17ゲーム目 お店を探せ
「じゃあ、そういうことでいいか?」
「いいんじゃない」
防具の強化を終えた俺たちは、次へと向けて準備していた。
次というのは、レジェンドゴブリンについてだ。
ここ地下都市オワリにいるということはわかっている。
この場所については、俺も知らない後から追加された場所だということはわかっているのだが、そうなると考えられるのはこの場所は狭いということだ。
地下都市オワリの近くにあるのは、俺たちが行った鉱石がとれる場所、後は洞窟が二つだ。
もしかしなくてもいると考えられるのは、その洞窟の二つのうちどちらかになるだろう。
その中にいるであろうレジェンドゴブリンにまずは会ってみようと考えていた。
「準備はしておかないとな」
「それで、準備って?」
「今度はちゃんとした買い物だ」
ここ地下都市オワリでは、地上とは違う種族?見た目をした人たちしかいないことも考えると、そういう存在だけがいる場所にもなるのだろう。
だから、鉱石も含めて買い物も、これまでにないものがたくさんあることはなんとなくわかる。
そうなれば、売れるものを考えておく。
「何が売れると思うの?」
「決まってるだろ、地上のものだ」
「地上のもの?」
「そうだ。あのゴブリンのような見た目をした少女は地上のよくわからない町で捕まっていたのは覚えてるだろ?」
「そりゃね」
「だったら、ここにいるのが、そういうものの集まりってことだろ?」
「あー、つまり遊夜みたいな存在ってこと?」
「違うからな、俺は決して爪弾きものの存在じゃないからな」
完全に流れ弾をくらった俺だったが、亜紀には言いたいことが伝わったらしい。
そう、地上で少女が捕まっていたことからわかる通り、地下都市の住人というのは地上に憧れていると考えてもいいだろう。
だからこそ、捕まるリスクがあるのにかかわらずに地上の世界に行ったと考える。
だが、そこで考えられることが一つある。
それは、どうしてレジェンドゴブリンを倒せに繋がるのかだ。
ま、無理やり追加したストーリーだということを考えれば、意味がないのかもしれないが、意味があるのだとすれば、レジェンドゴブリンを見ることで何かがわかるだろう。
だからこそ、今から俺たちがやることというのが、レジェンドゴブリンを見に行くというものだ。
そのために準備を行うためにと、買い物ができる場所を探す。
「ここか?」
「看板なんか、何もないけど」
「一応あったような形跡はあるぞ」
「そうなんだけど、大丈夫なの?」
「わからないな。入ってみないことにはな」
そして、探して見つかったのは一つのぼろい見た目の建物だ。
この地下都市では唯一の看板があるのがわかる建物だ。
となると、ここがお店だった可能性は高い。
俺は迷うこともなく扉を開ける。
中に入ると、そこには綺麗に並んだアイテムがあってということもなく、何もない。
店なのか?と思ってしまうが、もともと店だった名残であるカウンターがあることによって、何かあるのではと思ってしまう。
そんな俺の後ろから、亜紀が店内を覗きながら言う。
「ねえ、何もないんだけど」
「だな。間違ったか?」
「じゃあ、急に入ったの間違ったんじゃ……」
「いや、わかんないだろ?」
俺は何もない元店の奥へと入っていくとカウンターの前に立つ。
どうなるのかはわからないが、ここがお店じゃなくても、何か情報を得られるのではと考えているからだ。
「誰かいるか?」
元店の中に聞こえるように言葉にするが、反応は返ってこない。
聞こえてないとかか?
「誰かいるか!」
「ちょ、ちょっと」
先ほどよりも大きな声だったこともあり、亜紀が焦ったように俺に声をかける。
だが、そんな俺たちの言い争いが始まる前に、奥から人がやってくる。
「なんだ、お前ら?」
やってきたのは、男だ。
それも、見た目だけで他のゲームではよくある獣人。
猫の顔をした男は、不機嫌そうに言ってくる。
おお、やっぱり全員が、違うタイプなんだな。
思わずそんなことに感心しながらも、男に言う。
「ここでアイテムとか買えるのか?」
「アイテム?」
「ああ、ここにしかないものが買えるのかってことだ」
「ここでしかないもの?」
「そうだ。ここは店だったんじゃないのか?」
「店?わからないな」
「違うのか?」
「店?わからないな」
「またかよ……」
いつものように固定文しか話さなくなる。
結局ここはお店ではなかったということだろうか?
「どう思う?」
「どうって、いつものことじゃないの?」
「だよな……」
これはいつものことだ。
定型文ばかりというのは本当にやっててイラっとするところだ。
「結局買えないってことか……」
「売ってないからね」
「だな……」
俺たちは結局のところ、何も買うこともなく店を後にしようかと考えていた。
だが、あることに気付く。
というのも、床が明らかに綺麗なところと汚いところがあるからだ。
「なあ、これってどう思う?」
「これ?」
「ああ、ここの床だ」
「うーん……もしかして隠し部屋があるって意味?」
「そうだ」
これだけ何もない場所だというのに、一部の床だけが綺麗だというのは違和感がある。
だとすれば、あるはずだ。
俺はそこの床を踏む。
ギシギシと音がなる。
他の床も同じようにして踏むが、音がなることはない。
ここから考えられることは、床の下に空洞があるということだ。
楽しみだ。
俺はそう考えながら、床調べるべく手を掛けようとしたところで、横からバキッと音が聞こえる。
「あ……」
「あ?」
亜紀の声が聞こえたときには、床の感覚がなくなる。
「うわああああ」
「ごめえええん」
二人の言葉が狭い場所に響くのだった。
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