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第五話-4

 スチュワート家の兄妹、アントニーとアネッタ。二人の父グレゴワールと母シルヴィは、首都日報ギルキリアという日刊新聞社本社の管理職である。この時代、大手新聞社が持つ世論への影響力は非常に大きく、管理職ともなれば、記事の内容に影響を与える力がある。


 故に、特別情報庁は、国営報道機関の管理職に協力者を持っている。ラジオと新聞を持つ中央通信がそれだが、民間の報道機関は対照的に、独立意識が高かったり各々の思想があったりして、国の関与が難しい。他国の諜報機関が入り込む隙が、国営報道機関より比較的見つけやすい。管理職は特に狙い目だろう。


「『幻影』が掌握する協力者の警察関係者を通じて、探偵を捜査官として送り込むようにした。魔道具屋、お前さんはスチュワート家の人間に特別情報庁の人間だと気付かれるリスクがある。今は会うな」


 というトパロウルからの指示で、岩倉がスチュワート家に向かった。冬雪は岩倉からの情報をもとに、外で捜査を行う役割だ。


 岩倉の呪容体から、スチュワート家内の会話が聞こえてくる。主に話しているのは岩倉とグレゴワールのようだ。


「犯人からの連絡はありましたか?」


「はい、子供二人を預かった、要求は後から連絡すると電話で」


「要求の連絡はありましたか?」


「いえ、それはまだ……」


 岩倉は警察の他の捜査官より先に、スチュワート家で捜査を開始している。警察の捜査チームは、この後リフォーム業者に偽装して潜入する予定になっている。なのだが、そこでスチュワート家の電話が鳴った。


「警察を呼びましたね」


 これにはさすがに冬雪も動揺した。


「人質の子ども二人と捜査員は全員殺すことになりますが、仕方ありません」


「ま、待ってくれ! 警察を呼んだ? なんの話だ!?」


 はったりでないことは確実だ。実際、捜査官は複数名向かっているが、行先はまだ確定するような場所にいないはずだ。


「あなた方は我々に監視されているのです、それを自覚なさった方がよろしい」


「だから、こちらは警察など……」


「ギルキリア市中央警察署地下駐車場に、実在しない工務店の車両が停車しています。さきほどこれが発進したことを確認しましたが、あなた方の招待ではないと?」


 そこでようやく役目を思い出し、冬雪は『幻想郷』に通信を繋ぐ。動揺して遅れたことは否定できない。


「こちら『呪風』。ボス、交換手に確認して、今スチュワート家に掛けられている電話の発信元がどこか、絞り込んでください!」


「了解した。探偵には、可能な限り電話を引き延ばすよう伝えろ」


「コードネーム『呪風』より『白兎』へ。その電話、可能な限り引き延ばしてください。逆探知を実行します」


「了解。グレゴワールさん、可能な限り電話を切らせないでください。別の捜査官が逆探知をしてます」


 高速で正確に伝言が行われたが、犯人は頭の切れるだけでなく、耳もいいようだ。


「そこに誰かいるのですね。既に警察が来ていましたか。やはり人質と捜査員は殺すしかないようですね。こちらの要求を呑むのであれば解放してあげようと思ったのですが、残念です」


「今いるのは妻の友人だ。以前から来訪の予定があったから、急に断っては不審に思われると思って家に入れただけだ」


 咄嗟に出たにしては悪くない言い訳だろう。一応功を奏したようだ。


「……まあいいでしょう。それでは五分以内に、工務店の来訪はキャンセルしなさい。できた様子がなければ、人質と捜査員を全員殺します。譲歩はこれで最後ですよ」


 この一言を最後に、緊張感の強い電話は切られた。交換手が電話の発信元を探ったが、せいぜいギルキリア市中央区だと特定できたのみで、さらに絞り込むには通話時間が足りなかった。警察の捜査官の来訪は、河童の言葉が真実となる可能性を考慮し、中止することになった。

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