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【三章終了】魔道具屋になりたかったスパイの報告  作者: 春井涼(中口徹)
【if】全員魔法学園に放り込んだと仮定して。

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【if】全員魔法学園に放り込んだと仮定して。-14

(店の方は零火が片付けたか)


 冬雪は校舎の屋上でその状況を観察しながら、特に意外には思っていなかった。手に余るようであれば出ようと考えていたが、迷惑客がよほどの実力者でもなければ、零火に敵う人間はそう滅多にいないだろう、くらいには、冬雪は零火の能力を信用していた。


(それよりも、問題はあっちだな。セレモニーの会場に向かうこいつ、先んじて制圧しておくべきか? いや、まだ別に不審者だと決まったわけでもないし)


 逡巡する間にも、不審な人物は集会場の裏口に接近する。


(まあ、何事もなければそれでいいか)


 冬雪は飛行魔術を使いつつ屋上から飛び降り、集会場の裏口に先回りした。聞こえてくる声からして、セレモニーは生徒会長の挨拶が行われているようだ。風紀委員長セオドア・ヴェルニッケも壇上にはいるはずなので、よほどのことでもなければ被害は出ないだろうが……。


「お、来たか。ということは、侵入者で間違いなさそうだな」


「なんだ、学園のがきか?」


 初めから随分喧嘩腰だなあ、と冬雪は苦笑した。


「ご名答、あんたの言う学園のがきさ。二つ名持ちのね」


 二つ名持ちの生徒が一人だけ学園に在籍し、魔道具研究部の部長の席にいる、というのは知る者は知っている話だ。有名というわけでもないが、隠された事実というわけでもない。侵入を試みるような人物であれば、知らないはずがない情報だ。


「風紀委員でもないお前が、なぜここにいる」


「例えばの話だ」


 冬雪は語った。


「この学園を一つの国家だと見做したとする。在校生が自治を行い、学園の全てを運営しているとしたら、政府の役割を背負うのは生徒会だ。その頂点に立つのは生徒会長、今はクリスティーネ・クルーザがその席にいる」


「何が言いたい?」


「まあ話は最後まで聴きたまえよ。生徒会が政府だとしたら、各委員会は行政機関というところだろう。美化委員会は環境省、保健委員会は内務省の衛生局、という具合にね。国家には当然、治安を維持する組織も必要になる。その役割は風紀委員会だな、警察や軍隊という位置付けか」


 生徒の選挙によって選ばれた生徒会役員が統制する、風紀委員会という治安組織。学園は小さな民主国家であり、文民(シビリアン・)統制(コントロール)の行き届いた仕組みといえる。


「でもさ、警察や軍隊って、表に見える戦力でしかないんだよ。これだけでは不充分だ。影はそれだけで存在できるが、光には影が付き従う。では治安維持における影とは何か。市民に溶け込んだ治安組織が必要じゃないか。そう、つまり防諜機関。では学園でそれを担うのは誰? 射撃部? いいや、ギルキリア魔法学園(うち)のあれは、あえて例えるなら民間軍事会社みたいなものだ。風紀委員会に表立って協力する以上、光と陰で言えば光の立場になる。では影とは何か──そろそろ答えは出たんじゃない?」


 蒼白になり始めた男に、冬雪は変わらず得意げに喋り続ける。


ノン(N)オフィシャル(O)カバー(C)、非公然的に存在する秘密情報員。どこにでもいるしどこにもいない彼等には、多分この学園も監視されているだろうね。ボクとしては、事務員の彼が怪しいと思っているんだけど、まあそれはいい。問題はこの学園でも、期間限定でNOC(それ)が組織されていること。手と目と耳がどこにでも届くボクは、その役割に配置する上で、非常に都合が良かったのさ」

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