21ゲーム目 意図を聞きたいってこと
もう一つの洞窟というのは、最初から少し違っていた。
先に入ったほうでは、閃光玉を作れたように光る苔という特殊な素材が存在していたが、今回に限っていえば、採れそうな素材というものが、見たところで、何もなかった。
「どういうコンセプトで作られた洞窟なんだろうな?」
「うーん、適当なんじゃない?」
「いや、うーん……」
興味なさそうに言ってきた亜紀の言葉をなんとか反論しようかと考えたが、その通りすぎて何も言えない。
ここまでのことを考えると、何もかもが思いつきの適当で作っているとしか思えないからだ。
「もう少し設定とかがちゃんとしてるならよかったがな……」
「途中までは、遊夜が作ったものなんだし、仕方ないじゃないの?」
「だな……」
だったら、最初から俺が作っていたものをそのまま使用していればいいんじゃないのか?
そんなふうにも考えたが、実際にそうならなかったということは、本来であれば、やりたいことがあったはずなのだろう。
今は、それが何なのかというのが全くわからないが……
「何か特別変わったものってないよな」
「あったら、報告ぐらいはするけど」
「だな……」
歩いて洞窟の奥へと進んで行こうとしてはいるのだが、本当に何もなかった。
ここまでくると、最初に入った狭い洞窟というのが当たりで、ここはハズレで何もないということもあり得るのではと考えてしまう。
ま、その当たりにいるのが、レジェンドゴブリンというのだから、作ったやつは馬鹿だとしか言いようがないが……
結局のところ、そのまま洞窟の奥まで歩いて行ったのだが、何もなかった。
「待ってくれ!」
「何?ここまで歩いてきて苦労しかかけないんだから、壊しても問題ないでしょ、こんな洞窟」
「かもしれないが、さすがに攻撃してぶっ壊すのはやばいからな!」
「仕方ないなあ……」
亜紀がそう言いながら、手を下ろすのを見て、俺は安堵する。
さすがに、ここ地下都市オワリを破壊されるのは困るからだ。
この地下都市が崩れてしまえば、逃げられる自信などない。
怒りたい気持ちもわからなくはないが、今は気持ちを抑えてもらうしかない。
「ねえ」
「なんだ」
「攻略できない敵とかじゃないでしょうね?」
「俺にそういうことを聞くな。そもそも、どのタイミングで必要なものなのかすらも知らないしな」
なんで、逃げられないストーリーになっているのかすらもわからない。
こういう寄り道クエストのようなものがあったところで、元の場所に戻ることは当たり前にできると思っていた。
そんな当たり前のことができないとなると、考えられる展開は一つだ。
「あれを使うしかないのか?」
「あれって何?」
「ほら、亜紀が見つけてただろ、お店でな」
「あー……もしかして呪いの?」
「だな。呪いの装備ってやつだ。あのときは怪しいものだったけどな、あれならなんとかなるんじゃないかと思ってな」
「そんなうまくいく?」
「どうなんだろうな……いいなって程度だ」
正直なところ、そんなにうまくいくとは思っていないが、ここまでいろいろなところが酷いのだ。
呪いの装備が最強の装備なんてことくらいは当たり前にしそうだ。
そんなことを考える。
俺たちはさっそく、もう隠されていないお店に入っていく。
「どこにあったか、覚えてるか?」
「えっと……あれ?ないんだけど」
「まじか?」
「うん、ほら、ここに動かしたあとがあるじゃん」
「確かにな」
言われて気づく。
そこには確かに、呪いの装備があった痕跡があった。
だが、実際はそこには何もなくなっている。
床が黒くなっているので、そこに何かしらがあったということくらいはわかるのだが、実際にものがないということには驚きだった。
「どうなってんだ?」
「わからないんだけど。聞いたりできないの?」
「どうだろうな……」
これまでの状況から考えてもNPCはテンプレな言葉しか口にしないことが多く、もしプレイヤーがどこからか入ってきていて買っていたのであれば、どこに行ったのか、誰が買ったのか……
そんなことを聞いたところで、いつものテンプレの答えが返ってくるだけだということはわかっていた。
だけど、だけどだ……
何か重要なことを話してくれる可能性だってある。
さすがに特別なものがなくなればね。
俺は深呼吸を何度かすると、話しかける。
結果としては、俺は……
俺たちは必死に走っていた。
「ねえ!」
「なんだ?」
「もう、嫌なんだけど!」
「俺もだ!」
どうしてこんなに面倒なことばかりが起こるのか……
そして、この物語を作ったやつは誰なのか?
考えるだけで、イラっとするのをなんとか耐えながらも、俺たちはやらなければいけないことをするために、レジェンドゴブリンに向かうのだった。
呪いの装備を着けたNPCに加勢するために……
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