1ゲーム目 知らないって!
「はあああああ!面倒くせえ……そう思わねえかよ、親友」
「あーん?あたしに言うなよ。そもそも親友じゃないかんな。あたしはお前とはただの腐れ縁だとしか思ってねえんだよ」
「そうかよ」
「そうだかんな!あたしこそ、おめえの面倒な出来事に巻き込みやがって、許さねえ!」
「おい、やめろ……俺のヒットポイントが全損する、全損するから!」
「いいや、死にやがれ!そして、ちゃんとゲームを止めやがれ!」
「いや、ゲームが止まらないのは、俺のせいじゃないからな!」
俺は腐れ縁である彼女に首を絞められながらそう言葉にする。
どうしてこうなったのか?
少し前のことを思い出したのだった。
「ああああああああああああああ、人生ってなんだろうな、亜紀」
「あたしにそういう話をふんなよ、ニート」
「おいおい、俺のことをニートって呼ぶなよ。今はただ無職……いや、何も染まっていない無色といえばいいか?」
「あー、うん、そだね……」
「おま、お前から話を振っておいて、興味を全くもたないとは、なかなかにすごいことをするな!」
「だったら、仕事すればいいだけだろ?」
「ぐ……俺の心を傷つけてくるなよ」
「だって、いつまでもグズグズとしてっからだろ?」
「そうなんだけど、そうなんだけどさあ……こう優しさってないのか?」
「そんなもん、最初の慰め飲み会数回でとっくになくなってんだよ」
「なん……だと……」
俺はがっくりとうなだれる。
まあ、亜紀が言っていることが正しいということもわかってはいた。
女々しいと言われてしまえば、そこまでだけだが、こうなってしまった理由というものは存在している。
不当な解雇といえばいいだろう。
個人で趣味でやっていたゲーム開発というのが、他人の目にとまり、会社にスカウトされる。
それについては、SNSが発達した現代では当たり前のことではあったが、そこからゲームの開発を一緒に行うというところまでは、俺がようやく掴んだやりたいことだったのだが、そんな充実した日々というものも長くは続かなかった。
突然の解雇。
理由としてはいちゃもんだ。
作っていたゲームが発売が近いのに大量のバグが発生しているというものだ。
確かにバグ自体はあった。
でも、大量というものではない。
どんなゲームでも発売前はそれなりのバグというものがあるのだ。
だというのに、想定よりもバグが多いという理由で解雇されたのだ。
普通に考えれば不当な解雇なのだが、俺は初めてのゲーム会社ということもあって、そんなこともあるのか?などと考えてしまった。
だが、実際には不当な解雇だということを目の前にいる親友亜紀に教えてもらったのだ。
「必死で作っていたゲームを奪われた気分なんだぞ、これって……」
「あーはいはい。その言葉をあたしは聞き飽きた。もう諦めて、さっさと次のゲームでも作ればいいんじゃないでしょうか」
「俺だってなあ、そうできてるならとっくにそうしてるからな」
無理やり辞めさせられる。
そんなことになっていなければ、俺だってまだ仕事をしていたはずなのだから……
「せめて、今日まではゆっくりさせてくれ」
「あーはいはい……発売日だからってことでしょ」
「まあな」
「だからって、朝からお酒に付き合えっていうのも、おかしな話だと思うんだけど」
「なんでだよ、いいだろ?」
「あー、はいはい」
面倒くさそうに返事をする亜紀には申し訳ないが、今日だけは誰かと一緒にいたいと思っても仕方ないだろう。
壁に映し出された映像には、俺が一緒に作ったゲーム。
”クリエイティブオンライン”を買った人たちの喜ばしい映像が映し出されていた。
それをボーっと見ている。
そんな俺を見て、亜紀はため息をつくと言う。
「そういえば、買わなくてよかった?」
「ま、それはだな……」
俺は紙袋をとってくると机に中身を出す。
そこから出てきたのは、クリエイティブオンラインと書かれたゲームだ。
それも五つある。
「えーっと、なんで五個あんの?」
「会社の嫌がらせだろ?俺は最初から開発が終われば、自分もやりたくて一つだけほしいって頼んだんだ」
「なのに、五個送られてきたと……」
「ああ……」
「ぶわはははは!何それ、面白すぎ!本当になめられてたんだ」
「だから言ってんだろ!かなりなめられてたって」
「ぶふ……だったら、ゲーム壊しちゃう?」
「どういう意味だ?」
俺は亜紀の不穏な言葉に驚く。
酔っておかしくなったのだろうか?
