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第七話-2

 ジャレッド・フレイザー大佐、陸軍情報部第七連隊連隊長。彼は優秀な軍人である。ここでいう優秀とは、軍人としては優秀である、という意味である。三〇代という若さで大佐に昇進していることからも、軍内での評価の高さは伺い知ることができる。確かにこれまで、多数の実績を積み重ねてきた事実はあるのだ。


 彼はこれまで、他国のスパイや国内の国賊などを、合わせて一〇〇人近く探し出して拘禁してきた。連隊の指揮官となってからも、数々の事件を捜査し結果を出してきた経験がある。今回も、司法省総合司法局に侵入した犯人を、こうして捕らえ、陸軍の収容施設に連行してきたのだ。


 陸軍庁捕虜収容所情報部区画。ここで取り調べを行ったのちは司法省情報刑務所に移送するが、その前にある程度の情報は吐かせておかなければならない。なのだがこの犯人、一向に口を割らない。尋問を始めて既に二時間が経過しているが、情報の一つも入手できていないのだ。フレイザーは苛立っていた。


 変化は、突然訪れた。尋問室の扉が開かれ、銀色の仮面で顔を覆いつくした異様な風貌の男が姿を現したのだ。冬雪である。フレイザーは、彼を侵入者と認定し、反射的に小銃を構えた室内の部下に命じた。


「撃て!」


 三発の銃弾が狭い室内を飛翔し、冬雪を襲う。フレイザーたちは、鮮血の舞うさまを幻視したかもしれない。


「さっきも廊下で撃ってきた軍人たちがいたよ」


 舞ったのは小銃だった。触手のようにうねる銀魔力が一瞬にして出現し、銃弾を吸収し、小銃を跳ね飛ばしたのだ。


「フレイザー大佐だな。こちらの話も聞かずにいきなり発砲するとは部下ににどんな教育をしているのか、と訊きたいところだったが、これは貴官の行動を部下がそのままなぞっているだけだと見て良いのか」


「貴様、何の立場で俺たちの行動に口を出している」


「特別情報庁の立場だ。上司の命令でそこの少年(・・)に会いに来たんだが……なるほど、軍人らしい手荒な扱いだ、今少し早く来るべきだったか。まず貴官らには、その銃を下ろしてもらおう」


「特別情報庁だと……」


 承服できないでいるフレイザーだったが、序列の上では正規軍情報部は専門情報機関に逆らえない。小銃を拾って構え直した軍人たちを一瞥して冬雪が言うと、結局は従うしかなかった。


「言う通り、銃を下ろしたぞ」


「そうか、では尋問室を出て行け」


「貴様、調子に乗るのも大概にしろ!」


 掴みかかってきそうな勢いのフレイザーを制するように、冬雪も珍しく声を張った。


「これより特別情報庁による尋問を開始する。立ち合い可能の軍人は、将官以上の階級を持つ高級士官のみだ。准将未満は退室せよ」


 未満という部分をことさらに強調して、冬雪はフレイザーに命じた。室内の軍人が、冬雪を睨みつつ退室していく。フレイザーが出る番になって、彼が通過するとき、冬雪は告げた。


「盗聴しようなど考えるなよ。そんなことをすれば、国防情報不正閲覧等罪だ、特別情報庁が拘禁することになる。指揮官たる貴官から部下の兵士に至るまで、例外はない」


「ふん!」


 とだけ答え、フレイザーが退室すると、尋問室には二人だけが残った。佐官は将官より下の階級である。

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