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第四話-3

 冬雪の願いも虚しく、夜のティータイムは続く。


「グランテールは、三級魔術師なのね。普段から魔術魔法は使うの?」


「私も気になります、魔術師の生活の仕方」


「そんなに大きく変わるようなことはないと思いますが……私は魔術魔法より、魔道具中心の生活をしていましたから」


 実態としてはそこに呪術魔法も入ってくるのだが、それを明かしてしまうと、三級魔術師という肩書が一気に嘘くさくなる。事実としては確かに三級魔術師免許しか持っていないわけだが、それで納得できるかと問われれば、冬雪はできないだろう。魔道具屋である手前、魔道具中心の生活という部分は嘘ではない。


「法律に則って魔術師の免許は取りましたが、普段使いするのはせいぜい銀魔力くらいですよ。魔道具工房にいた頃は、魔道具技師免許や魔導系軽火器取扱師免許の方が重要でした。私の魔道具技師免許の方は、二級ですが」


「魔道具技師免許の一級と二級って、どう違うんですか?」


「扱える魔道具の精密さや分類などが変わります」


 例えば厨房に設置されている調理用器具や冷蔵庫などは、比較的魔法力回路が簡単であるため、二級魔道具技師免許で扱うことが認められている。一級が求められるのは、新たに開発されたばかりで分類がされていない魔道具や、工業用の大型魔道具や医療道具、他には鉄道や船舶など、複雑でより人命に影響を及ぼす可能性のある魔道具だ。


 ただし、人命を脅かす魔道具といえば、忘れてはならないものもある。


「それじゃあ、魔導系軽火器取扱師免許っていうのは何ですか?」


「名前の通り、魔道具の中でも拳銃や小銃など、軽火器に分類される武器を整備・使用するために必要な免許です。扱うのが武器なので、魔道具技師免許とは分離されるんですよ。私のいた工房はほぼ何でも取り扱いましたから、こういう免許も必要だったんです」


「そういえば、お父様の銃を整備する役割も、グランテールに引き継がれたそうね」


「旦那様、喜んでたんじゃないですか?」


「旦那様より、ヴェルニッケさんの方が喜んでた気がしますね。携帯していた拳銃を見つけたとき、かなり警戒されてしまいましたが……」


 教育係の名前が挙がると、ああ、という納得の声がフレデリカとアルテミエフから零れた。使用人の数名が銃を所持しているのは、屋敷の共通認識らしい。


 フレデリカ曰く、これはアデラールやフレデリカの身の安全のためのようで、万が一に備えるため、普段から銃がある状態に慣らしているのだという。アルテミエフは所持していないが、会合やパーティなどに出席する際は、かならず四人は銃を所持する使用人がいるのだ。


(まあ、専門の暗殺者やスパイじゃなければ、拳銃で充分か)


 冬雪には拳銃は効かないし、もし彼が暗殺に回ったら無用の長物と化すだろうが。そんなことを考えていると、フレデリカが声を潜めて話し始めた。


「ところでグランテール、あなた、お父様についてどんな印象を持っているの? 苦労を重ねた財閥の会長、なんていう感想は求めていないわよ」


「どんな、と仰いますと……」


 他国のスパイに情報を売っている可能性を疑っている、とは口が裂けても言えない。なのだが、冬雪は驚かざるを得なかった。


「お父様が、裏で何らかの取引を行っている、と言われたら、信じられる?」


 フレデリカの方から、そう持ち掛けられたのだから。

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