13ゲーム目 強制イベントに巻き込まれる
「ふが、ふがががふが」
起きたと同時に大声を出そうとすることは予想済みだったので、口に布をかませているというよりも、最初から噛まされていた。
「起きたみたいだぞ」
「みたいね」
亜紀はそれだけを言って、俺に視線を向ける。
なんとかしろということだろう。
ま、連れてきたら何か起こるかもと言ったのは俺なので、しょうがないか。
俺は、起きた少女に話しかける。
「なあ、言葉は通じるのか?」
少女はコクコクと頷く。
どうやら、見た目の通り、言葉が通じるようだ。
何を聞くべきか迷っていたが、そんなときだった。
俺たちがいる場所がとうとう見つかる。
「おい、いたぞ!」
「何!」
「おい、呪われたやつも一緒だ」
「まじかよ、あれを連れ出したのか!」
町のものたちがそんなことを口にする。
試してみる価値はあるか……
「だったら、どうなんだ?」
「厄災が、厄災が始まる!」
「早く封印を封印を!」
案の定言葉が通じているのか、怪しい言動をしている。
ということは、これもメインストーリーに近いものなのかもしれない。
そもそも、このクリエイティブオンラインに物語がつく可能性があるというのは聞いてはいた。
だけど、物語がつくということは自由度がなくなると考えていた。
特に嫌だなと思っていたが、NPCの言動がどうなるのかだ。
これまで発売されていたダイブゲームの多くはこのゲームと同じようにNPCは決められたことを話すだけの存在だった。
だけど、ここ一年でのトレンドはついにというべきか、AIが進化し、ある程度の会話を行うことができるというものだ。
だが、このゲームのNPCたちは少ないのにも関わらず、少ないにも関わらずだ……
ちゃんと会話が返ってこないという、かなり残念な仕様になっている。
こういう話が通じないという展開は正直なところ、面倒だし、今となってはゲームの没入感含めてよくないのだが、自分で考えてやるゲームに無理やりストーリーを入れればこんなことになるとは、かなりショックだ。
「じゃ、何をするのが正解なんだ?」
「決まっている、そいつを返せ!」
「だそうだが、どうだ?」
「ノアは、ノアは絶対に嫌だ!」
そう言葉を返す。
というか、いつの間に口に着けていた布を外したんだろうか?
こういうところも強制的なイベントとして、余分なものというのは勝手にとれるようにした結果か……
「なあ亜紀」
「何?」
「今起きてるイベントを全部無視して、逃げてもいいと思うか?」
「いいんじゃない?」
「だよな。よくわからないしな」
俺たちは言い争っている間にさっさと次に向かうために、進みだす。
NPC同士が言い争っている間は、そのイベントが進むので、ここで別に何かをしようとしても問題はないはずだ。
ログアウトできないゲームになった以上、さっさとメインストーリーを終わらせたほうがいいしな。
だが、それを許さない存在。
それもNPCだった。
「待って、待ってほしい!」
そんな言葉が聞こえる。
だが、面倒ごとに巻き込まれたくない以上は、無視しかありえない。
それにだ……
普通とは違うこういうものは、やたらとストーリーが長かったりすることが多いからだ。
メインストーリーにもっと力を入れろよと何度思ったことかわからない。
面倒だとわかった俺たちはさっさとその場を離れた。
「どうだ、逃げられるか!」
「きゃーーー」
離れたところで、ストーリーが勝手に進んでいっているのが聞こえてくる。
やってるなという印象しか感じないながらも、これから考えることは、次についてだ。
この町から出た後に、やるべきことといえば、次のメインストーリーに向けて新しい都市へと向かうことだ。
「じゃ、行くか」
「うん」
そうして、面倒なストーリーはスルーをし、次へと向かえ……
「おふ……」
町を出ようとした俺は見えない壁にぶつかるのだった。
「なんだと?」
俺は慌ててそれを触る。
透明でわからないが、そこにはしっかりと壁があった。
「なあ……」
「言わなくてもわかるんだけど」
「そうだよな、はあ……」
俺はため息をつきながらも、この状況を把握する。
これは強制的なストーリーイベントということなのだろう。
どうしてとか、なんでとか、言いたいことはたくさんあるが、結局のところ……
「やらないといけないってことかよ」
俺は再度ため息をつきながらも、亜紀と二人であの場所へと戻るのだった。
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