16ゲーム目 鉱石と強化
「いいぞ、いいぞ!」
カンカンと音を鳴らし、俺たちは鉱石を掘っていた。
ほんの少し前に同じようなことをやったからか、効率はあの頃よりも少し上がっている。
す、素晴らしい!
「ふが……」
と思っていたのだが、飛んできたツルハシによって、俺は少しのけぞった。
「ごめんごめん、手が滑って」
「手が滑って?その割には、俺の方に直撃する勢いがあったけどね」
「え?そうなの?気のせいだと思うけど」
亜紀はそう言って口では笑っているが、目は笑っていないという、一番危ない光景だ。
最初の町の近くでは採れなかった鉱石が出て、いい気分になっていたのだが、これ以上刺激するのはよくないだろう。
「こ、鉱石を掘るのはこれくらいにしておくか」
収納袋にものを収めながら俺は次のために製作を開始する。
作業台を出し、アイテムを並べていく。
「なあ、見ていて楽しいか?」
「じゃあ、逆に聞くけど。これ以外に何かあたしがやることあるの?」
「そりゃ、製作とかか?」
「あたしにものづくりをしろと?」
「いやー、できるかなと……」
俺は苦笑いをしながらも亜紀であれば、全てを破壊するだろうと考えてしまう。
これまでの通り、私生活もほんの少し知っている身からすれば、亜紀という存在は最強という二文字で語ることができる。
鍛えているというよりも、実践的で最強というべき動きができるのだ。
いくつかの伝説を聞いたことがあるが、例えば生身で熊と戦った、車とぶつかったのに、車を吹き飛ばしたなどなどだ。
見た目は確かに華奢ではあるが、体幹はかなりあって、俺たちのようなそれなりに体が大きいだけのもやしでは、簡単に弾き飛ばされてしまう。
だからなのか、亜紀は細かいことに対して、力を強くしすぎてしまうことがある。
このクリエイティブオンラインの製作では、一応それなりに技術を求められることもあり、雑にやってしまうことがあり得そうな亜紀では、うまくいかない可能性が高いのだ。
特に混ぜる工程で、勢いよく混ぜすぎてという場面をすでに見ているので、余計にそう思ってしまう。
「うん、まあ……今回は俺のものを見ておいてくれ」
「はいはい。何を作るの?」
「ああ、今回は防具だな」
「防具?」
「そうそう、武器はそれなりにいいものを持っているだろ?」
「うん」
「だから、次は防御力を少しは上げないとな」
「理屈はわかるけど……」
亜紀はそう言葉にして口ごもる。
なんとなく言いたいことはわかる。
ここに広げているのは鉱石だ。
ということは、必然的に防具となれば、金属系の防具を製作することになる。
金属系の防具といえば、一番最初に思いつくのは、重いことだろう。
あとは、防御力があるなど……
まあ、一番はこの二つだと思う。
俺も金属を使う、一番最初に思いつく防具はと言われれば、甲冑のようなものと答える自信はあるが、今回作るものはそうじゃない。
そもそも、このクリエイティブオンラインは収納袋に直していなければ、身に着けているもの含めて重さというものが存在する。
とはいえ、ゲームなので現実世界よりも軽く設定はされているが……
そんな中でも防御力が高いであろう甲冑を装備すれば、確かに守りではよくなるが、重さによって動きは鈍くなる。
鈍くなるということは必然的に攻撃が避けにくくなってしまうのだ。
だから、俺が今回作るのはプレートのようなものだということを亜紀に説明した。
「プレート?」
「ああ、聞かないか?殴られるときはお腹に雑誌を着込んでおけと……」
そう、よくある言葉だ。
ヤンキーが出てくる漫画などで、攻撃をする場所が前もってわかっているとき、攻撃されるであろう場所に厚めのものを仕込んでおけば防げるというものだ。
だが、そんな俺の考えとは違い亜紀は言う。
「え?お腹に力を込めたら痛くないと思うけど」
「あ、うん……そうですね……」
く……
どうしてこう非常識なことを平気で言うんだこいつは!
そもそも殴られたら普通は痛いだろ?
攻撃されて、「え?何か当たった?」なんてことを言っちゃうのは、それはもうどっちがモンスターなのかわからないんだよ。
俺は思わずそうツッコミたくなるのをこらえて、アイテムを組み合わせる。
今回組み合わせるのは、鉱石と鉱石だ。
シンプルに金属のプレートを作るときに、余計なものは必要ない。
二つを合わせたものを火にかけていく。
普通であれば、釜のようなものに溶かすのだが、ここはゲームだ。
お椀のようなものに入れ、アルコールランプのようなもので温めていく。
鉱石は気づけば溶け合って、一つの鉱石のようになる。
あとはこれを薄く広げることによって金属のプレートはできあがる。
「よし、成功だな」
同じ要領でプレートを量産していく。
今回の工程は、溶かして広げるだけなので、失敗もなく終わる。
後は、これを使って……
俺は自分の上着を脱ぐ。
「うわああああ!」
「どうした?」
「な、なんで急に脱ぐのよ。露出狂なの?」
「ちげーよ。というか、そんな意識する中でもないだろ?見たことくらいあるだろうし」
「そりゃ、いつもは心の準備をして……」
「何か言ったか?」
「言ってない。露出狂の変態がどうするのかと思って!」
「ああ、そうかよ。あと、俺は露出狂じゃねえからな」
俺は持っていた初期装備の服と金属のプレートを重ね合わせていく。
後は金槌をふるっていく。
それにより重なりあった二つは、一つの防具へとなる。
それがそう……
初期装備の服、急所に金属加工だ。
名前がださいって?
気にすることはない。
最初の装備に比べても、かなりの防御力アップが期待できるし、さらにいえば動きやすさについても、最初の防具と同じくらいにできるからだ。
あとは……
「亜紀」
「何?」
「じゃあ、脱いでくれるか?」
「はあああああああ!」
「ぐはあ……」
「あんたね、どうしてこう言葉足らずなのよ!」
「す、すまない」
防具を強化するから脱いでくれ。
ということを俺はストレートに言っただけなのだが、ストレートに言い過ぎたようだ。
だが、さすがはというべきか、言いたいことを理解してくれた亜紀は服を渡してくれる。
俺はさすがに見ないようにしながらも、それを受け取ると強化するのだった。
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