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だからこのゲームは間違っている  作者: 美海秋
このゲームのストーリーは間違っている

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14/63

14ゲーム目 知らない場所へ

動きが止まっているというのは、こういうことを言うのだろう。

俺はそんなことを思いながら、NPCたちを見る。

あのセリフの後、あまり声が聞こえないなと思っていたら、どういうわけか動きが止まっている。


「これは、どういう状況?」

「選択をしろってことじゃないのか?」

「あー……」


亜紀も俺の言葉で何かを察したのか、頷く。

どうせ、ストーリーを作るのであれば、こういうところもちゃんとしてほしいのだが、考えても仕方ないだろう。

聞こえてきた内容と、俺たちのことを見ていることを考えると、ここで迫られている選択というのは、少女……

名前を何か言っていた気がするが、忘れた存在の手をとって町の人たちに差し出すのか、逃げるのかだ。


面倒だからという理由で、差し出すというのは一つの手ではあるが、問題はそこではなく、その後にある。

差し出したところで、素直にこの場所から帰ることができるのかどうかだ。

もしかしなくても、こういうイベントの面倒なところはうまく対処しなかったら、余計に面倒になるということだ。

勝手にリセットがかかるのであれば、問題がないのだが……


「どう思う?」

「遊夜はどう思うの?」

「俺は、面倒だがやるしかないかと……」

「じゃ、やったらいいじゃない?どうせ、やるならとことんね」

「ふ、そうだな!」


俺は少女の手を取る。

そして、ここにいるものたちは動きだす。


「お前たちは、厄災の手を取るのか!」

「手を取るって言われてもな、これをするしかな」

「何をバカなことを!」

「あの……」

「亜紀!」

「あたしにばっかり面倒を押し付けないでくれる?」

「でも、お前のほうが攻撃力が高いからな!」

「永遠の貸しだから!」


亜紀はそんな言葉とともに、スキルを使う。

クローガウジ。

地面をえぐるようにした攻撃によって、俺たちと町の住人の間に距離ができる。

わかってはいたが、かなりの威力だ。

俺ですらビビるような攻撃のそれは、NPCたちも同じようにビビっている。

あんなものをくらえば、普通に一撃死だろうからな……


「行くぞ!」

「わかってる」


俺は面倒になって少女を小脇に抱えると、その場から去っていく。

よかったこととして、このイベントが止まっていたことによって、町から出る場所というのがわかったことだ。

とりあえず、壁がなければ一直線に向かえば出られるだろう。

だが、そんなときに少女が言う。


「ダメ……向かうなら、こっちじゃなくてあっちに!」

「文句を言うな」

「ダメ……向かうなら、こっちじゃなくてあっちに!」

「……」

「ダメ……向かうなら、こっちじゃなくてあっちに!」

「なあ、亜紀……」

「何?」

「捨てていいか?」

「捨てたら、ストーリーが進まないんじゃないの?」

「そうなんだけどな」


なんでこう融通が利かないストーリーというのは、面倒だと思ってしまうのか……

最近のトレンドから外れるだけで、ここまでストーリーが億劫になってしまうとは思っていなかった。

だが、亜紀の言う通り、ここまでのことをしたのだから、少女を捨ててしまうというのもよくないことくらいわかっている。

何度も同じ言葉を繰り返す少女に、思わず「ボットかよ」と呟きながらも、しょうがなく進路を変える。


「急いでください」

「なあ、亜紀」

「言いたいことはわかるけど、言わないの」

「へいへい」


さすがにこんなに面倒なことを繰り返されると、再度捨ててもいいかと聞きたくなるのをなんとかこらえる。

たまにイラっとくる物語やゲームがあるが、ここまで物語を進めるために自由がなくなるゲームというのはやっていてかなりイラっとする。

くそ、終わって時間があれば、絶対にモンスターの前に差し出してやる。

だが、今はこれをこなすことが先決だ。


何度も急げと繰り返す少女を連れて、俺たちは再度地下牢にやってきた。

ここに何があるというのだろうか?


「こっちに」


少女が言う通りに俺たちは捕まっていたところよりもさらに奥へと進んでいく。

とはいえ、あるのは土の壁。

ここに何かあるというのだろうか?


「おろしてください」


言われるがまま、俺は少女をおろす。

壁に何かがあるというのだろうか?

少女は、手を前にかざす。

するとどういう理屈なのかはわからないが、土の壁は動き出す。

うーん、隠し部屋とかになるのだろうか?

そして、通路が出来上がる。


「言っていいか?」

「何?」

「何か新しい要素が追加されてるよな」

「だから、あたしに言うな!」

「そうなんだけど、そうなんだけどな……」


俺は頭を抱えるのをなんとか我慢しながら、偉そうに行くぞと言葉にする少女を小脇に抱えると通路を進んでいく。

そこで見たのは、そう、見たこともない都市だった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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