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だからこのゲームは間違っている  作者: 美海秋
このゲームのストーリーは間違っている
3/63

3ゲーム目 最強初期武器の作り方

カンカンと坑道に音が鳴り響く。

俺と亜紀は鉱石を掘っていた。


「って、何をやらせてんのよ!」

「いや、だから必要だって言ってるだろ?」

「その割には、鉱石を全く拾ってないじゃない」

「仕方ないだろ?魔法袋を買い忘れたんだから」

「魔法袋?」

「アイテムボックスみたいなもんだ」

「なるほどね。だったら、今すぐ買ってこればいいでしょ?」

「何を言ってる?今行ったら、このアイテムどうすんだよ」

「そもそも、買い忘れたのが悪いんでしょ!」


さっそくになるのか、俺たちは喧嘩を始めてしまいそうになったのだが、あることに気付く。


「あ、あああああああああああ!」

「今度は、何?」

「いや、これはレアアイテムじゃねえかよ」


俺はそう言葉にして、鉱石を見せる。

だが、亜紀はそれを見たところで他との違いがわからなかったのか、首をかしげている。


「ごめん。違いがわかんない」

「まじかよ」

「うん。さっきから石ころばっかじゃん」

「何をいってる。これはちゃんとした鉱石だからな。それも必要なやつ」

「はあ、だったらその必要な鉱石で何ができるのか、見せてもらっていい?」

「任せろ」


俺は、時計を操作する。

ここには、ほとんどのゲームに必要なものというのがそろっている。

例えば、クリエイティブをするために必要なものとかだ。

俺は一つを選択する。

出てきたものというのは、机だ。


「ねえ」

「なんだ?」

「これができるなら、ここにアイテムを収納できるようにしたらよかったんじゃないの?」

「言っていることは理解できる。でもな……この世界はクリエイティブが作ることが、一番重要な世界だからな。なんでも作ることで解決するんだ」

「何、その面倒くさいゲーム設定……」

「しょうがないだろ?俺がやりたかったゲームっていうものは、そういうもんだからな」

「えー……何、その面倒なゲーム」

「面倒なゲームって言うなや」

「じゃあ、縛りプレイ」

「縛りプレイじゃねえ、仕様だ仕様!」

「それを最初から強要されるから、縛りプレイって言ってんの!」

「縛りプレイだって、慣れれば最高のスパイスだ」

「く、このドエムが!」

「ドエムじゃねえ!というか、いい加減に作らせろ」


俺は変態のレッテルを張られながらも、机に鉱石を広げる。

まあ、普通に考えれば机に鉱石を広げたところで何ができるのかと疑問に思うだろう。

だが、ここはゲームの世界だ。

素材採取と組み合わせによって作れるものが決定するこの世界では、作る工程というものについては、そこまで重視していない。

というよりも、そこまでのことをしてしまえば、他の要素を犠牲にしてしまうことになるからだ。

詰め込みすぎるのは、よくないということだ。


鉱石、鉄のようなものと金のようなものを机に置く。

後はこいつを、金槌でたたく。

炉もなく、机の上で鉱石を叩く。

その行為は、見ているだけで頭のおかしいことだとは思うかもしれないが、仕方ない。

仕様なのだからだ。

カンカンという音が鳴り響いたと思ったところで、急にものが光だす。

光が収まったときに出来上がったものは、俺の予想の通り、訓練用ソードだった。


「よし、うまくいった」

「いや、そうはならないでしょ」

「うん?」


失敗する確率もあったが、無事できたことに達成感を味わっていたが、亜紀からそう言われる。

だけど、意味がわからなかった。


「こういうもんだろ、ゲームなんだし」

「いーや、ゲームだからってなんでも許されてもいいとは思わないんだけど」

「じゃあなんだよ、炉とかも用意して、金槌で叩けってことか?」

「そうは言わない。言わないけど。というよりも、そういう場所に行って作ればいいんじゃないの?」

「いや、そこまで行くのが面倒だろ?」

「そうなんだけど、急に適当じゃん」

「そこに関しては俺のせいじゃないからな」

「わかってる。わかってるんだけどさ……」


亜紀の言いたいことはわかる。

だけど、素材が光って何かに変化するくらいは許してほしい。

たまにゲームで、全く関係のないものを作っている映像が流れるなんてことも多くあるのだからだ。

よくあるのは、何か液体を混ぜていたと思ったら武器が完成したり、武器を作っているなと思ったら防具ができたりと、そうはならならいだろ……

などと思うことはゲームでたくさん起こる。

だが、よく考えてほしい。

ゲームだから許されるのだということを……

そもそも、本当に作る工程がしっかりとしたものになれば、作る工程だけでゲームが圧迫されて……


「ぐは……」

「遊夜?」

「なんだ?」

「無視してるでしょ?殴るわよ」

「殴ってから言うなよ」

「ごめん、ごめん」


