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第三話-4

 ホルーン水源湖は、冬雪の契約精霊が棲む精霊集落のある地域だ。共和国はその国名通り、精霊と親密な案系にある国家だ。公用語についても、元々は精霊の使う言語が由来になっていて、例えば共和国語で一を表す『アル』という単語は、精霊術魔法では第一段階の指示になる。


 共和国憲法では、精霊の権利が保障されている。精霊の権利とやらはいくつかあるが、基本的には個体として明確な意思を持つ大精霊に精霊集落ごとの自治が任されており、精霊集落周辺の土地は集落の規模に応じた面積を精霊が管理することになっている。例外はない。メルトナ州には、特にこういった土地が多かった。


 ホルーン水源湖周辺の土地を管理しているのは、精霊集落の長である大精霊、ライだった。冬雪が契約する九五の精霊、その一体でもある。冬雪はライに頼んで、魔力使用者だった頃に使用していた屋敷を一部縮小しつつ、ホルーンの地に移転することを許されていた。その一部であった危険物保管庫が、現在の武器庫である。


 厳重で重い鍵と扉を開けて中に入ると、壁に並んだ棚にはいくつかの武器が並んでいるのが見える。種類別には、銃や呪術魔法の込められたマナ水晶多い。


 国道の任務で使用したフュールも、ここに保管されてた。他には日本のミネベアM60を参考にした五連発回転拳銃(リボルバー)のアルレーヌM22A1とM22A2、H&K P7を参考にした自動拳銃(オートマチック)のP22A1とP22A2。これ以外にも作成した銃はあるが、まだ開発段階にあるため実戦投入中の武器が集まるこの武器庫にはなかったり、あるいは特別情報庁に譲渡して同胞が使用しているものもある。


 武器庫の中に収められた武器を一通り整備すると、冬雪は屋敷の屋根裏に入った。魔力使用者だった頃にはなかった設備だ。アルレーヌに移転させた直後に設置した。役割は屋敷の防衛だ。普段冬雪がここで生活しているのならともかく、屋敷を開けている期間が長くなると、やはり防犯には不安が出る。特にここは人里離れた森林だ。首都ギルキリア市の住宅街と違い、何かあっても発見が遅れる可能性は高い。


 屋敷に何かあれば、精霊集落にも何らかの影響が出る可能性は高い。そうなれば精霊たちが黙ってはいないだろうが、それだけをあてにするわけにもいかない。冬雪は屋敷の周囲を屋敷の管理する土地として、範囲内に招かれざる来客があった場合は追放、攻撃があれば反撃制圧ができるよう魔道具を設置していた。招かれざる来客の判定は、これもやはり、呪容体で行う。


 零火が共和国へ来る際も屋敷を通るようになっているので、セキュリティに異常は起きていないようだが、念のため装置の確認を行い、屋根裏を降りる。問題はなし、侵入者もなかったようだ。


 それらすべてが終わると、冬雪は屋敷と魔道具屋を繋ぐ転移魔術の魔法陣でギルキリアへ戻る。幽灘に魔道具屋をしばらく閉めることを伝え、その間定期的にクリスが魔道具屋に来ることを話す。既にクリスは幽灘と仲良くなることに成功していたようで、幽灘はクリスが来ることを聴くと喜んで頷いた。


 家のことが済むと、冬雪は魔道具屋を離れ、『幻想郷』に向かう。ボス、トパロウル一等工作員の指示を受けなければならないのだ。シャロン財閥について探れ、という命令だったが、具体的にどう探るのか。


 ……結論から言えば、その探り方は冬雪の想定の外にあった。


「お前さんには、シャロン邸の使用人として、アデラール・シャロンのもとに潜入してもらう」


「……は?」

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