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作者の作った異世界設定が気に入らない  作者: さば缶
第5章 “そこそこファンタジー+α”の落ち着いた世界
14/15

それなりに納得できる世界と役割

 近くの町へ足を運ぶと、中規模くらいの城壁に守られた王国が広がっているのが見えた。

門をくぐると、道端に魔導式の街灯や小さな自動販売機のような箱が置かれていて、どこかレトロフューチャー的な雰囲気がある。

人々は「魔法を使う騎士団」や「魔導具を使った日常」を普通に受け入れているようだ。


「確かに“剣と魔法+α”って感じね。華美すぎず、地味すぎず、ちょうどいい案配だわ」


 リリアは騎士団長の立ち位置というだけあって、周囲の兵士に軽く敬礼されている。

「団長、おはようございます」と声をかけられ、リリアは少し気まずそうに微笑んだ。

どうやら自分にも地位や役職が設定されているようで、すでに立場は確立されているらしい。


「しかも私は外部勢力のリーダーって設定か。まあ、世界征服なんかはしないけど、王国と利害が対立している勢力の頭領なんだろうな」


 ヴォイドが門を出たり入ったりする兵士たちを眺めながら、「いつかこの町で交渉したり、意見をぶつけたりする機会があるのかもしれないな」とつぶやく。

春人は少しだけ笑みを浮かべ、「戦わない悪役、いいじゃないか」と茶化すように言った。


「私は研究員って肩書きなんで、この街の研究所に配属されてるみたいですよ。あ、案内板があるので見てきます」


 モブ子は掲示板を見つけて、急ぎ足で確認しに行った。

リリアは腕組みしながら「いいわね。モブ子も本名があればいいんだけど」と首をかしげる。

まわりを見渡すと、騎士団の兵士がリリアの名を呼びに来た。


「団長、先日の訓練の件でご報告を。隊員たちの装備が少々古く……」


「わ、わかったわ。あとで確認するから、書類をまとめておいてちょうだい」


 リリアは少し戸惑いながらも、騎士団長らしく指示を出している。

以前の世界とは打って変わって、落ち着いた責任ある立ち回りをしなくてはならないらしい。


「ところで、春人。お前は何をやってるの?」


 ヴォイドが尋ねると、春人は軽く身を引いて肩をすくめた。

「俺は“異世界のメタ的歪み”を修正できる調整者……ってバッジに書いてある。たぶん、この世界が変な方向に崩れないようにするのが役目なんじゃないか?」


「なるほどね。いままで作者任せで世界がぐちゃぐちゃになってたのを、防ぐための存在ってわけか」


 ヴォイドは納得したように頷き、「ま、トラブルが起きたら頼るかもしれん」と軽く言った。

春人は「もちろん、俺にできることなら」と返してから、リリアの方を見つめる。

「リリアも騎士団長として頑張らないとな」


「わかってるわよ。……あ、でもこの鎧、けっこう動きにくいわね。もっと魔導技術で軽くならないのかしら」


 リリアはぼやきながら、ふと照れ隠しのように顔を背けた。

モブ子が戻ってきて、「研究所の場所がわかりました。私も自分の居場所があるっていいですね」とはしゃいでいる。


「うん、まったり動き回ってみようか。変に世界を改変しなくても、このまま冒険できるんじゃない?」


 春人は穏やかにそう言い、周囲を見回す。

兵士や町人たちが普通に生活している中、地味な魔導装置があちこちで動いている光景は悪くない。


「確かに。あまり派手な要素はないが、その分しっかりとファンタジー感を保ってる。いいんじゃないか、このくらいが」


 ヴォイドも賛同して、スッと手を伸ばして草むらを払いながら道を進んだ。

「俺は外部勢力の者としてここの政策に口を出す立場らしいが、あんまり戦いたくはないから、のんびり意見交換でもしてみるかな」


 リリアは騎士団としての責任感を見せつつも、「たまにはモブ子が活躍できるよう、研究所での発明品なんか期待してるからね」と冗談まじりに言う。

モブ子は「はいっ」と明るく返事をして、胸に手を当てた。


「よし、じゃあまずはこの世界を楽しもう。作者もようやく、落ち着いた設定を考えたんだろうしね」


 春人が前向きな意見を述べると、三人もそれぞれにうなずく。

これまで何度も世界を変更させたのが嘘みたいに、どこか穏やかな雰囲気が漂っていた。

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