本当に暴力に訴えかけるのはよくないと思う、本当に……

だが、何を言っていたのか一応聞こえてはいた。


「この剣が必要だった理由だろ?」

「うん。普通に弱そうなんだけど」

「ま、実際弱いからな」


訓練用ソード。

一番最初に作れる武器であるうちの一つ。

どんな武器でも作れるのだが、簡単に使えるのは剣だろうということもあって、今回は剣を作ったのだ。

そして、訓練用ソードは当たり前だが、最弱武器だ。

剣のステータスを見るところでも、攻撃力は3と書かれている。

今のままでは、本当に最弱であり、使えないのだが……

そこは開発を少しでも手伝っていた実績がある。

俺は訓練用ソードを近くに置くと、先ほどと同じように鉱石を並べる。


「何?同じものでも作るの?」

「ま、そういうことだ」


また金槌を振るう。

出来上がったものは、同じく訓練用ソードではなく鉄くずだ。


「失敗か……」

「いや、失敗かじゃないでしょ。集めた鉱石どうすんのよ」

「そういうときもある。次だ」

「いや、もうないからね」

「じゃあ、もう一回採掘するか」

「うん!っていうと思ったのか、遊夜!」

「おおおおおおおおお!頭を掴むのはやめてくれ」

「だったら、ちゃんと言うことがあるでしょうが!」

「わかった、わかった。必要な理由だろ」

「わかってるなら、さっさと言いなさいよ」

「おっけ、理由は二つを合成したら、強い武器ができるってことだ!」

「ふーん……」


俺はアイアンクロウから解放されるが、動くことはない。

言うのなら、見せてみろということなのだろう。

俺は採掘をなんとか頑張り、二十ほど作れる鉱石を掘り終える。

これで、多少の失敗でもなんとかなるだろう。

俺は金槌を振り、合計六本になるように訓練用ソードを作る。

ヘッドロックの効果なのか、頭が冴えたように感じ失敗することもなく作り終えた俺は、訓練用ソードの上に訓練用ソードを重ねる。


「これをどうするの?」

「叩く」

「ふーん」

「何か言わないのか?」

「ううん、どうせ合体して強くなるとかでしょ?」

「まあな」


亜紀の言っていることは正しい。

俺は武器を重ねると、金槌を振るう。

これによって出来上がったのは訓練用ソード+1だ。

攻撃力は5になっている。


「見ろ!いい武器だろ?」

「そう?」

「そうなんだよ。だってだな。この世界での攻撃力最強の武器は、およそ一万だからな」

「え?一万だったら弱くない?」

「確かにな。でも、この合成にはちゃんと意味があるんだよ」

「ふーん、どうせ終わりがないとかでしょ?」

「おお!さすがわかってるな」

「それくらいわかるって」


亜紀が見抜いた通り、合成で強化するというのには終わりがない。

強化が成功しなくてプラスに加算されないことはあっても、理論上はどこまででも積み上げることができるのだ。

だったら、さっさと最強の武器を作ればいいだろうと?

それを量産すれば簡単だろうと?

言いたいことはわかるが、そうは簡単ではないのだ。

このゲームは先ほどの通り、武器を作るときに失敗する確率がある。

そして、強い武器を作るときには、素材の量が多いことから一回作るだけもでかなりの時間が消費されてしまうのだ。

ということはだ、何本も最強武器を作るなんてことは、途方もない時間がかかってしまう。

じゃあ、俺たちのように最初の町で、最弱武器を作りまくり、それを合成すればいいかと言われれば確かにそうだ。

だが、この合成というものは強力であり、最初から知っていればそこで作り続けるものがでることになってしまうのだ。

バランス崩壊をしてしまうことから、気づいた人だけのものということにしていたのだが、このゲームにストーリーを追加したこともあり、途中でそれの紹介はある可能性はあるが、そもそもクリエイティブと言いながらも作ることが結構大変な世界で、何本も武器をわざわざ作るということは人間しないものだ。

面倒なことなので、余計に……

だから、仕様を知っている俺だからできる、いわばチート行為のようなものだ。


俺は六本あった訓練用ソードを組み合わせる。

これによって訓練用ソード+6になった。

攻撃力も13になり、ある程度の強さにはなった。

俺は満足気にそれを見ていたのだが、横にいた亜紀が悪魔の言葉を口にする。


「ねえ、遊夜」

「なんだ?」

「あたしも武器ほしいな?」

「はは、何を言ってるんだ?」

「ダメ?」

「ぐは……」


亜紀はいつもの男勝りな言葉、態度を改めて可愛くふるまう。

それだけでオタクな俺は一撃ノックアウトをくらう。

何故かって?

こいつの外見ステータスが、全て最強だからだ。


「ねえ、手伝うから」


もう一押しだと気づいたのだろう亜紀は、さらなる追撃をし、俺はうなづくしかなかったのだ。


読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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