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第9話

「さくらが家出した!?」

『はい、おそらく』

「本当に家出なのか?」

 ちょっと外出しているだけではないのか……?

『姉さんの部屋を見たら服が散乱してて、キャリーケースもなくなっていたので……間違いないと思います』

「電話は? してみたか?」

『しましたけどつながりません』

「俺に電話してきたってことはやっぱり今日のあれが原因だってことだよな?」

『はい。すみませんが多分そうだと思います』

 嘘だろ……俺がさくらのことを信じてやらなかったから怒って家出したのかあいつは。

 子どもかよ。

『それで真柴先輩。変なこと言うようですが、今からうちに来てもらえませんか?』

「なぜ俺が?」と言いたいところだがさくらがいなくなった原因は俺にあるらしいからむげには出来ない。

「俺、お前らの家知らないんだけど……」

『学校の裏手にあるマンションわかりますか?』

「ああ、あのでかいやつだろ」

 クラスのみんなが、どんなブルジョワが住んでいるんだろうと噂していた建物だが。

『そこの最上階が僕たちの家です』

「マジかよ!? 超金持ちじゃねぇか」

『部屋番号は一二一三です。では待っています』

 それだけ言うと流星は電話を切った。

 まったく、なんだっていうんだよ。

 俺は学校方面にきびすを返した。

 マンションに着くと、初めてのオートロックの建物に悪戦苦闘しながらもなんとか玄関を突破、エレベーターに乗りこんだ。

 最上階のボタンを押し、エレベーターが上まで到着するのを階数を数えながら待つ。

 最上階に着いて扉が開くと、俺はフロアに足を踏み入れた。

「すげ……広いな」

 最上階のフロアの廊下はずっと先まで続いている。

「えーと、たしか一二一三だったっけ」

 俺は流星の待つ部屋を探しながら長い廊下を歩いた。

 すると、

「真柴先輩、こっちです」

 ドアから顔を覗かせる流星の姿があった。

「すみません真柴先輩、こんなところまでお呼びしてしまって……」

 と頭を下げる。

「いや別にいいけどさ。それよりさくらはどうなった? 電話つながったか?」

「あの……それも含めて真柴先輩に話があるので部屋の中にどうぞ」

「ん、わかった」

 俺は流星にリビングへと通された。

「お邪魔します」

「あ、今うちには僕しかいませんので楽にしていてください。何か飲み物持ってきますから」

 さくらがいなくなったというのに、妙に落ち着き払った様子の流星が部屋を出ていく。

 俺は部屋の中を見回した。

 やはり広い。そしてきれいだ。こんなに広い部屋なのに掃除も隅々まで行き届いている。

 お手伝いさんでも雇っているのかもしれないな。

 俺はスマホを取り出し画面を確認する。

「やっぱりないか……」

 さくらからの着信は未だ来ず。

 もうすぐ七時になるっていうのに、どこで何をやっているんだあいつは。

「すみません、お待たせしました」

 流星が飲み物をお盆に乗せて持ってきた。

「オレンジジュースですけど大丈夫ですか?」

「ああ、悪いな」

 グラスを受け取る。

 そういえば……。

「お前たちの親はまだ仕事か?」

「いえ、親とは別々に暮らしているんです。だからここには僕と姉さんの二人だけで住んでいます」

 流星は床にどすんと腰を下ろした。

「ちなみに姉さんが家出したことは両親には伝えていません。心配させるだけですからね」

 そう言うとグラスに入ったオレンジジュースを一気に飲み干す。

「お前、なんか落ち着いてるな」

 およそ関係のない俺でさえ多少は焦っているというのに。

「実のところ姉さんの居場所はわかっているんです。今頃は近くのカラオケ店でやけ食いをしていますよ」

 流星が苦笑しながら言う。

 は……? どういうことだ?

「姉さんにはもうしばらくカラオケ店にいてもらいましょうか、なぁんて」

「どういうことなんだ? なんで呼び戻しに行かないんだよ……っていうかそれなら俺を呼ぶ必要なかっただろ」

 ちょっとイラっとして語気強めに問いただした。

 すると流星は、あぐらから正座の体勢になり、急に真面目な顔をして俺の目を見据えた。

「正直言いますと僕は真柴先輩と二人きりで話がしたかったんですよ」

 と話を切り出す流星。

「……なんだよ改まって?」

 今日は土屋さんと高橋から秘密の告白をされてメンタルが疲れているんだ。

 お前まで変なことを言い出さないでくれよな。

「姉さんの超能力についてです」

 くっ……やっぱりお前もその話か。

 次にお前が言うセリフはこうなんじゃないのか。

 この世界には本当に超能力者がいて自分も超能力者なんです。だから姉さんも本物の超能力者なんですよ。

「信じられないかもしれませんがこの世界には超能力者は本当に存在しているんです」

「へーそうかい」

 ほら見ろ。

「そしてかく言う僕も超能力があります」

「ほう」

 もう驚きはしないぞ。

「でも姉さんには超能力なんてまったくないんですよ」

「はいはいそうだろうな……って、え?」

 今日三度目の秘密の告白だが、まさかこの展開は想像していなかった。

「姉さんは超能力が自分にあると思い込んでいるだけのただの一般人です」

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