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第二話-8

『鵺』殲滅の数日後の週末、アルレーヌにて。


「えっと、これは……危険な状態になっているとは聞きましたけど、何があったんですか?」


 屋敷の修繕をしてる冬雪の元を訪れた少女が、一部が焦土と化した赤い森を呆然として眺めていた。


 銀白色の髪と水色の瞳、白い肌が特徴的な少女だ。名前は平井零火、冬雪がしばらくこっちには来るなと手紙を出した、彼の協力者である。ひとまず落ち着いたと連絡があったので訪れたのだ。


 ところが彼女がアルレーヌに渡ってきてまず視界に入ったのは、大きく抉れた地面や薙ぎ払われたり焼け焦げたりした木々だった。飛行機でも墜落したかのような惨状である。それに目を瞑っても、辿り着いたのが盛大に破壊された屋敷なのだ。驚くのも無理はないだろう。


 当初は、この惨状は零火に隠すつもりでいた。だが全て終わってから改めて周辺を回ってみると、その被害の甚大さをこれでもかと突きつけられてしまった。結果、もう隠しも取り繕いもせず、開き直ることにしたのだ。


「今までにも、夏生さんが実験で屋敷を一部屋丸ごと爆破した回数なんて覚えてもいませんけどね、ここまで屋敷が壊れたことなんてありませんでしたよ。何ですか、ついに大量破壊兵器の開発でも始めたんですか?」


「信用がなさすぎるだろう、そんなもの作って何になるんだ」


「抑止力」


「何と戦ってるんだよ」


「私が言いたいことですよそれ、この森の状態見てから言ってくださいよ。大惨事じゃないですか」


 屋敷の状態は、ようやく全ての瓦礫が撤去されたところだった。零火は水を操り掃除を手伝いながら、冬雪を問い詰める。


「別にボクが森林破壊したわけじゃないんだけどなあ……」


「じゃあ何がやったと?」


「うーん、外から持ち込まれた生物兵器?」


「生物兵器って第二世界空間(こっちがわ)にもあるんだ……」


 人間が醜悪な争いを続ける限り、恐らく生物兵器は何らかの形で存在し続けるだろう。まさかそれを一斉に大量放出されるとは、冬雪は夢にも思わなかったが……。


「でも生物兵器って、普通は病原性の細菌とかウイルスとかじゃありませんか? 細菌とかウイルスでは、こんなあからさまな被害は出ないと思うんですけど」


「だよなあ、ボクだって生物兵器を設計するならそういうのを選ぶと思うよ。勝手に簡単に増えるんだから、上手くいけば大ダメージ出せるし。なのに今回、アルレーヌに出たのは魔獣なんだから」


「ええ、魔獣って普通は大人しいんじゃないんですか? 夏生さんにはそう聞いたと思うんですけど」


「大体はそうなんだけどね、茶熊とか炎犬とか、凶暴なのもたまにいるからね。で、今回はそういうのを継ぎ接ぎにしたのがたくさんいた。混核(キメラ)ってやつだ、始末するのにはかなり苦労したよ」


 もう二度とやりたくないな、とぼやきながら、冬雪は掃除と修繕を進めていった。環境への影響も無視できないので、そもそも好ましくないのだ。


 そんなことを呟いていると思い通りにならないのが冬雪の常であったが、それを思い出すのは後でいい。まずは特別情報庁に納品する銃を製造するためにも、屋敷の修繕を急がねばならなかった。契約を裏切ってしまえば、『幻影』の活動にも影響が出る可能性があるのだ。

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