23ゲーム目 無茶苦茶なストーリーに完敗
中のものを手に取ると、俺たちは今度こそ、レジェンドゴブリンに向かっていくのだった。
「本当に、それは使えるんでしょうね」
「使えるから、置いてあったんだろ?」
「そうなんだろうけど、意味がわからないものじゃん」
「そういうことを言うなよ。俺だって、よくわからないしな」
入っていたものを見れば、確かに亜紀の言っていることは理解できた。
宝箱の中に入っていたものというのは、こん棒のようなものだ。
これをどうやって使うのか?ということについては全くわからないが、急に現れたということを考えれば、何かで使えるということだろう。
「戻ってきたな」
「じゃあ、始めるの?」
「まあな。あれ意外は気になるものは何もなかったしな。あれが何に使われるかも含めて、確認は必要だからな」
俺たちは違和感がある場所を抜ける。
そして、そのタイミングでNPCたちが動きだす。
「倒す、あんたを倒す!」
「ギャアアアアア」
呪いの装備を身に着けた少女がそう言葉にする。
うーん、確かあの少女というのは、俺たちにレジェンドゴブリンを倒してくれと言っていたような気がする。
だが、今は自分で呪いの装備を着込み、戦おうとしている。
どういう状況なのか、今一つ理解はできていないが、それに同調するようにして、地下都市オワリにいたNPCたちが一斉にレジェンドゴブリンに向かっていく。
戦いはすでに始まっている。
俺たちは加勢するまでもなく見ている。
なんでって?
そもそも俺たちが対抗できるような装備をもっていないからだ。
だけど、予想通りというべきなのか、NPCたちの攻撃はそんなにダメージが入っているように感じない。
予想はしていたが、やはり俺たちも何かはしないといけないということだろう。
「亜紀!」
「何?」
「スキル使って攻撃してくれるか?」
「いいけど、ダメージはないんじゃない?」
「それはなんとなくわかる。どうなるのか見たいからな」
「わかった」
亜紀はそう言葉にして了解すると、武器による攻撃をしてくれる。
かぎ爪を使った攻撃は、かなりの威力があるように見えるが、レジェンドゴブリンには当たり前のように効いている感じはしない。
だが、NPCたちはそれを待っていたかのように歓声をあげる。
「やはり、勇者様たちの攻撃はすごい!」
「これで、倒せるはずだ」
かなりの盛り上がりだ。
まあ、盛り上がっているところ悪いが、絶対に倒せる感じはしないが……
ダメージが入っている感じは全くしないレジェンドゴブリンは、攻撃自体が不快だったのか、さらに叫び声をあげると、攻撃を仕掛けてくる。
「亜紀!」
「わかってる」
先ほどの攻撃によって、狙われているのは亜紀だ。
前もってなんとなくそうなるであろうと、お互いに予想はしていたので、対処は速い。
そんなタイミングで、呪いの装備を着けている少女の声が聞こえる。
「武器……武器があれば……」
俺はすぐにそれがなんなのか理解する。
だが、同時に思ってしまう。
こんなどうしようもないイベントバトルをやらせないでほしいと……
そもそも、初見殺しのようなものになるだろう。
俺は持ってきたこん棒のようなものを少女に渡す。
「こ、これは!」
「必要なものなんだろう?」
「はい、ありがとうございます」
「どうだ?」
「これで、これで、これでえええええええええ!」
「あー、なるほどな……」
呪いの装備を着けた少女はどういうわけか、こん棒を手にもつと巨大化した。
それも、レジェンドゴブリンと同じ大きさに……
「これは!」
「ギャアアアアア!」
「はああああああ!」
何を見せられているというのだろうか?
大きくなった呪いの装備の少女が、レジェンドゴブリンと戦う。
よくあるといえば、よくあるのかもしれないが、もう少し考えてほしい。
そもそも脈絡がないし、どうしてこういう流れになったのかも理解ができないという、全てにおいて突貫工事のように、ストーリーを継ぎ足したこれは、まさに見ているほうからすれば言葉を失うだけのものだった。
「あーあ……」
思わず口からそんな言葉が出てしまう。
それくらいには、もう何も言えなくなってしまうような状況であった。
そして、勢いそのままに少女はレジェンドゴブリンとこん棒同士をぶつけ合い、呪いの装備を着けていたおかげか打ち勝つと、勝利してしまったのだ。
「おおー……」
すごいとも言えなくなってしまった俺はなんと言葉にしていいのかわからない。
実際に同じように見ていた亜紀は完全に言葉を失っている。
そうして、レジェンドゴブリンは倒れ、無事終わったと俺たちは思っていたのだが、実際にはここからだった。
「あ、ああああああああああ!」
「なんだ!」
「呪いの装備の影響を受けているんだ!」
少女は頭を押さえている。
何が起こるというのだろうか?
「くそ、こうなったら勇者様たちがなんとかしてくれるのを待つしか!」
「はあ?はああああああああああ?」
どう考えても辻褄があうこともなく、よくわからない状況に、俺は思わず叫んでしまう。
何?
イベントで倒されたと思ったら、今度はそれを倒したやつを倒せだと?
わけがわからなすぎる。
どうやったら、そうなるのか?
だけど、他のNPCたちは動くことはせず、呪いの装備をつけた少女というのも、俺と亜紀のみを見ているように感じる。
狙われているのは、俺たちということで間違いないだろう。
「遊夜?」
「なんだ」
「終わったら、ちゃんと話し合いが必要だよね」
「毎回言ってるけど、俺のせいじゃないからな」
「でも、ほらね?」
「ああ、とりあえず言いたいことはわかった。倒せてからな」
「うん」
こうして俺たちは、強制的に始まるよくわからないストーリーに巻き込まれるしかないのだった。
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