのプレーヤーたちがいるのがわかる。
よかったことに、あのとき絡まれた女性というのは、見当たらないようだった。
「それで?どんな人と話すわけ?」
「決まっているだろ?次のストーリーのことをわかっている相手にだ」
「そんなの、どこで見つけるわけ?」
「そこは、うまいことだな」
「うまいことって、曖昧なこと言ってるから、うまくいかないんじゃないの?」
「仕方ないだろ……うまくいかないことのほうが多いからな」
これまでのことを思い出す。
ストーリーの時点で、かなり嫌な思いをしてきたからだ。
これまでのストーリーを思い出すと、今後のことにもほとんど期待はできないのは確かだが、この世界から現実に戻るためには、必要なことだからだ。
「ということで、酒場だ」
「急なんだけど」
「仕方ないだろ?ゲームとか、そういうときには、よく酒場で情報収集をするっていうだろ?」
「それはそうかもだけど……」
「だろ?だから、ここに来たんだ」
そう言葉にした今、俺たちがいるのは酒場だった。
NPCたちが経営するこの場所には、多くのプレーヤーたちがいる。
食事に関しては、普通に作ることもできるが、面倒なのでやらないという人が多いだろう。
そんなこともあり、こうやって賑わっている。
「それで、ここで話しかけたりするわけ?」
「いや、そんな面倒なことはしないな」
「じゃあ、どうやって内容を聞いていくの?」
「ま、聞こえてくる内容を聞く感じだな」
「そんな適当な感じでうまくいくわけ?」
「行くはずなんだな、これが……」
そう、俺は確信していた。
ゲームではあるあるなのだ、自分が持っている情報というのを自慢したいという人たちというのは、一定数存在している。
我慢できれば、確かにいいのだろうが、全員そういうやつらではないというのは、わかっている。
ま、それにだ。
ガヤガヤとうるさいこの酒場で、わざわざ内容を盗み聞きしようなどというものはあまりいないはずだからだ。
何を言っているのかわからない場合もある。
「信憑性があるのかわからない内容でも、とりあえずは聞いておく必要があるからな」
「なんで?」
「そりゃな、同じ内容が多く聞こえていたら、信憑性も自然と高まるからな」
「確かに、言われてみればそうね」
「ほら、聞こえてくるだろ?」
俺はそう答える。
そんな俺たちの耳に聞こえてきた内容というのは、次の都市で行われるストーリーの内容だ。
一番最初はゴブリン。
二番目はオーガ。
今回の相手というのは、トロール。
確かに、オーガよりも大きくて、さらには強い。
圧倒的なパワーで破壊を行う存在だ。
そんなトロールがいるのは、大きな平原だ。
大きな体によって、その平原を牛耳っている存在だ。
「なるほどな。一応は、その土地の一番強いモンスターをストーリーのボスにしてるって感じになるのか」
「どういうこと?」
「いや、これまでのストーリーで戦っている相手が、最初はゴブリン。これは、巨大山にいるモンスターで、次がオーガ。これは、巨大遺跡にいるってことだな」
「なに、その変な名前」
「しょうがないだろ、わかりやすい名前にしたら、そうなったんだ」
そもそもの話。
ボス急のモンスターに限っていえば、大きさも通常より大きい。
ということは、そんなモンスターを配置しないといけない場所は決まっている。
元々の俺が作っていたときは、そんなボスモンスターのようなものでも、時間がたつことで再度リスポーン。
要するに現れるのだが、今回はストーリーが追加されたということから、倒したら二度とリスポーンすることはないだろう。
「次の目標は決まったな」
「ええ……」
「いや、嫌そうにするなよ。仕方ないだろ、やるしかないんだから」
「本当に、巻き込まれた身になってほしいんだけど」
「それに関しては、俺もなんだがな」
俺たちは、そんな会話をすると、酒場から出ていくのだった。
まあ、そこで覚えておくべきだったのだ。
先ほど自分たちがした会話。
そう、ここにいるプレーヤーたちの会話を盗み聞きする誰かがいるということを……
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