11ゲーム目 変えたせいで
「はっくしょん」
「え?」
「引くなよ」
「だって、くしゃみって、ゲーム内でする人初めて見た」
「初めて見たからどうなんだよ。いいじゃないか、くしゃみくらい」
まさかのくしゃみくらいで文句を言われるとは思ってもいなかった俺は言い返す。
だが、亜紀はため息をつくと言うのだ。
「だから火を起こそうって言ったのに!」
「それについては、俺も何も言えないな」
「何も言えないとかじゃないから」
というのも、俺たちがいる場所というのに問題があった。
少し薄暗く、じめっとした場所。
そう、地下牢に捕らえられていた。
どうしてこうなったのか?
経緯としては簡単なものだった。
俺たちは滝を破壊した。
それに流されないようにして逃げたものの、洞窟の崩壊とは違い、水はすぐに襲ってきた。
なんとか逃げようとしたものの、流された俺たちは流された場所の近くで小さな町を見つけた。
この町というのが、別にストーリーとは関係のないものであり、何かがあるわけではないと思っていた。
実際に俺が作ったときにはそうだった。
だから亜紀の意見である、一度服を乾かせてから町に入ろうという意見を無視し、俺はさっさと亜紀を引き連れて町に入ったのだが、そこで起こったことというのは、武器を突き付けられるという行為だった。
おかしいぞ?
そんなふうに思ったものの多勢に無勢。
どうやっても勝て……
いや、これ以上の破壊をするというのもいけないと思った俺たちは、捕まった。
そして、今いる地下牢に閉じ込められてしまったということだ。
当たり前にはなるが、最初の町でそれなりに時間をかけて作った武器も奪いとられ、服も水に濡れた影響でびちょびちょだ。
亜紀に怒られた通り、焚火をして服を乾かせてから町に向かえばよかったと、ほんの少し後悔はしているものの、予想外のことが起こったのだから仕方なかった。
「仕方ないだろ、俺だってこんなイベント知らないからな」
「知らないで済むのなら、あたしだっていちいち言わないんだけど」
「く……そういう痛いところをついてくるなよ」
「じゃあ、次からはもう少し考えてから行動してよね」
「く……亜紀にそう言われるとはな……」
元々をたどれば、亜紀が洞窟を破壊したことによってこうなっているとは思うのだが、そんなことを言ってしまえば、どんな仕打ちが待っているのかわからない。
だからこそ、あまり下手なことは言えないでいた。
まずはこの地下牢から出ることが最優先だった。
よかったことといえば、拘束が縛るのではなく手枷のようなものをつけられたことだろう。
縛られていないということは、ここで俺の特技というべきか、あることができる。
それは、手首が柔らかいというものだ。
これによって、枷に指がとどく。
こうなれば、こっちのものだった。
いけそうなのを確認した俺は、こういうときのためにと用意していたものを手首から口にくわえる。
その用意していたものというのは、万能鍵だ。
作るのに金属と、宝箱の鍵が必要になるという、鍵を作るのに鍵を作らないといけないという自分でやっておいてなんだが、わけのわからないようなものだ。
だが、便利なものに違いはなく、さらにいえば、わかっていないとなかなか気づきにくいというのも、このアイテムのいいところだ。
なんとか俺は手を伸ばしてそれを指に挟むと、枷を外す。
「よし……」
この要領で、もう片方の腕と足を外したいところではあったが、そこは万能鍵。
一度使えば使いものにならなくなるという、仕様のため、俺はそれを投げ捨てると自由になった片腕で今度は違う場所に隠していた万能鍵を使ってもう一つの手枷を外した。
その様子を見ていた亜紀に言われる。
「へえ……用意がいいんだ」
「まあな。こういうのには、一応備えておくというのがゲーマーのたしなみだ」
そして、お互いの拘束を外していく。
ちなみに、足りなくなった分は、この場で作ることでなんとかなっていた。
後の問題というのは、これからだ。
「会話は聞いてたよな」
「まあね。ちょっと予想はできてたけどね」
「確かにな」
そんな俺たちが聞いた内容というのは、拘束されながらここに連れてこられるまでのものだ。
よく考えていたことで、ゴブリンキングはどうしてあそこまで力を持ったのか、そしてこの町はどうしてここにあるのか……
その答え合わせというのが、ここにいる町の人というのがゴブリンキングたちの協力者だからだ。
最初は確かにモンスターと協力など、NPCであれ、するはずがないと思っていたのだが、実際には違っていた。
ゴブリンキングたちの食事含めて、いろんなものをなんとかしてきたのだろう。
どうしてそんなことをしてきたのか?
ゴブリンたちにやられて略奪される可能性があるからかと思っていたが、実際にはそうではなく。
俺たちが破壊した滝に影響があった。
というのも、滝はこの町の水源であり、さらにいえば三つ目の都市の水源でもある。
メインストーリーとしても、悪いことを企んでいるゴブリンを退治するというものであり、その悪いことというのは何かということの説明というものはなかった。
だが、この町に来てわかった。
ゴブリンたちは水源の元となる滝で、毒のようなものを流すことにしていたのだろう。
それにより、この町は脅されていたと……
だから、滝を破壊し、水とともに流れてきた俺たちはというと、町でヤバいものとなり捕まってしまったということだ。
物語が追加されることで、こんなことが起こると思っていなかった俺は、どうしたものかと考える。
実際にこの地下牢から抜け出したところで、敵対する可能性が高いからだ。
実際にはゴブリンを倒したのは俺たちではあるが、破壊したことも含めると声高々に言うべきことじゃないのもわかっている。
「どうするのが正解だと思う?」
「あたしにそれを聞く?」
「だってなあ……正解がわからないだろ?」
「だったら、このままここにいる?」
「それも嫌だ」
「だったら、適当にやるしかないんじゃないの?」
「そうなるよな、やっぱり……」
少し前にあれだけ計画性のないことをすると痛い目にあうとわかったというのに、ここからどうかするためには、それが必要だという矛盾だ。
だけど俺はそのとき思うのだ。
これは全て、物語を勝手にいれることにした、このゲームのクリエイターたちのせいだと……
読んでいただきありがとうございます。
よければ次もよろしくお願いします。




