12ゲーム目 知らない存在がいます
万能鍵を使うことで、牢から脱出した俺たちは、先に装備の回収に向かっていた。
何をするにしても、武器は必要になるだろうと考えたからだ。
結果から言うと、その考えはあっているとも間違っているともいえた。
何故か?
それはすぐに俺たちが逃げたことがバレたからだ。
「あっちを探せ!」
そんな声が、どこかから聞こえる。
「武器は回収したけど、後はどうするかだな」
「考えてなかったの?」
「仕方ないだろ、そもそも捕まることも含めて想定外だったんだからな」
「あっそ」
安定の酷い言われようではあったが、どうやってもここから逃げ出さないといけないことは決まっている。
ゴブリンたちに見張られていたせいか、それとも別のせいなのかはわからないが、この町は大きな木を周りに杭のように立てているせいで、出るためには四つある門のようなところから出るしかない。
だが、その四つはというと、見張られている。
「武器に関してはさっさと回収できたのは、よかったな」
「見回りが、武器と牢屋みたいだったからね」
「だな」
亜紀の言う通り、俺たちは地下牢からさっさと抜け出したのだが、どうやら見張りというものが存在していたらしく、そいつらというのは、俺たちの武器と牢屋を見張るものだった。
何も知らなかった俺たちはというと、タイミングよく武器を回収できた。
ところまではよかったのだが、そこからが全てうまくいっていない。
すでに牢屋から脱出していたため、逃げたということで大声で町のものたち総出で、俺たちのことを探し始めたからだ。
「ここで隠れていても、どうしようもないよな」
「わかってるなら、どうするの?」
「ちょっと考えてるから、待ってくれ」
俺は頭を悩ませる。
どうすれば切り抜けられる?
相手はNPCだ。
倒してしまうというのも手ではあるが、ゴブリンたちからの奥の手を持っている可能性だってある。
メインストーリーなるものを追加されたせいで、よくわからない展開になっている。
悩んだところで答えがでない、そう思ったときに亜紀に言われる。
「ねえ、洞窟に入ったときのようなバグを使えないの?」
「あれは……使えない」
「どうして?」
「う、運営にバレたみたいだからな」
「バレた?どういうこと?」
「ほら……」
俺はそこから説明する。
ゴブリンがいた洞窟に入るときに作った通り抜けバグは確かに便利なものだ。
その場でぐるぐると回ることによってバグを引き起こし、それによって位置情報がずれ、壁などといったものもすり抜けることが可能になるというものなのだが、今はできない。
理由は修正だ。
デスゲームになったのだから、ゲーム内容に修正が加えられるなんてことはあり得ないと考えていたというのにだ。
まあ、考えられるのは、やっていることが完全にゲームを根本から終わらせてしまう勢いのあるバグだからだろう。
「そんなことがあり得るの?」
「あり得る。じゃないと、俺があのタイミングで壁に埋まるなんてことがないからな」
「そうなの?」
「ああ、途中までは作っていたんだぞ?そのときにな、しっかりとどんなバグがあるのかは確認してたからな。その一つがこの壁抜けのようなバグだ。だから、そのバグがどうやったら解除されるかも一応把握済みだ」
じゃないと、一生壁抜けをしてしまうからだ。
とはいえ、壁抜けのバグを解除するには、ただ一度壁から抜ければいいだけだ。
どういう意味なのかわからないとは少し思うが、壁抜けのバグはその場でぐるぐると回ることによって、自分自身の位置情報をずらすことでバグを起こす。
そして、通常の場所へと戻ることで位置情報が戻りバグから解除されるという構造だ。
「壁抜けのバグが使えないと、いい手がないな」
「この杭を破壊しちゃダメなの?」
「破壊したらって、どうして亜紀はすぐにそっちに思考がなるんだ?」
「だって、面倒くさいじゃん」
「面倒なのはわかる。でもな、ここで破壊すると、今隠れている意味がないだろ?」
「そうなんだけど……」
どうしてこう亜紀は脳筋な考えばかりになるのだろうか……
だが、実際のところこうなってしまえば、破壊するのが早い。
でも、そうしてしまうと、今隠れている意味もない。
そして、一番の問題はそこではないというのもある。
「遊夜」
「なんだ?」
「それを置いてきたら、よかっただけじゃないの?」
「確かに言われたら、そうなんだけどな。俺が作ったときとは変わったところは、自分でかかわっておきたいというのが、ゲーマーであり、製作者である本望なんだよな……」
思わずそう言葉にする視界の先にいたのは、気絶している少女だ。
見た目は、普通の人間の少女。
だが、肌の色というのが普通とは違い、緑色だった。
どう考えても、ゴブリンとこの世界の人とのハーフということだろう。
そもそも、この世界のゴブリンがどういう存在なのかはわからないが、物語に影響を与えることはわかっている。
どうするべきか、悩んでいたときだった。
その少女が目を覚ましたのは……
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