1話 芋餅 2
一階に辿り着くと、廊下を挟んだ先に居間へと通じる扉がある。
ふと部屋の中からは、大きなイビキが聞こえてくる。
サーラが扉を通り抜けて中に入る。
すると居間では、父親のロンドが食卓のテーブルに突っ伏して、熟睡していた。
しかし、サーラは目もくれずに素通りし、
「よし、今日も家事を始めるわい。」
と元気に呟きながら、一日の作業に取り掛かった。
家事全般は、全て手掛けているのだった。
まず朝食の支度である。
彼女は棚や床下の氷室を覗き見て、
「こんなもんか。…残り少ないの。…」
と中から、材料を取り出す。
それは丸パン、小麦粉、じゃがいも、チーズ、カブ、油、塩である。
すぐにサーラは、調理しだした。
まず釜戸に火をくべて鍋で湯を沸かす。
その間に、じゃがいもとカブをくし切りにしたら、鍋に塩と一緒に投入し、出汁が出るまで茹でていく。さらには、パンの表面に乗せたチーズを釜戸の火で炙って、やや溶かしたら終了である。
出来たのは、チーズトーストとじゃがいもとカブのスープだ。
そのままサーラは料理を盆に乗せて居間へ運ぶ。鼻歌交じりに食卓のテーブルに、一人前の料理を並べると、
「お父ちゃん!!…起きなさい!!」
と大声をあげた。
するとロンドは、ひしゃげた声を漏らしながら椅子から転げ落ちる。起こされて、ようやく目が覚めると、慌てて起き上がった。
そうして、親子二人は挨拶を交わす。