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【新章開幕】魔道具屋になりたかったスパイの報告  作者: 春井涼(中口徹)
【if】冬雪夏生と平井零火をあの部屋に閉じ込めてみた。
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【if】冬雪夏生と平井零火をあの部屋に閉じ込めてみた。-3

「しかしそれにしても、妙だとは思わないか」


「先輩の盗聴器に対する仕打ちがですか」


「仕打ちとはなんだ、マゾヒストならともかく、真っ当な人間は盗聴されることに、いい気分はしないだろうが」


 どの口が言っているんだと零火は言いたくなったが、とりあえずそれは自制した。


「そうじゃなくて、発見できた監視手段が盗聴器だけだったことだよ」


 そこでようやく、零火も冬雪と同じ違和感に気付いた。


「もしかして、視覚的な監視手段がない……?」


「まさか超音波センサで動きを見るつもりでいたわけではないと思うが……音だけで、火遊びをしているかどうか分かるのかな」


「じゃあもしかして、他にサーモカメラとか赤外線カメラとかが設置されていたり?」


「ないとは言い切れないな。もう一度確認してみるか」


 冬雪は大の字になって寝ていたベッドの上に立つと、天井に取り付けられた照明器具のカバーを取り外した。光源はLEDのようだ。


「明らかに要らないものが付いているじゃないか。グロウランプが必要なのは蛍光灯だ、よくもまあこんな小さなカメラを仕込んだものだな」


 呆れも尽きてむしろ感心していると、零火が余計なことに気が付いた。


「あの、この時計の文字盤を照らすライト、よく見たらレンズみたいに見えるんですけど……」


「もうその時計は破壊してしまえ。時間は多分、魔術でも計れる。そんなに難しくはないはずだ」


 グロウランプと時計の破壊される音が、寝室でほぼ同時に響いた。木製の床は僅かに凹んだ。


「どうせこの分だと、もっと巧妙なカメラと盗聴器が、どこかに仕掛けてあるんだろうなあ。どれもこれもが盗聴器に見えて辟易してくるよ。その無駄な技術力を、別のことに役立てればいいのに」


「先輩こそ、日本にいたときはよく才能の無駄遣いして、屋敷で変なもの作ってましたけどね。大砲みたいなのとか」


「あれは……まあ、今は別のところに応用してるから。しかし監視手段の底が見えないのが厄介だな、いっそ電子回路を全てショートさせて破壊するか?」


「水周りと衛生周りが困りますよ」


「プライバシー的には、一番監視を排除したいところだな……武力で叩き潰せばいいわけじゃないと、どうにも面倒だ」


 冬雪は、電子機器の分野に明るいわけではない。ソフトウェアの扱いは多少の心得があるが、ハードウェアの構造などはからっきしだ。魔法とは勝手が違いすぎて、太刀打ちができない。


 彼はエネルギーを探知することで、周囲にある物質を調べる魔術を独自に獲得している。理屈だけでいえば、これを使用してレンズを探せばカメラは排除できるし、磁石を探して盗聴器を排除することもできるのだ。


 だが、それほどの繊細な作業になると、どうしても時間と労力が結果に見合わない。当面の生活拠点にするのであれば検討するが、長時間滞在しないであろう部屋のプライバシーを確保するためだけに行うには、少々気力が足りないものである。


 冬雪は、再度ベッドに倒れ込んだ。


「まったく、ただ休暇を獲得するのにどれだけ手間がかかるんだ」


「この部屋を作るのに、どれだけの手間をかけたんですかね……」


 零火もおずおずとベッドに腰掛け、冬雪に同意する。部屋をコンセプトと違う方向に使用するのが決定されている点については、今更指摘しない。

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