だけど、亜紀は本気らしく、カバンからゲーム機を取り出す。
「お前……」
「どうせ、あんたのことだからある程度お酒飲んで吐き出したら、ゲームをすると思って」
「わかってるな!」
「わかってるって、何度もやってたらわかるって」
「そうなのか?」
「そうだよ。んで、やんの?ゲーム」
「ああ、まずは格ゲーからだ!」
「オッケー」
俺たちはゲームを設定して、いくつか行う。
二時間くらい格ゲーをしたのだが……
「何?結局気になるの?」
「まあな」
「だったら、さっきの言ってたこと、すればいいじゃない」
「ぶっ壊すってことか?」
「うん。だって、ほとんど作ったの遊夜じゃん」
言われて確かにと納得する。
このゲームを作ったのは俺だ。
だったら、そんなゲームで無双するというのも楽しいのかもしれない。
「暇だしやるか」
「うん」
そして俺たちはゲームへと入っていく。
ゲームの内容というのは、ファンタジーサバイバルのようなものだ。
フルダイブ型ゲーム。
いわゆる、ゲームの中に入ってするゲームというものの多くは、RPG。
ロールプレイングものが多く。
ストーリーにそってキャラクターを操作するというものばかりで、どこに行ってもよしというものではなく、あまり行き過ぎるとよくある行けない場所というものが存在する。
だが、そこにサバイバルというものを組み合わせ、さらには地球と同じように世界を球体にすることができれば……
なんて馬鹿みたいな壮大なゲームを作りたくて、俺は作り始めた。
それがクリエイティブオンラインというゲームだ。
RPGのようなストーリーがあるようなものではなく。
大きなオープンワールドにて、自由自在にゲームをするというのがクリエイティブオンラインだ。
だったというのに……
「なんだよ、これ……」
「どうかした?」
「ゲームの内容が変わってるんだよ」
「内容?」
「まあな。俺が作りたかったのは、なんでもできる世界だ。こんな普通のゲームじゃない」
確かにちゃんとした物語があるゲームというのも悪くはないが、ゲームの名前というのがじゃないになってしまう。
俺はなんでもゲームの中で作れるという世界を作りたくて、クリエイティブオンラインにしたというのにだ……
「ストーリーがあるとか……ないな……」
「え?いいじゃん。やることわかりやすくて」
「やだよ。なんとなくわかるようでわからないゲームを手探りでいろいろやれることを自分で考えてできるのが、俺が作りたかったゲームなの!こんなのは、俺のゲームじゃない!」
「なんで、そんな駄々っ子みたいな言い方してんの、遊夜」
「だってさ、だってさ……」
俺たちは二人で最初のストーリーをクリアしていた。
といっても、お使いだが……
そんなときだった。
空にフードを被った何者かが映し出されたのは……
「なんだ、あれは?」
「お前が知らないものをあたしが知っていると思うのか?」
「確かにそうだな」
フードを被った何者かは、喋りだす。
「この度は、このクリエイティブオンラインをして頂きありがとうございます。このゲームのマスターです。ああ、神とでも呼んでください。あー、わかっていますよね。このゲームはデスゲームになりました!いやあ、こういうのやってみたかったんですよね!ほら、神ってこういうことをしますから!」
フードを被った何者かはそう言葉にしたのだ。
そして、俺たちは最初の会話になったのだった。
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