22ゲーム目 もう面倒なことをやらすな!
ダメもとで俺たちはNPCに対して質問をした。
すると、店員は違う言葉をちゃんと返してきた。
「ああ、それならノアが買っていったよ」
「誰だよ、ノアって……」
「ああ、それならノアが買っていったよ」
「あー……誰かを知りたいって聞いてんだよ」
「ああ、それならノアが買って……」
最後まで言い切る前に、俺はその場を離れる。
毎度のことながら、定型文のみを話すNPCにはもう何も言いたくなくなる。
しかも、知っている前提のような話し方で、本当に誰だよと考えてしまう。
「亜紀は誰かわかったか?」
「そんなの、わかるはずないでしょ」
「だよな」
ここまで急にいろいろなことが起きているのだ。
NPCの名前なんか言われたところで、誰なのかなど、覚えていない。
だけど、確実に言えることは、呪の装備をもったNPCというのは、レジェンドゴブリンに向かって行ったはずだということだろう。
「また、行くしかないよな」
「そうね……」
「対策がわからないのに戦わないといけないとか、本当にクソみたいなことをしてくれるよな」
俺たちはまた、あの洞窟に向けて進んでいく。
「なあ……」
「何よ」
「今考えたらおかしくないか?」
「何が?」
「いや、ここにいたやつら、どこに行ったと思ってな……」
「え?確かに、いなくなってる」
亜紀は俺に言われて、その違和感に気づく。
この都市は少ないながらも、それなりに変わってはいるが、NPCというものが結構いたはずだ。
だというのに、今はあの店の店主以外にこの都市にいるはずのNPCたちがどこにもいない。
ここから考えられる意味というのは、都市にいるNPCが全員どこかに行ったということだ。
「嫌な予感しかしないんだけど」
「俺も同じ思いだ」
こうなってくると、何が起こっているのかというのは想像できる。
どう考えても、ここにいるNPCたちはレジェンドゴブリンに向かって行った。
それしかないだろう。
「勝手に物語が進んでいくって、ヤバいだろ……」
「オート機能でもあるんじゃないの?」
「そんなものは絶対にいらないからな」
俺はそう言葉にしながらも、解決するために動くしかないのだった。
二度目の洞窟の前。
中からすでに不穏な雰囲気よりも先に声が響いてくる。
「あいつらは、待てができないのか?」
「NPCだから、無理なんでしょ?」
「わかってはいるけどな、一言は言いたいだろ?」
「うん、それはわかるよ」
聞こえてくるのは、レジェンドゴブリンと思われる咆哮だ。
そもそも、どうしてここにいるNPCたちは向かっていったのかも、確認しておく必要がある。
「どうするの?」
「ゆっくり行くか」
「どうして?」
「状況を確認しておきたいからな」
本当に対抗できているのであれば、何でどのように対抗しているのかは確認しておきたい。
それに、この戦闘が物語の一環であるのであれば……
始まっていないということもあり得るからだ。
俺の勘があってるかのように、咆哮が聞こえてから戦う音というのが聞こえてこない。
まあ、静かに戦っているという可能性はなくもないが、地上にいたときに選択するところで全く動いていないところを見ていたので、あのときと同じように動いていないと考えるほうがいいだろう。
だから急ぐ理由というものがない。
俺の予想は当たっていたようだ。
遠くからでもわかる。
NPCもモンスターであるレジェンドゴブリンも動いていない。
「ねえ、これって……」
「あのときと一緒だよな」
「そうね」
どう選択するかによって、状況は変わる。
今がまさにそうだった。
近づくごとに体に違和感を感じ、ある一定のところで違和感は最大になる。
これ以上近づくと何かが動きだすような。
ということは、これ以上近づくと強制的に戦闘が始まるということなのだろう。
「どうする?」
「近づくと戦いになりそう?」
「ああ、このままいくと確実にな」
「こういうときって、何かあるんじゃないの?」
「何かってなんだ?」
「そりゃ、遊夜がそういうのって知ってるはずじゃないの?」
「そんな横暴な……」
だけど言いたいことはなんとなくわかる。
ゲームを作っている側からすれば、何かわかることがあるのではないのかということなのだろう。
こういう状況でやることといえば、戦闘に参加するか、もしくは何か特別なことができるかだ。
まずは変わったところを探す。
例えば、あの店からなくなっていた装備を着けているのが、俺たちのことを連れてきた少女だということだ。
あれを守るってことが重要なのか?
それとも、あれを戦わすために何かが必要だとかなのか?
「もしかして……」
「何か思いついたの?」
「ああ!ついてきてくれ」
俺は戦闘をやることもせずに回れ右をする。
なぜここから立ち去るのか?
それは、もしかしてと思い立ったことがあるからだ。
ここまで全てが酷いとなれば、考えられることがあった。
「ちょっと、そっちは何もなかったでしょ!」
「まあまあ……」
亜紀がそう言葉にする。
俺は亜紀の言葉を無視して、奥へと進む。
そこにあったのは、宝箱だった。
「はあ?これって」
「ああ、面倒な仕様だな」
俺はそう口にする。
来た場所というのは、最初には何もなかった洞窟だ。
ここには何もなかったはずだ。
だというのに、今来てみれば、宝箱が存在している。
ま、あれだ、トリガーが発動したということだ。
今回のトリガーというのは、地下都市のNPCたちが、レジェンドゴブリンに向かっていったことによるものだろう。
こういう面倒なことをやらせるのは、よくある物語を無駄に長引かせようとするやつらにみられる傾向だ。
俺であれば、何かわからない状態にしておいて、いったんは入手をできるようにし、それを決戦で何かわかるようにする。
そうすれば、これの意味があったのか!となるのだ。
いや、今はそんなことを考えても仕方ないか……
俺はその宝箱を開けるのだった。
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